うじむし77
私もそれなりにスキルが充実してきたけど、その中で使い所が少ないスキルというのもある。
例えば『吸血』や『丸飲み』
そもそも接近戦をしない私に『吸血』による持続ダメージや『丸飲み』による一撃必殺など、する機会が無い。
まぁ、食事中に『経験則』で手に入ったものだしね。その内日の目を見ることもあるだろうと思ってる。思ってるだけ。
この世界に生まれてこの方、本物の日の目は見たこと無いけどね。
そして、数あるスキルの中で一番使っていないと断言できるのが『建築』のスキルだ。
ボブスレーのコースを作るときに役に立った? のかな? ってくらいの認識しかない。
新しいスキルだからっていうのもあるけど、そもそも使用していて効果が出ているのかどうか実感が湧かないのだ。
そんなゴミスキルとも言うべき『建築』だが、これは学園迷宮のマスターである金髪おかっぱから貰ったスキルだった。
貰った時は、なんだよこんなスキル使えないよ、ちくせう、と内心腐っていたけど、実はこのスキルが、今回の問題を解決する鍵だったのだ。
「つまり……、『建築』はダンジョンに干渉出来るスキルである、ということなんだね?」
内容が内容だけに、念話でしっかりと確認を取る。
ただ頭の中で思うだけでもシステムさんには伝わるけど、念話を通すことで自分の中で認識して落とし込める気がするのです。
『通常は不可能です。『建築』はあくまでその行動の際に補助をする程度のスキルですから。しかし、瑠璃様がお持ちの『建築』は違います。明らかにノーマルスキルを逸脱した破格の性能を持っています』
「自分のスキルなのに何も分からないんだけど、そんなことが有り得るの? スキルがランクアップしてるならまだしも、私の『建築』は最低ランクのノーマルなんだよね?」
『それは間違いありません……。これは仮説ですが、ダンジョンに干渉出来るスキルをダンジョンマスター以外が保有するという前例が無い為、このような結果になってしまったのだと思われます』
チートコード突っ込まれて表示がバグってるみたいなものか。
きっとこれ、本来ならHR以上はあるんだろうなぁ。
『前例が無い為、推論に過ぎませんが、ダンジョンマスターの持つ『迷宮創造』のスキルはHRの更に上、URです。ダンジョンマスターでない瑠璃様がダンジョンに干渉出来るスキルを持つ以上、そのランクは更に上、最高峰のEXRに至るでしょう』
なんということでしょう。
ゴミスキルと思っていたノーマルレアの『建築』は、世界最高ランクのEXRだったのです。
醜いアヒルの子ってレベルじゃないぞ。いや成長した訳じゃないから違うか。エビで鯛を釣る? 棚からボタモチ? ダメだ、私の灰色の脳細胞が真っ白に燃え付きそうだ。
上手い言い回しは浮かばないけど、つまり、何か得した最高イヤッホゥ! ってことだね!
私の『建築』はダンジョンに干渉できる。それ即ちダンジョンマスターに干渉できるということ。
『建築』を使えば魔力が激減してヘタっている金髪おかっぱに私の魔力を分け与えてやることが出来るのだ!
具体的にどうするかは分からないけどね! そこはもうシステムさんにお任せするしかない。
実はシステムさん、私が魔法やスキルを発動する際にそれとなく手助けしてくれていたみたいなのよ。
無駄な魔力の流れを直したり、余剰分を戻してくれたり、少ない魔力でより高い威力が出るようにしてくれたり、もう色々。
だからコスプレイヤーズの所為でシステムさんがダウンした時、魔法による逆流ダメージがあったりしたんだね。
いつもなら自分の『氷寒魔法』でダメージを負うことなんて早々無いもんね。
システムさんは私より魔法に詳しい。もはやエキスパートと言ってもいい。
『あの異物達と戦う際には私が手助け出来ない可能性もあるのですから、今に内に瑠璃様ご自身の力で完全な魔法制御を行う練習を行うことを強く勧めます』
うん、それは私も思ってた。
前も言ったけど、私はシステムさんに甘えて寄っ掛かるつもりはない。恋なら一方通行で良いかもしれない。しかし愛とはお互いに分かち合うものだ。
私はシステムさんが好きだからこそ、システムさんい頼らない戦闘が出来るようにならなくちゃいけない。
『流石瑠璃様です。ますます貴女が愛しくなります』
「うふふ、惚れ直した?」
『当然、惚れております』
「やだもう恥ずかしいなぁ、むふふ」
ちょっと話がズレた。
食事とおんなじで、定期的にシステニウムを補給しないとウジムシは死んじゃうからね。仕方ないね。
今の私の魔力、つまりMPは『経験則』でのプラス分込みで3360。私のステータスの中では飛び抜けて高い数値だ。
後先考えずに魔法使いまくってMP切れをよく起こしているからあまり実感無いけど。
『全部注ぎ込む訳には参りません、瑠璃様の身の安全が保証できかねます』
そりゃそうだね、私も自分の身を危険に晒してまでは出来ないよ。
MP切れ起こして動けなくなった時に、この階層のモンスターに襲われたらちょっと厳しい。
今は安全地帯に引っ込んでるから良いけど、安全地帯が効力を発揮している時間内で回復できるとは限らないんだし。
懸念事項はあるけども、まずはやってみないことには話は始まらない。ちゃっちゃとダンジョンに魔力を供給してやろうかね。
『では今回は1000ほどダンジョンに譲渡してみましょう』
それでどれだけ猶予が延びるか確認してみるってことだね。
2000ポイント以上手元に残っていれば、モンスターに襲われても軽く撃退できるし、妥当だね。
システムさんによって私の魔力がダンジョンに注ぎ込まれる。
おふぅ、魔法を使うのとはまた違う感覚……。体から何かが抜け出ていくぅ……。
『私の我が儘に付き合わせてしまい、申し訳ありません』
ぬふぅ……、んぁ? 何言ってんのシステムさん、分かってたんでしょ? 本当は私が金髪おかっぱを死なせるのが忍びないって思ってたこと。
私が望んだことだよ、システムさんが気にすることじゃないって。
『瑠璃様、こちらを理解してくださる瑠璃様ならばお気付きなのでは? 私があのダンジョンマスターを助けたいと思っていたのです』
金髪おかっぱとは仲良さそうに話してたもんね……。システムさんと二人で、私の知らない会話を……。あれ、やっぱり見殺しにした方が良かったかな? 私、早まった?
『私が言い出せないことを見越して、切っ掛けを作って頂いたのですよね?』
ふふふ、システムさん、乙女心は複雑怪奇なのよ。
例え恋敵であろうとも、否、恋敵だからこそ、助ける。そんな時だってあるの。
チャンスが有れば幾らでも突き落とすけどね、それはこんな方法じゃない。もっと正々堂々、放課後の学校の屋上に呼び出して取り巻きで囲んでから『アンタさぁ、最近システムさんに馴れ馴れしくない? システムさんが優しいからって調子乗らないでよね、この売女!』みたいなことをするのだ。
ふふふ、青春の1ページ。
前の世界では出来なかったことを……。
これじゃ私が悪女の役だな、当て馬じゃん。げぇ、間違えた。
『……本当に、素直でないですね』
私は間違いなく素直さ。




