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うじむし71




 ……さて、改めて状況を確認してみようか。


 システムさんのシャットダウンの原因らしきコスプレイヤーズを、巨大毒キノコのカウンター機能で撃退し、毒がある程度抜けたキノコの欠片をもぐもぐして体力回復に努めました。


 ほぼ自爆に近い形で瀕死に陥った私だったけど、運や偶然に助けられてなんとか生き残ったのだ。


 コスプレイヤーズは半端なかった。

 こっちを舐めきっていてくれたから、今回はまだ何とか命を繋げたけど、次に出会う機会があったらどうなるか分からない。


 私は結構強いんじゃないなんて自惚れてたけど、全くの勘違いだった。

 所詮はウジムシ、デカかろうが魔法が使えようが、根っこの所はハエの幼虫なのだ。

 恐らくだけど、基礎ステータスの上昇値なんかは低めに設定されていると思う。

 だってウジムシだもん。

 種族的にはハエの赤ちゃんです。まだサナギにすらなってないよ。


 なんとかベルゼブル的な魔王ルートを開いていきたいと思っているんだけど、上手くいってるかどうかはまだ分からない。


 元ただの一般的女子高生としては、見通しの立たない人生設計はかなり怖いです。

 こんな世界で、私はいつまで生きていけるんだろうか?


 ……いや、本当に生き残りたいなら、そんなこと考えている時間も惜しいよね。

 だったら少しでも強くなる努力をしろっていう。


 ……多少ネガティブな考えになったけど、今は生き残ったことを素直に喜んでおこう。



 そういえば、あのコスプレイヤーズ、名前で呼びあってたけど、あれ、ばっちり日本名だったよね?

 アヤカとかコースケとかヨシト、ユウダイなんかも居たな。


 まさかとは思うけど、偶然にしては出来すぎてるよね。


 いくらコミュ障&慢性寝不足&鉄面皮の窓際系喪女だった私でも、普段から喧しいグループに属するクラスメイトの名前は覚えている。


 ……かなり、朧気だけど。


 私、虹川くん、そして聞き覚えのある名前のコスプレイヤーズ。

 ここまで情報があれば、推論の一つくらいは立てられる。


 つまり、私たち同じクラスの人間がこの世界に転生してきているということだ。


 私と他の人たちとでは、また原因が違うだろうけど、偶然・・同じ高校の同じクラスのメンバーが、同一の異世界に現れるというのはおかしいだろう。

 なにか作為的なものが働いていると見て間違いないと思う。


 それで、私に、或は私たちに、何をさせたいのかということになるけど。


 色々と考えを巡らせながらも、キノコの最後の一欠片を口に放り込んだ。

 うむ。磯臭くて泥臭くて凄い。

 『料理』『調理』なんかのスキルがあればもっと美味しく食べられるのかな?

 まぁ、食べられるならそれでいいや。


『――――ザ……、ザザ……、ステ、ム、復旧、50%……カルマ値の変動は通常ラインに戻りました』

「システムさん!?」


 頭の中に響く、今や慣れ親しんだイケメンオジサマボイス。

 体を甘く疼かせるような低音に、私の心が沸き立った。実に単純……ッ、だが、それがいい!


『ご心配をお掛けしました、瑠璃様。現在の復旧率が50%を越えたため、コミュニケーションを取ることが可能になりました』


 くぅう、これ、これですよ、この会話のために生きてるわぁ。


『先程の集団は撃退されたようですね、流石は瑠璃様です』

「いやぁ、運と偶然が重なっただけなんだよね、ホント、死ぬかと思ったよ」

『あまり無茶はなさらないよう。システムとて、心配することもあるのです』


 システムさんが言うには、シャットダウンとなった後もなんとかこちらにアクセスしようと四苦八苦していたらしい。

 だが、こちらに干渉する為のリソースがことごとく食い潰されていたのだとか。

 それは、あのコスプレイヤーズの仕業らしい。


『彼らの“変身”という行為は、本来起こり得ない事象を、世界にあまねく存在する経験値・カルマ値を強制的に吸い上げることによって行われるようです』

「それって、以前私が人型に変化したみたいなもの?」

『原理的にはほぼ同じでしょう。ですが瑠璃様の場合はご自身が溜めたカルマ値を使用するのですが、彼らの場合はまだ誰のものでもない、宙に浮いている経験値・カルマ値を根刮ねこそぎにし、独占しているのです』


 うーん、少し難しいけど、要はこれから配当されるはずだった経験値やカルマ値を、配られる前に保管庫に強盗に入って奪っているようなものだ、ということかな?


『大体合っています。ですが、問題はそれによって引き起こされることです』

「あのコスプレが、世界に悪い影響を与えるってこと? 私にはせいぜい厨二患者を量産するような影響しかないと思うんだけど」


 当然、私を殺そうとしたことは除いてね。

 システムさんが無事で、私も生き残った。禍根はあるといえばあるが、終わりよければ全てよし。


 自分でもちょっと楽観的過ぎるかな、とも思うけど、性分だから仕方がない。

 そう思ってしまうのです。


 だけど、システムさん話はそんなスケールの小さな話ではなかった。


『瑠璃様、この世界は経験値とカルマ値により取得できる『魔法』と『スキル』によって成り立っているといっても過言ではありません』

「生活に『魔法』と『スキル』が密接に関わっているってことだよね? 火を起こしたり、水を出したりなんかも『魔法』と『スキル』で賄ってるんでしょ?」

『それだけでは無いのです。もっと根本的な、生物が生き、無生物がそこにある、この世界が存続しているのもまた、経験値とカルマ値に依るものなのですよ』



 正直に言おう。

 話がでか過ぎる上に突飛すぎて理解ができない。

 この世界は経験値とカルマ値で出来ている? システムさんには私と、いや、この世界に生きている者とは違う光景が見えているのかもしれない。


 だけど、何となくだけど理解できる所もあった。


 以前見た夢。

 七色の光が立ち上ぼり、崩壊していく世界。


 あれが経験値とカルマ値を吸い付くされた世界が破滅するというならば、きっとあの光景がそうなのだろう。


 つまり、考えたくもないけど、同郷の人間である奴等が高確率で世界を滅ぼす可能性があるということ。

 全員が一回づつ変身しただけで、システムさんは機能不全に陥ったのだ。

 これが今後何回も起こり得るというのはゾッとしない。


「システムさん……、システムさんがその話をするってことは、私に彼らを止めてほしいからなの?」

『願わくば』


 マジかぁ、私、同郷の、しかもクラスメイトをぶっ殺せって言われてるのか。でもそうしなきゃこの世界滅ぶよって、なかなかエグい展開だと思うんだけど。


『彼らがこれ以上変身能力を使用せずに、ただの人として生きていくのならば、その必要もないのですが』


 それは多分、無理だ。

 人間、一度手にしたものを捨てるのは簡単じゃない。ましてや、ファンタジーな力を得られる変身能力。先程対峙した彼らの言葉から察するに、力を捨てるという選択肢は無いように思える。

 嬉々として戦ってたもんね。


『……やはり、難しいですか』


 うん。そう思うよ。


『こちらで、彼らの変身能力に干渉できないかやってみましょう。瑠璃様はどうかそのまま、生き延び力を付けることを優先してください』

「それは、最終的に彼らに手を下す為?」

『…………』


 システムさんからの応答は無かった。


 同郷の、クラスメイトを殺さなければ世界が救われない?

 そんなバカな話があるだろうか?


 私は博愛主義者という訳じゃないし、優しくも甘くもないと思うけど、それでも顔見知りを世界のためだからとアッサリ手に掛けられるほど人間止めちゃいない。


 そもそも、そこまでして救おうという気概をこの世界に対して持てないし。

 私が生まれて歩んだ場所は、このダンジョンの2階と3階だけ。

 思い入れや愛着を抱けという方が無理だろう。


 悩んでいるのは、ひとえにシステムさんがいるからに他ならない。


 後はまぁ、この世界滅んだら巻き添えで私も死ぬじゃんとか、強くなったぜヒャッハー! ってなってる元クラスメイトの阿呆達のせいで世界が破滅へまっしぐらとかフザケてんのか、とかそういう気持ち。


 ぶっちゃけて言おう。

 処理能力の限界です。


 さっきまで死ぬ気のボブスレーからの蛇鎧キック事故、という死が隣り合わせの状況で精神がガリガリ削られていたのに、今度は世界の崩壊の為に勇者よ立て! みたいな話ですか?


 もう頭がパーン☆ しそうだよ。


「システムさん、ごめん。疲れたからちょっと眠るわ」


 これ以上情報を詰め込まれても、多分覚えてられない。


 私の悪い癖なのだが、行き詰まるとゲームや睡眠に逃避してしまうことが多い。

 今回もそのパターン。


 だけど、もう疲れたよテムラッシュ……。

 もうゴールしてもいいよね……?


『私も事を急ぎすぎました。申し訳ありません。今はゆっくり御休みください、瑠璃様』


 うん、ごめん、ちょっと休むね……。


 休んで頭がスッキリしたら、きっといい考えも浮かぶさ。



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