表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/145

うじむし68 しでむし11




 俺は白氏さんと別れ、一人で歩いていた。

 システムさんと話しているみたいだったから何も言わずに来てしまったけど、大丈夫かな?


 いや、大丈夫な訳ないか。

 きっと薄情者とか恩知らずとか言われてるだろうな。


 でも、この場所を目にしてしまったら、駄目だった。

 止まれなかった。


 転生して初めて出来た俺の仲間が死んだ場所。

 何故分かったかと言えば、あの時の惨状そのままだったからだ。

 氷漬けになった森。霜のように凍った下生え。

 踏み砕かれた姿で氷の彫像となった家族達。


 仲間が殺されたとき、俺は必死になって逃げるだけだった。

 後ろを振り返らず、脇目も振らず、穴を掘って逃げた。


 この身に刻み込まれた敗北感、胸を穿たれたような喪失感、理不尽を体現したかのようなあの異形の生き物に対する焦げ付くようなどろどろとした怒り。

 冷静でいられる自信が無かったし、白氏さんの前で取り乱したく無かった。男の下らない見栄、といえばそれまでなんだけど。

 

 獲物の殺し方が理不尽だどうのと自分でも訳の分からない理由をつけて一人になりたかった理由がそれだ。

 咄嗟に離れたかったからといって、あの言い訳は無いだろ、俺。

 あ、なんか思い出したら恥ずかしくなってきた、穴があったら入りたい……。

 掘るか。


 モゾモゾと穴を掘りつつちょっと休憩。

 そういえば、ウジムシと言えば白氏さんもなんちゃらマゴット? とかいう種族だったか。

 マゴットってウジムシだよな。

 ……まさか、あの時俺たちを殺したのは、白氏さん?


 な、訳ないか。

 あの化け物は狂気の固まりみたいなもんだったし、ウジムシからいきなり人型になってたもんな。

 進化は出来ても退化はできない。○ケモンカードじゃないんだから。

 俺も進化ルートを確認したいが為に前の種族に戻ろうと念じてみたことがあったけど、まぁ、出来ませんわな。


 あーでも、クジラとかイルカが陸に上がった後海に戻ったみたいに、進化の方向によっては逆走と見えなくもない進化も出来るのかな?

 


 ……って、そうじゃない。ここは皆が死んだ場所なのに、なに考えてんだ。

 あぁ、俺は意識を逸らしたいんだろうな。

 あの時のことから。

 一人で逃げた罪悪感から。


「ごめんよ、みんな……」


 プリズムビートルに進化した俺の甲殻に刺さるような冷気。『氷魔法』なんてレベルじゃない。まるで氷の地獄が顕現したかのような有り様。

 どれだけの魔力が込められていたのか、その氷は未だ溶ける気配がない。

 触れてはならないものに触れた見せしめとでもいうのだろうか? だとしたら、相手はいったいどれ程の存在だと言うのだろう?


 そっと触覚を凍った仲間の触覚と触れ合わせてみる。

 仲間同士の挨拶だ。群れの仲間はこの感覚で判別できる、らしい。

 俺は他の群れとは会ったことが無いけど、本能でなんとなく分かる。


 仲間からは何の感覚も返ってこなかった。

 ただただ、冷たい。


 そりゃそうだ、凍らされて、踏み砕かれた破片に意識があったら恐いわ。

 感傷的な行為だったけど、悲しみは湧かなかった

 怒りや憎しみ、そしてアイツに対する恐怖だけがいつまでもいつまでもグツグツと煮えこごっている。


 この世界で家族と呼べる仲間を失った俺は、きっと復讐にすがり付いているだけなんだろう。

 それが無ければ生きていけないと思うほどに。


 だって、僅かな時間とはいえ、同じ飯を食って、一緒の場所で寝て、話……は出来てないけど、感覚を伝えあった仲だったんだ。

 この世界で生まれて、一人じゃなかった。

 それが例え虫でも、一人じゃないってことは物凄く心強いことだったんだ。


 こんな世界で虫として生まれたような俺がいなければ、死んでしまうような兄弟がいた。

 腹が減れば子供を食うような虫だったけど、感覚を伝えれば分かってくれる親がいた。


 人間であった頃と比べるべくもない不幸でサバイバルな虫生だけども、幸せだなと思える一瞬は確かにあった。


 それが全部、アイツに奪われたんだ。


 周囲の気配を慎重に探る。

 どうやら冷気が強すぎて他のモンスターは近寄って来られないようだった。

 あの化け物の気配もない。少なくとも、プリズムビートルとして探知できる範囲には。


 ならば、決めていたことをやろう。

 皆の形が残っていると分かってから、ごく自然に頭に浮かんだことを。


 元々の俺はキャリオンビートル。死骸を食う昆虫だ。また、共食いの虫でもある。

 だから、これが俺なりの葬送だ。


 がばり、と口を開けて、仲間の形をした氷の塊を頬張る。

 硬く、冷たく、味がない。今まで食べた何よりも不味い。

 だけど食う。

 体が外から中から冷やされて、HP自動回復のスキルを貫いてダメージを受け始めた。

 だけど食う。

 コイツは俺が餌に近寄ると露骨に邪魔をしてくる奴だった。その隣の奴は眠るときにいつも親虫にすり寄ろうとする甘えん坊で、親虫に食われないようにするのに難儀した。

 だけど食う。

 こっちの奴は奥手なのか、触覚を触れあわせるのが苦手そうだった。最初に伝えあった感覚は忘れられない。次の奴は落ち着きがなくて、移動する時によく迷子になっていた。

 皆に、忘れられない思い出がある。

 だから食う。


 皆、俺と一緒に行こう。

 俺たちは群れの仲間だから、この復讐に一匹だって置いていきやしない。

 一つの餌を皆で分け合い、一つの場所で皆で眠った。

 群れの最後の一匹になった俺が、皆と一緒にアイツを倒すよ。



『称号:『復讐者』が『復讐鬼』に上書きされました』


『称号:『魂喰らい』を獲得しました』

『称号獲得により Rスキル『魂縛』 HRスキル『精神汚染』 を獲得しました』

 


 仲間を食ったことにより、なんか色々取得したっぽい。

 そんなものを求めて食べたんじゃないんだけどな。少しだけ、俺の行為が汚された気分だった。

 だけど、まぁいい。これがあの化け物を倒す力になるんだったら、選り好みはしないさ。

 なんだって貰ってやる。




《ステータス》


名前:虹川 颯太

レベル 6

種族:プリズムビートル


HP:330

MP:200

SP:310


攻撃力:300

防御力:400

素早さ:210


スキル

N:『穴掘り』『発光』『弱毒』

R:『鑑定』『偽装』『隠密』『念話』『魂縛』

HR:『無魔法』『HP自動回復』『精神汚染』


称号

『復讐鬼』『虐殺者』『狡猾な狩人』『魂喰らい』

『システムに一方通行』


カルマ値:100




・Rスキル

『魂縛』

 倒した相手の魂を拘束し、取り込む事ができる。スキルランクにより拘束できる相手のレベルが変動する。


・HRスキル

『精神汚染』

 魅了、混乱、幻惑、忘却、などの精神系状態異常効果を攻撃に付与する。各効果のオンオフや比率は変更可能。




・称号

『復讐鬼』

 全てをかけて復讐を誓ったものに贈られる称号。

 復讐対象と戦うとき、全ての《ステータス》に+500%の補正。

 復讐が完了すると、全ての《ステータス》が永続的に-75%される。

 復讐が完遂できず死亡する場合、復讐対象に抵抗不可の呪い(極大)をかける。



『狡猾な狩人』

 他人の獲物を奪い経験値の半分以上を取得したものに贈られる称号。

 相手に気付かれていない攻撃にダメージ+5%



『魂喰らい』

 生き物の魂を一定数以上喰らったものに贈られる称号。

 精神系のスキルをランダムで2つ取得する。

 特殊進化先が解放される。



『システムに一方通行』

 反応がなくともひたすらにシステムに話しかけるものに贈られる称号。

 隠しステータスである幸運が上がるという噂がある。




 すみません、一部返却したい不名誉な称号があるんですけど。

 これクーリングオフ効かないんですかね?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ