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うじむし65





 迫ってくる驚異度の低そうなムカデの魔物。

 まぁ此処、2階だしね、そうそう強い魔物がいたら堪んないよね、挑戦者としては。

 そういう私たちは何階層レベルなんだろう? 強すぎるということで追い出された怪物カタツムリがいたけど、少なくとも私はまだそのレベルには至っていないということだよね。


 ウジムシモンスターな私が1階層まで上がって『お邪魔しました~』とか出来ないだろうから、ダンジョンから出ようと思ったら、追い出されるしか手はないかも。

 それってどれくらいまで強くなれば良いんだろ?

 取り合えずこのダンジョンを制覇できるくらいじゃないと駄目だよね。


「あのな、別のこと考えるのもいいけど、ムカデだって頑張ってるんだぞ、もう少し構ってやれよ」

「あぁ、はいはい、ほいっとな」


 幸いここは湿気の多い森の中、『氷寒魔法』で作れる氷もたっぷりさ。

 贅沢に大きな氷塊を生み出して、ムカデの頭上にシュウゥーーーーッ!

 ぱきゃ、と殻が砕ける音が響き、あっというまにムカデは死んだ。

 はぁ、今からこんなグロいの食べるのか……。狩った以上は食べるけど、うぅ、不味そうだなぁ。


 さぁ、食べようじゃないの虹川くん。

 これで私も完治になるかねぇ、ちょっと足りないかもだけど。


「……白氏さん、さ」

「んぁ? 何じゃろな?」


 虹川くんが不満気? 念話で繋がっている気配は、あんまり穏やかなものじゃない。

 あー、伝わってきたわ。念話って便利ね。

 つまり、私があのムカデを適当に片手間でぶっ殺したのに、何かモヤっとしたものを感じる、と。

 ムカデに構ってやれよって言ってたし、アレかな? 男の子だし、バトルに憧れとかあるのかな?


「いや、何て言うかさ、相手は必死になってるのに、こんな適当でいいのかってさ。命の奪い合いなんだから綺麗事ばっかり言うつもりは無いけど、もうちょっとやり方があったんじゃないのか?」

 

 一寸の虫にも五分の魂ってことかな? 虫というか、弱いモンスターも尊重してやれよってことを言いたいの?


「あのさ、私たち、進化する前ってド底辺だったよね?」

「そう、だな」

「強くなったからってわざわざ弱いやつに合わせて戦ってやる必要なんて無いでしょ? 弱いやつをなぶるなんて趣味悪いよ」

「いや、そうじゃない、弱かったからこそ相手の気持ちが分かるだろ? どうしようもない力にもてあそばれるように殺されるなんて、そんな死に方ねぇよ……」


 あー……、虹川くんは、あのムカデにかつての自分や仲間たちを重ねちゃったのか。差し詰め私は家族を殺した人型のモンスターか。

 確かにね、私がやったことって、正しく理不尽に命を奪ったことだよね。

 でも、そんなのどこでも当たり前に起こってることじゃないの?

 いちいち獲物に感情移入してたら食事も取れないじゃん。男の子は純情だなぁ。


「やっぱどうにかして4階層に降りる手段見つけようぜ。白氏さんの傷が治ったら、さ」

「私、別にそんないちいち相手の気持ちになったりしないから。そうするのは、大事な人たちだけでいいの」


 一応、その大事な人たちには虹川くんも最近入れたんだけどね。

 ちょっと前まではシステムさんだけの特等席だったんだよ? まぁ、不動の一位はシステムさんだけどね。浮気じゃないから安心してねシステムさん!


「俺は、自分より弱いモンスターを狩る気には、もうなれない。強い魔物に立ち向かう力は着々と付きつつあるんだ。だから……せめて獲物を狩るときは堂々と戦いたい」

『確実に勝てるような相手に堂々もなにも無いと思いますが。そもそも先程のムカデも先に気づいていたのは彼であり、先手も取れたはずなのです。それを瑠璃様が動くまで指をくわえて見ていただけであるばかりか、倒したことを非難するなど厚かましいと言えるでしょう』


 システムさんシステムさん、どうどう。

 そこは価値観の違いだよねー。私は別にわざわざ身の危険を侵してまで強くなろうっていうストイックでハングリーな精神は持ち合わせてないのよ。

 じゃあどうする? 別行動する? 私は4階層までの階段が開通するまでここでのんびりするよ。虹川くんは3階層で下に降りる手段を探すってことでおけ?


『これから先、狩りをするたびにいちいち茶々を入れられるのも腹立たしいですからね』


 システムさん、案外熱い男なのね。

 しかし私はクールな女。そんなことでは動じないわ。

 っていうか、まぁ、弱いときに理不尽な目に遭ったって意味では私も同じだし、虹川くんの気持ちも理解できるっちゃあ理解できるのよ。共感はできないけどね。


「……ごめん、白氏さん。俺も変なことを言ってるって自覚はあるんだ。ただ、どうしても、無神経に命を奪ったように見える光景が受け入れられない」

「感情が先走ってるのかぁ、まぁ、仕方ないよね。私もそういうことあるもん」

「本当にごめん……。すこし頭を冷やす時間が欲しいだけだから、4階層への階段が出来たら、また一緒に行こうぜ」

「ん、いいよ」


 私はそこらへん乾いてるからなー。転生を司る神様がいたら復讐しようって思ってるけど。だからといって類似したケースにまで神経を逆撫でられたりしないもん。


『あの男をもう一度仲間に加えるおつもりがあるのですか?』


 そりゃね、虹川くんは本当に頭に血がのぼって感情的になっただけだと思うよ。それで自分じゃ処理しきれないから、一旦距離を取ろうと思ったんでしょ。

 感情のままぶちまけるよりも、よっぽど理性的な判断だよ。


『瑠璃様がそう仰られるのでしたら』


 ごめんね、システムさんにも迷惑をかけるわ。でも、私のために腹を立ててくれて嬉しかったよ。


『それは勿論、『相思相愛』なのですから』


 愛の告白キタッ!

 これはもう早速教会にいかなければ! あ、でも今の私に似合うドレスってあるのかしら? きりたんぽをレースのハンカチで包みましたみたいな惨状にならないかしら?


 あ、いつの間にやら虹川くんが居なくなってる。

 そっか、もう3階層にいっちゃったか。即断即決だ。男の仕事の8割は決断だってお婆ちゃんも言ってたし。


 短い間だったけど、私を助けてくれて、心配してくれたこと、忘れないよ。

 またそのうち会えるよね、虹川くん。


『何か長い別れのようなことを思っていらっしゃいますが、彼が4階層に至ることは不可能なので、遠からず合流することになると思いますよ』


 ちょっとヒロインっぽいことを言ってみたかっただけなのです。


『瑠璃様は充分――――――』


 ちょ、システムさん、そこで切らないでよ。充分、の次の言葉によって天国か地獄なんですけど。

 おーい、システムさん?


 ……システムさん?


 システムさんの声が聞こえなくなった? ちょっとちょっと、虹川くんに続き、最愛のシステムさんにまでそっぽ向かれたら瑠璃ちゃん死んじゃう。ウジムシは寂しいと死んじゃうんだからね!



『ザザッ……シス……への不正……セス…………ザザッ……世界に……在する……ザザッ、及び…………の簒奪を確……ザザッ、ザザッ……。レベル……ザザッ……兆候は確認でザザーーーー――――』



 へぁ!?

 システムさんに何が起こった!?

 唐突な大音量の砂嵐! 私の脳内はブラウン管だったのか!

 いや、ふざけている場合じゃない。

 システムさんに何か・・が起こったんだ。以前私を助けるために応答してくれなくなった時とは雰囲気が違う。

 システムさんの声、どこか焦っていた。なにかヤバイことが起きようとしてる……、或いは、起きているんだ。


 虹川く……、いないか、絶妙のタイミングでいなくなりやがって、推理サスペンスなら虹川が犯人だな!


 その時、空を貫くように魔力の柱が立ち上った。


 その色は、金色。


 私の全身から血の気が引いた。

 進化の眠りの中で見た、あの光景がフラッシュバックする。



 この世の終わり。

 木々は枯れ、動物達は痩せ細り、悲しげに鳴きながら倒れていく。そしてもう動かない。

 浜辺には魚の死体が打ち上げられ、腐って耐えがたい臭いを発しているのに、それを啄む鳥も、蝕む虫もいない。

 町は風化していた。手を伸ばし、触れるだけでボロボロと崩れていく。

 昨日まで人々がごった返す賑やかな町であった筈なのに、たったの一晩で誰も住まない廃墟となり、荒れ果てたのだ。


 誰も彼もが死んで、消えていた。


 大切なものを・・・・・・吸い尽くされた・・・・・・・かのように・・・・・



 あの悪夢そのままの、金色の光の柱。

 だけど、それは一本じゃないはずだ。夢で見た光の柱は七色、七本だった。

 私の恐怖が現実に表れたのように、次々と魔力の柱が上がっていく。


 赤、青、黄、黒、緑、桃。


 夢だったはずの光景が、今、目の前に顕現していた。


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