うじむし63
まだ見ぬお肉を求めて戻ってきました2階層。
相変わらず鬱蒼としているね。
「俺、ここでは殆どミミズしか食ってなかったんだよな……、全滅させるまで食ったらしいけど、なんか他に食えるもんがあるといいなぁ」
虹川くんはあまり食生活が充実していたとは言えない様子。
いけませんわ! 昨今、男子でも野菜をしっかり摂るべきですわ! 若いからといって油ものを暴飲暴食していれば、将来糖尿病まっしぐらですわよ!
……そういえば異世界に、現代日本の病気とかあるんだろうか?
細かいことを言い出すと、異世界独特の細菌とかが有ってもおかしくないって話になると思うんだけど。それで、私たちには免疫がなくて、死ぬような目に遭ったりとかして……。
はわわ、システムさん、私、大丈夫かな?
『瑠璃様、瑠璃様のお体は100%この世界のもので出来ていますので、この世界の病原菌が未知、ということはありません。勿論、罹る時は罹りますが』
私も結構成長したけど、病気とかに対する耐性は充分じゃないってことね。
『腐食耐性がありますので、然程心配するほどではありませんけどね』
なかなか万能だよね、腐食耐性。腐食以外も防いじゃうスキルになったもんね。
「なぁ、立ち止まってポケーッとしてるけど、システムさんと話してんのか?」
「あぁ、聞こえないんだったっけ。メンゴメンゴ、ついつい忘れちゃうんだ」
「忘れんなよ……」
とは言いますけどね、君、私の頭の上にずっと乗ってるのよ?
視界に入らないから、乗ってる感覚に慣れると存在を忘れちゃうのよ。
「お互い、システム……さんと会話してると、なんかアレだよ、ファミレスに来てるのにスマホばっかで会話しない友達みたいだよな」
「あー……、確かに」
この道中、システムさんがいかに素晴らしく、優しさに富み、紳士的でカッコいいか、虹川くんにはたっぷりと伝えておいた。
お陰で彼もコツコツとシステムさんと会話するようにしているらしい。だけどどうも私のシステムさんと虹川くんのシステムさんは、違う人? っぽいけどね。
私のシステムさんは、私だけが独占していいのです、うふふふふ。
「チケットに補正がかかるのか……」
などと欲にまみれた言葉を呟いていたけど、きっかけが下心満載でも、関わり続ければ愛が芽生えるさ、きっと。
そして虹川くんにも私主催の『システムさんを愛する会』に入ってもらおう。
なんのことはない、私も下心があるのさ……フッフッフ。
システムさんの素晴らしさについて語り合える同志が増えることは良いことだ。
まだまだ虹川くんのシステムさんは私のシステムさんみたいに流暢にお喋りできないみたい。なので直ぐに止めてしまう。
諦めたらそこで会話終了だよ?
「さっきっから思考が支離滅裂だぞ? なんだよ『システムさんを愛する会』って、入らないぞ、そんなもん」
「なん、だと……」
「驚く要素ありましたかね? むしろ何で入ると思ったし」
「入る未来しか用意されてません」
「……あぁ、早く美味いもん食って進化してぇなぁ」
ぬ、現実逃避。
いかんぞ虹川くん! 君はすぐに逃げる! システムさんとの会話もそうです、逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ、駄目駄目駄目諦めたら!
「俺からしたら、いつもテンションが高い白氏さんの方が不思議だよ」
「失敬な、私だって落ち着いて考えたり、静かに黙っていたりする時があるんだからね、ね、システムさん」
『狩りの時などは数日間じっと獲物を待ち伏せしていましたね』
ドヤぁ? と胸を張る。頭上にいる虹川くんに、この渾身のドヤ顔を見せられないのが残念でなりませんな!
「見たくねぇし、白氏さんのシステムさんが何言ってるかも分からないから」
ハッ! そうだった、システムさんは私専門、虹川くんには声を届けられないんだった!
可哀想な虹川くん。システムさんの素敵ボイスを聞けないなんて。
「……そろそろ本気でウザくなってきたな……。もう俺の中の白氏さんのイメージは完全に息してないよ」
女子なんてみんな多かれ少なかれ自分を隠してるものよ、ふふふ、まだ虹川くんには早かったかな?
「まぁ白氏さんの残念な中身は置いといてさ」
残念!? 残念といいやがりましたよこの昆虫!
「いや実際問題な? 真面目な話、白氏さんはカタツムリに受けた傷は完治してないよね」
んぁ? なぜ急にそんな話に?
そうだねぇ、私の『再生』はなかなか万能に傷を直せるけど、SP消費が大きいのが難点なのよね。
SP回復には食事や睡眠が適切。でも3階層では獲物が小さいヒルコウモリしかおらず、満足に食べていないので、SPの回復は充分じゃなかった。
つまり、はい、傷は残ってる。
流石に一割以上には回復してるけど、HPやMPだって、まだまだ半分くらいだしね。
「2階層だからって油断できないだろ? だから手っ取り早く食事にして、回復してほしいんだよ」
「なして? そりゃまぁこっちだって当然回復はしたいけど、虹川くんが気にすることでも無いんじゃない?」
「いや、ここまで同道してるし、そもそも元同じ学校じゃん。気にするよ? 普通」
そういうもんかしら。
ということは、虹川くん、私を心配してくれているのかしら?
やだ、なんか嬉しい。
「それが普通だと思うんだけど……」
『貴方にとっては普通でも、瑠璃様にとっては嬉しく感じられた、ということですよ』
システムさん、ナイスフォロー。しかし、その声は届かないのである!
「ま、まぁ、いいじゃん、そういうことは、とにかく、この階層でどんなモンスターを狩れるのか教えてくれよ。それで一番効率のいいモンスターを狩ろうぜ」
「ふーむ、私もあんまり見てないんだよねぇ、モンスターらしいモンスターなんて、ゴブリンくらい。あとは虫が沢山だったね」
あれ、そういや本当にゴブリンしか見てないな。
ゴブリン以外は?
ウジから始まり、最初に襲ってきた昆虫。ゴブリン、ゴブリンの寄生虫、人間、後はインコやカマキリ、空飛ぶヒル、巨大な怪物カタツムリ。
なんという片寄りっぷり!? 人間を除けばゴブリンしかモンスターっぽいモンスターに出会ってないだと!?
私は、ファンタジーな世界にいるというのに、いったい今まで何をしてきたんだ……。
『それだけ生き残ることに必死だったということですよ。危険を上手く避けることが出来ていたのです。落ち込む必要などありません』
システムさん……。
そうだよね! 落ち込む必要なんて無いよね! 私の頑張った結果が今なんだから!
「相変わらずシステムさんが何言ってるかは分かんないんだけどさ……、白氏さんが異様にポジティブでテンション高いのって、システムさんの仕業なんだと確信したよ」




