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うじむし55 ヒーロー06

本日二話投稿しています



「…………と、まぁ、こんな感じかな?」


 俺たちはグロッセに連れられて英雄学園の中を散策していた。

 ついでに色んな説明もしてくれたよ。グロッセ君、本当に有り難い。

 どっかの狂人は殆ど何も説明してくれなかったからな。自分で学びとってこいって言ったって限度があるだろ。


 この学園、入学出来る年齢と学園に生徒として居られなくなる年齢というものが決まっているらしい。

 早ければ10才で入学でき、遅くとも20までには卒業しなくてはならない。

 学科は剣術科、魔術科、法務科に分かれており、更にそれぞれが大体10段階のレベルに分かれている。

 俺たちは異世界人ということで、剣術や魔術に行ける可能性は無い、らしい……。


 唯一可能性のある法務科は、簡単に言えば公務員養成学科って感じだった。少し覗いたけど、あれは無い。

 何が悲しくて異世界まで来て会社員みたいなことをしなければならないのか。

 異世界に憧れを持ってる現代人があの光景を見たら、そりゃ暴れるわ。夢も希望もない。


 いや、才能があれば知識チートとか出来るんじゃない? でも、だったら現代で頑張ったってそれなりの実績残せますよね?

 そんな言葉が雰囲気で伝わってきた。


 まぁ、知識チートとか結構出てるみたいだからな、今さら俺たちの半端な知識とかいらないよな。

 お陰で上下水道が完備された綺麗な街に住めるのだから文句はない。

 剣と魔法のファンタジーの世界の舞台になりやすい中世ヨーロッパの世界観だと、路地に大も小も出してそのままだったらしいからな。

 各国から潔癖症が過ぎるとまで言われる日本人、上下水道が無い所でなんて生きてけねぇよ。


「法務科の卒業試験が脳みそパンクしそうなテストだってのは分かったんだけど、剣術や魔術は? 私、そっちの方が気になるんだけど」


 彩華は法務科の様子をみて白目を剥いていたからな……。ついでに義人と孝介もだ。

 異世界に抱いていた憧れが木っ端微塵に粉砕されたらしい。


「君たちにはあまり関わりがない話になってしまうから、聞いても嫌な思いをするかもしれないよ?」

「それは、俺たちが憧れを募らせるだけで、叶えることが絶対にできないから、苦しむだろうということかい?」


 孝介が顎に手を当てながら言う。

 グロッセは、苦笑いをして頷いた。

 まったく、本当に良いやつ過ぎるよ、君は。


「……うん、余計なお世話、だったかな?」

「剣術なら可能性はあると思うんだがなぁ」


 春彦はまだ諦めきれないようだ。

 だが、その説明は散々受けたじゃないか。


「それでも、同じレベル、同じ武器、というように条件が等しくなっていくに連れて『スキル』の差は大きくなっていくよ」

「あぁ、もう百篇は聞いたぜ、でもなぁ」

「春彦君が望むようにすればいいじゃないですか。挑戦することまでは止めはしませんよ、ねぇ?」

「も、もちろんですよ、スズネさん」


 鈴音に笑いかけられて、グロッセは少し照れていた。

 グロッセ君、止めとけ、そいつは実は内心黒いヤツなんだ、外面が良いだけなんだよ……! 君みたいな良い人が鈴音になんか引っ掛かっちゃいけない!


「……何か?」

「いや、なんでもない」


 くっ、こいつはエスパーか!? ファンタジーな世界観にSFを持ち込むんじゃないよ。


「……結局、卒業試験は何なんだ?」


 ここで(妹関係以外では)ブレない男、鉄男が話を戻す。

 うん、いつもの流れだな。


「英雄学園の地下にはダンジョンが広がっているんだ。初心者用に調整されているらしくって、死に至る罠は無いし、モンスターのレベルも総じて低いんっだけどね」

「そこを踏破するだけ? なんか簡単じゃない?」


 ダンジョンと聞いて義人がそわそわし出した。

 これはいけないな、ファンタジー要素を多く含んだワードを聞くと、義人、孝介、彩華、あとついでに春彦はテンションが上がり出す。


 まさかいきなり突撃はしないと思うけど……。

 最悪、いざとなれば変身ベルトがあるしな。恥さえ捨てれば命の危険は無さそうだ。


「とんでもない、決して簡単なんかじゃないよ。いくら死の罠が無いと言ってもそれでも死ぬときは死ぬし、油断した挑戦者が低ランクモンスターに集られてなぶり殺される、なんて事件も毎年何件も起こっているんだから」


 ……英雄学園では冒険者を育てているって言ってたもんな、何年も学んだ上で油断して死ぬなら、それはもうソイツが悪いってことになっちゃうんだろうな。


「つい最近も、2階層のゴブリンの集落で知性の高い特異個体が見つかったって話だよ。お陰でダンジョンは調査のために閉鎖さ。でも、本当に何が起こるかは分からないんだ。だから、決して異世界人の君達はダンジョンに入っちゃいけないからね?」


 この子、ホンマえぇ子や……。

 純粋に心配してくれているのが伝わってくる。最初に俺らに注意をしに来てくれたことから正義感も強いんだろうし、生徒会長タイプなんだな。

 グロッセになら、そのうち変身ベルトについて教えても良いかもしれないな。


 狂人蒔島は、自分の発明を絶対に漏らすなって言ってたけど、もしも命の危険があれば俺は躊躇いなく……、いやたぶん躊躇うけど、変身するだろう。

 そういうときにこっちの事情を理解してくれる現地の友達がいればやりやすいと思うんだよな。


 これは、あとで皆で相談だな。


「今は閉鎖中だから入れないとは思うけど、先日もこっそり得点稼ぎをしようと侵入した生徒の一人が片腕を切り落とされて帰ってきたんだ。その子は死霊術関連ではちょっとした名の通った子だったんだけどね。だから、絶対、絶対に入っちゃいけないからね! ヨシト、アヤカ、特に君達二人!」

「エ、ゼンゼンハイロウトカオモッテマセンヨ?」

「イノチダイジニ、イノチダイジニ」


 義人、彩華、お前ら分かりやす過ぎだろ。

 だけど、ダンジョンか……。

 人目につかない所で変身ベルトの効果を確かめてみたいと思っていたんだよな。


 ちらりと回りに目配せを送ると、鈴音、春彦、鉄男、孝介も同じ考えのようだった。

 義人と彩華は、まぁ、あんまり何も考えて無さそうだ。


「入るつもりは勿論ないが、場所の案内だけしてもらってもいいだろうか?」

「コウスケ、それは後日入ろうとしているんじゃないかい?」

「そうじゃない、せめて入り口付近で雰囲気だけでも味わいたいんだよ。どっちにしろ、しばらくは入れないんだろう?」

「うーん、まぁ、衛兵が入り口を固めているし、本当に近づくだけだよ?」

「流石グロッセ、話が分かるじゃねぇか!」


 春彦、黙っているんだ。お前が喋ると胡散臭くなる。


「だけど、今後も入らないと約束してくれよ? 僕だって折角の異世界の友人を、こんなことで亡くしたくないんだ。それでもどうしてもダンジョンに入りたいんだったら、僕に依頼してくれ、三階層くらいまでなら何とか守って見せるさ」


 やだ……、グロッセ、イケメン。

 グロッセに無理させるのは嫌だけど、魔術とスキルが使えない異世界人の大人より、現地の学生の方が強いからな、一人づつくらいで見学くらいはお願いしてもいいだろう。

 いざとなったら変身ベルトもあるし、最悪、蒔島の意味不明なトンデモ兵器をちょろまかして持っていこう。

 ゴブリン程度ならミンチより酷ェやって状態に出来る物がゴロゴロ放置してあるしな。


 そうして、俺たちは学園の地下にあるというダンジョンの入り口にまで案内してもらったのだった。



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