うじむし50 しでむし08
オンラインゲームとかで、フィールドボスっているだろ?
やったことがない人は分からないかもしれないけど、アレだ、決められた範囲のみをうろうろしてるやたら強いモンスターがいるんだよ。
で、ボスモンスターなんだから、倒せば当然美味しい報酬が貰えるわけ。
俺もレアドロップの武器が欲しくて五時間くらい一つのダンジョンをうろうろしたことがある。
でも、オンラインだと戦闘に参加する人数もタイミングも自由だから、ボスの体力を必死こいて削ってる最中に横合いから持ってかれることもある訳。
別に禁止行為ってわけじゃないんだけど、やっぱり、やられた方は良い思いしない訳で。
なんでこんなことを言うかといえば、俺がやったのがまさにその横合いから持ってく行為だったからだ。
ぶよぶよとでかくてキモいうじむしみたいなモンスターと、ヤマタノカタツムリ(俺命名)が俺の目の前で殺しあっていた。
勝負は終始ヤマタノカタツムリが優勢。うじむしはでかい体が災いしてカタツムリの攻撃を回避できず、じわじわと追い詰められていた。
森の奥にあった階段を降りていきなりこの光景だよ。
いや、階段があった時点で、あ、ここってダンジョンなんだって思ったけどね!?
一階降りただけでレベル変わりすぎだろ!
小型の虫モンスターしかいなかったような場所から一転、怪獣大戦争とか意味わからんわ!
脳内で思わず突っ込んだけど、動きが止まったのは一瞬、すぐにやるべきことが分かった。
これはご都合展開ってヤツだ。修行パートで一気に成長する場面。
二大怪獣が適度にダメージを負ったところを横から美味しくいただく絶好のチャンスだぁ!
問題は明らかにうじむし側が押されているということ。
これは美味しくない。介入するタイミングを間違えれば、ヤマタノカタツムリがうじむしを殺して食べて
、はいお仕舞い。となってしまう。
せめて、俺が攻撃することでうじむしが持ち直せれば……。俺は一撃離脱して、またヘイトをうじむしに擦り付ければ良い。
カタツムリにダメージを重ねる。うじむしを回復させ過ぎない。両方一辺にやらなきゃならないのが辛いところだな。
そんなことを考えていたら、パチィン! と鞭が弾けたような音がした。
ヤマタノカタツムリが身悶えしている。どうやら、うじむしが意地を見せたらしい。
ハッハー! うじむしやるじゃん!
勝ちを確信して舐めプしてたのに、反撃くらってビビるとか、ねぇ今どんな気持ち? って煽りながらカタツムリの周囲をぐるぐる回りたい気分だわ。笑える!
よし、このタイミングだ、横入りさせてもらうぜ!
俺は勢いをつけて飛び出し、うじむしの攻撃で剥き出しになったカタツムリの肉へ食らいついた。
臭い! 苦い! 不味い!
だけど我慢できないほどじゃない、オッケーいける。肉を食い千切りながらの『穴掘り』を存分に楽しむとするか!
がじゅがじゅがじゅ、とカタツムリの肉を食い破る。
ヤツも危険な虫に食いつかれたと理解したんだろう、何本もある首を振り回して抵抗してきた。
俺が潜り込んだ首は特に大暴れ。だけどもう遅い、体内に侵入された時点で詰みだ。
うじむしよ、俺がここで体力を削りつつタゲ取りしてるから、その間に体力を回復させるんだ!
これがオンラインゲームなら回復薬を恵んでいる場面。
あ、でもヤバイな、これ外の状況が全然分かんねぇ。
うじむし、回復してるよな? まさか俺に任せてスタコラサッサしてないよな?
……あり得るな。
よし、落ち着こう。このまま体内で暴れ続けて勝てる確率は?
知らん。
この階層、初戦闘がコレだもんよ、そもそもヤマタノカタツムリが通常モンスターなのかボスモンスターなのかも分からん。
カタツムリが暴れた衝撃でじわじわHPが削れるが、『HP自動回復』が良い仕事をしてくれているので気にならないレベル。
あ、そうか、スキル使えば良いんだ。
俺の狩りって『偽装』と『隠密』を併用した待ち伏せからの一撃スニークキルばっかりだったから、他のスキル使うっていう考えがすっぽ抜けてた。
戦闘中だけど、チラッとステータス確認しよう。
《ステータス》
名前:虹川 颯太
レベル 3
種族:プリズムビートル
HP:240
MP:140
SP:220
攻撃力:210
防御力:280
素早さ:150
スキル
N:『穴掘り』『発光』『弱毒』
R:『鑑定』『偽装』『隠密』
HR:『無魔法』『HP自動回復』
称号
『復讐者』『虐殺者』
カルマ値:65
以前より少しレベルが上がったか。
『弱毒』と『無魔法』なら使えそうだな。
まずは『弱毒』で選べる麻痺毒、出血毒、溶解液の内から出血毒を選択。これで体内攻撃に継続ダメージが重なり、より大きな効果が期待できる。
「「「オォォ…………」」」
カタツムリが苦しんでいる声がくぐもって聞こえる。
毒は確かに効いているようだ。
お次は『無魔法』を……。
と思った所で状況に変化があった。
俺はうじむしが攻撃した箇所から下に向かって食い進んでいたんだが、目の前に何かの先端らしきものが突き刺さったのだ。
危なッ!
もう少しで俺も巻き込まれる所じゃねぇか!
いやでもこれは、うじむしの反撃か。
アイツ、逃げてなかったのか。
それはどうやら氷の槍?の先端のようであったが、カタツムリの体温で溶け出すと、鼻を突くような臭気を上げながら周囲の肉を溶かし始めた。
あのうじむし、強酸のような性質を持った液体を凍らせて撃ち込んできたらしい。
恐ろしい攻撃をするな。体内に侵入して、毒を撒き散らしながら肉を食い荒らしている俺が言えたことじゃないけどな。
カタツムリの動きは明らかに鈍くなった。
中から外から毒に侵されて、HPが相当減衰したのだろう。
そして、あれだけ追い詰められていたうじむしが、同じような攻撃を連続で放てるとは思えない。
出来たら最初ッからやってるだろうからな。これが奥の手だったのだろう。
つまり、俺の思惑通り、双方ともに疲弊しきったということ。
じゃ、そろそろ漁夫の利を取らせていただくとしますかね。
悪いなモンスター共、これって生存競争なのよね。




