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うじむし49




 システムさんによるカタツムリモドキ強制退去に浮かれていたけど、私・瀕死・ナウ。

 じわじわ回復してきているけど、HP・MP・SP共に一割くらいしか残っていません。

 でも格上相手に生き残ったんだから上々だよね!

 幸い、あのカタツムリモドキがこの階層のモンスターを食い荒らしてくれたらしく、今の私に差し当たって危険は無さそうだ。


 これで頭上のコウモリヒル達が一斉に襲いかかってきたりしたら死ねるけど。


「ははは、それは心配ないよ。今回は迷惑かけたと思ってるから、少しサービス」


 マジか。襲われる心配なしか。

 ていうか普通は襲われるのか、鬼畜過ぎだろダンジョン。


「だから、本来はこんなこと起こらないんだってば。あのミミックといい、君といい、いったい僕のダンジョンで何が起こってるんだか」


 ん……?

 いやいやいや、しれっと話してるけど、誰だお前!?

 いつの間にか私の目の前に金髪碧眼の幼女が!

 外見年齢8~9歳、金髪なのにおかっぱヘア、お目目ぱっちりくりくり、着ている服はベビードールだとッ!?

 おまわりさん、こっちです!


「……? 何言ってるのか分からないけど、僕が小さいってこと? 数日前に生まれたような君に言われたくないなぁ」


 いやアンタほんと誰?

 登場に脈絡無さすぎ。意味がわかんないわ。


『瑠璃様、これは学園迷宮のダンジョンマスターです』


 へぇぇ、この子がねぇ。って、えぇえええええええ!!?


「うわ、うるさ、一応君に合わせてチャンネル開いてるんだから、もう少し静かに思考してよ。君も良くこんな奴のサポートなんかしてるよね」

『瑠璃様は優しく強い方ですよ』

「はぁん、君にそこまで言わせるものを、このウジちゃんが持ってるのかねぇ?」


 ……あのさ、さっきから置いてかれてるんだけど、何故にこの娘ッコはシステムさんの会話に介入できるんだい?

 システムさんとの絆は私だけのものよ!


「ウジちゃんの主張はどうでもいいとして、システムと名乗ってる奴にご紹介にあずかった、僕がこの学園迷宮のダンジョンマスターだよ」


 どうでも良くない! システムさんと私は『相思相愛』、なんだか前から知り合いみたいな話してるけど、君のようなチミッコに入る隙間なんて無いんだからね!


「どうでもいいって言ってるでしょ? 声だけの奴に好きだ嫌いだなんて言うほど、僕も暇じゃないの」


 んだとコラ、システムさんが魅力的じゃないと申すか?

 おま、システムさんの優しさ知らないな?

 毎回スキルチケット奮発してくれたり、私の話に延々と付き合ってくれたり、分からないこと丁寧に教えてくれたり、危険なことを予め注してくれたりしてくれるんだぞ?

 これを愛と呼ばずしてなんと呼ぶ!?


「僕、今回その優しいヤツに迷惑かけられたから」

『自分のダンジョンの管理が出来ていなかったのです。むしろ、迷惑程度で済んで良かったでしょう』

「は、聞いたウジちゃん、今の言葉。こういうヤツなんだよ、コイツは」


 まるで状況の理解が追い付かないから、よく分からんが、システムさんとチミッコの関係が嫉妬に足るものだということは分かった。

 何そのお互い分かりあってる感……。ギリィッ。


「わざわざ歯軋りの音とか再現しなくていいから。歯なんか無いでしょウジちゃん」


 えぇい、私は確かにウジムシだが、ウジちゃんと呼ぶんじゃない! 私はその呼ばれ方が大嫌いなんだ!

 呼ぶならせめて下の名前でお願いします!


「じゃあルリちゃん、今回のことなんだけどさ、本当にごめんね。僕はダンジョンマスターだけど、ここは未熟者の育成を掲げているダンジョンだから、僕が出来ることにも色んな制約があるんだ」


 んー、あのカタツムリモドキに、ダンジョンマスターとして対処できなかったことを謝ってるの?


「うん、本来ならマスター権限であいつをダンジョンから追放できた筈なんだ。だけど、僕には許されてない、だからシステムのヤツが動くまで何も出来なかった。君達が傷つくのを黙ってみているしか無かったんだ。だから、ごめんなさい」


 いや、過ぎたことだし、もういいよ。


「そうだよね、謝ったところで、そう簡単には…………え?」


 いや、過ぎたことだし、もういいよ。


「いやいや、繰り返さなくても聞こえてる、ていうか、聞き間違いじゃ無かったの!? 君、見殺しにされかけたんだよ? そんなにアッサリ許していいの!?」


 だって、システムさんが最後には助けてくれたし、結果的には生きてるし、あのカタツムリモドキはどっかに飛ばしたんでしょ?

 こんな姿に生まれたんだから、弱肉強食の世界でサバイバルしなきゃいけないのは覚悟してるよ。

 普通なら食い殺されて終わってるところを、システムさんに助けてもらったし、チミッコには心配してもらってた。

 それを感謝こそすれ、恨む道理は無いわ。


「……なんというか、ルリちゃん、すごい考え方してるんだね。普通そこまで割りきって考えられないよ」


 これが悪意があってカタツムリモドキをけしかけてたんだって言われたら怒るよ? でも、今回は事故なんでしょ? だったらチミッコに怒るのは筋違いじゃない。


「はぁ、システムのヤツが気に入るのも分かる気がするよ」

『そうでしょう?』

「自慢気に言うなよ、腹立たしい」


 おいそこ、仲いい会話しないで、腹立たしい。


「そこは怒るんだ!?」


 当たり前だるるぉお!? システムさんとイチャイチャするのは私なんだァ!


『ありがとうございます、瑠璃様』

「……ッはぁああ~……」


 うふふ、こちらこそ、システムさん。


 システムさんの下腹部がきゅんっとするようなボイスでお礼を言われた私がぐねんぐねんと悶えていたら、チミッコが盛大にため息を吐いた。

 失礼な奴め。


「なんか、疲れたからもう本題入っていい? 良いよね? 答えは聞いてない。えー……、迷惑かけちゃった二人には、僕からささやかなプレゼントを贈らせてもらうよ」


 ふふん、チミッコめ、システムさんにもプレゼントを贈って点数を稼ぐ気か?

 無駄無駄無駄ァ、私だってシステムさんにプレゼントを贈ればイーブンだもんね!


「いや、ルリちゃんがどうやってシステムに贈り物するのさ? それに、さっきも言ったけど僕はシステムのヤツには迷惑をかけられたと思ってるから、間違ってもプレゼントなんかしないよ。あ、嫌がらせなら別だけど」


 私からプレゼント……そりゃ、アレだよ……、やっぱ愛だよね!


『瑠璃様からはもう返しきれないほどの愛を頂いておりますよ』


 あぁん、システムさん、素敵!


「そういうの、後でやってよね。で、僕がプレゼントを贈らせてもらう相手は、ルリちゃんと……、そこの君だよ」


 チミッコが振り向く。

 そこには、カタツムリモドキが捨てた首が一本、でろーんと落ちてるんだけど……。

 そこに何かいるの?


 あ、そういえば、私がカタツムリモドキに噛み付かれる寸前、なんやかんやで助かったんだよね。

 あの時、システムさんはダンジョンマスター権限の行使の準備をしていたらしいので、噛み付きを阻止してくれたのはシステムさんじゃない。


 と、いうことは、チミッコの言う、そこの君とやらが恩人なのかな?


「そうだね、なんで隠れているのか分からないけど、取り敢えず出ておいでよ」


 もぞり、とカタツムリモドキの肉が動いた。

 うぇ、内部を食い漁ってたってこと? 体液噴き出してたしね、そういう攻撃してたんですね分かります。


 肉の隙間から這い出るようにして、それは姿を現した。

 最初に目に入ったのは、強靭な顎。肉を切り裂くことに特化した、鋭利な鋏のようだ。ぎょろりとした複眼が油断なく周囲を警戒している。どうやらチミッコのことを特に警戒しているようだった。いや、これは……、怒り?

 しかし、それらの印象は全て、すべらかな外殻を見たときに吹き飛んだ。

 虹色なのだ。七色べっとり塗られているということではない。白をベースに、光の加減で七色に光っているのだ。


 すげー、カタツムリの体液まみれじゃ無かったら綺麗だったんだろうなー。


「へぇ、珍しいモンスターだとは思ってたけど、まさかプリズムビートルかい。ルリちゃんといい、本当に僕のダンジョンはおかしくなったみたいだなぁ」


 言ってることとは裏腹に、チミッコの声音は楽しそうに弾んでいる。


 これが、私にとっての、彼との初会合だった。



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