うじむし42
それから暫くは『経験則』で《ステータス》の強化とスキルの獲得に励む日々が続きました。
といっても、やることはあんまり変わらないんだけどね。
森の中をうろうろしては、目ぼしい獲物を探して『狙撃』もしくは『氷寒魔法』のごり押しで仕留め、美味しく頂くだけの毎日です。
うぬぼれじゃなければ、私はここではかなり強いモンスターの一角になりつつあるようだ。
確信は出来ないけどね。
チート貰っておいて、目立ちたくないんだ(キリッ)とか言うつもりはないけど、本来が小心者の私。
毎日、自分より強いモンスターや、レベルの高い冒険者が現れるんじゃないかとビクビクしながら過ごしています。
なんだっけ、ここに来た冒険者っぽい二人組が言っていたことを微かに覚えているんだけど、ここってダンジョンなんだよね。
だとしたら、上、もしくは下に通じる階段がある筈なんだよ。
ここいらのモンスターもあらかた摘まんだし、次は他の階層に言って食べ歩きたいね。
小心者のだけど、食欲と物欲には勝てないんだ……。
きっと『欲望喚起』は誰よりも私に作用しているに違いない。
ちなみに、この階層――何階かは分からないけど――のお勧めは、巨大なカマキリです。たしか名前は偏食家。システムさんが教えてくれました。
何でも、獲物の内臓しか食べないだってさ。勿体ない精神を叩き込みたい相手だね。
コイツのね、腕の味がいいんだよ。
外はバリッと、中はプリプリ。ソフトシェルクラブを思わせる味わいなのです。
カマキリっぽいから寄生虫が心配だけど、そこは『氷寒魔法』で腕以外をカチンコチンに凍らせれば怖くないしね。
実際、一回だけとんでもなく細長い寄生虫がにょろにょろ出てきたことがあった。
あれには絶叫した。
声は出ないけどね。あまりの絶叫っぷりに、システムさんが戸惑っていたくらいだから、よっぽどだったんだろうなぁ。
当然凍らせて粉々に砕いてやったけどね。
あれは食べる気も起きなかった。
沢山食べて食べて食べまくり、今の私は全長5メートル近く、幅は80センチをオーバーしている。
体重は、分からんな。知ろうとも思わんわ! ハッハッハ!
『経験則』から新たに獲得したスキルは『麻痺毒』『麻痺耐性』『呪毒』『呪い耐性』『嗅覚』の5つだ。
『麻痺毒』と『呪毒』の二つは『腐蝕性血』に統合されたようで、名称こそ『腐蝕性血』のままだけど、私の血液は腐蝕、麻痺、呪いを同時に与える恐ろしい毒となった。
同じく『麻痺耐性』『呪い耐性』も『腐蝕耐性』に統合されていた。
どうも『腐蝕』の効果は状態異常系統の中でも上位に位置するみたい。
こんな強いスキルを序盤から獲得していたなんて、やっぱり私は運がいい。
いや、これもシステムさんのお陰だね。
これでますます『狙撃』が輝くぞ!
『嗅覚』も地味に助かる。
極希にだけど、『感知』から逃れるモンスターが居るんだけど、そういう時は『嗅覚』で気付けることがあるのだ。
奇襲、襲撃の危険は可能な限り潰しておかないとね。
私の攻撃が『狙撃』による奇襲メインだからこそ、奇襲には最大限注意を払っておかないと。
新しいスキルの検証もあらかた終わり、私は餌を探して森の中をさ迷っていた。
ここ数日で私がそれなりに強い魔物であるということが周囲の魔物にも知られてきているようであり、中々獲物が見つからなくなってしまったのが痛い。
たまに見つけても、腹の足しにもならないような、小さなウサギだったり、虫の群れだったりするんだよなぁ。
どちらも魔物なんだけど、なんか、こう、明らかに弱すぎる相手を襲う、というのも、気が引けるんだよね。
特にウサギなんか、可愛いし。
自分がうじむしだからね。可愛いものには出来るだけ優しくしてあげたかったりなんだり……。
『やはり、そろそろ階層を移動すべきではないでしょうか?』
うん、なんども考えているんだけどね。
やっぱりちょっと、勇気が湧かないというか、ここがダンジョンなのに森の中になってるってことは、他の階層は環境がまったく違ったりするかもしれないんでしょ?
それは、ちょっと怖いなぁ。
『この下の階層は、洞窟のようになっているようですね』
あれ、システムさん、それは開示していい情報なの?
なんか、今までだったら駄目そうなんだけど。
『瑠璃様がお強くなられたので、開示出来る情報も増えているのです』
じゃあ、このダンジョンの名称と、此処が何階層目とか分かったりするのかな?
『はい。ここは『学園迷宮』と呼ばれる『英雄学園』の地下に存在する全十階層のダンジョンです。危険度は下の下、以下ですね。此処は二階層目になります』
あー……、質問したら余計に聞きたいことが増えていく感じだなぁ。
取り敢えずここが何て呼ばれているのか、どれくらい危険なのかというのは分かった。
しかし、下の下、以下、と来たか……。
まぁ、ステータスオール1だったウジムシが、生き延びることが出来たくらいだもんね。そりゃ簡単なダンジョンだろうさ。
英雄学園とやらについては聞けるのかな?
『簡単な概要だけですが、一般人から貴族、王族まで入学できる、学校のようなものですね。一般教養からサバイバル知識、魔術、戦闘技術、戦術などを教えているようです』
なるほど……。そんな場所の地下にあるダンジョン、ということは、此処は腕試しや試験の場所に使われているのか。
『その通りです。むしろ、異様なほど難易度の低いダンジョンであったので、育成の場とするために学園が出来たようですね』
学園の方が後付けなのかよ。
いや、そうじゃない。そこが重要なポイントじゃない。
重要なのは、人が沢山いる建造物がダンジョンの蓋をしている、という事実だ。
当然、モンスターがダンジョンから出ないようにはしてあるだろうし、出られたとしても、巨大なウジムシである私が、人間とまともに交流出来るとは思えない。
もともとコミュ障だし……。
うぅ……、いきなり知らない人間と関わるくらいなら、私は下に行く。
システムさん、下に行く階段はあるんだよね?
『はい。それではご案内致します』




