うじむし39
それは、この世の終わりだった。
木々は枯れ、動物達は痩せ細り、悲しげに鳴いていた。
浜辺には魚の死体が打ち上げられ、足の踏み場もない。
腐って耐えがたい臭いを発しているのに、それを啄む鳥も、蝕む虫もいない。
みんな死んでいるからだ。
町は風化していた。
昨日まで人々がごった返す賑やかな町であった筈なのに、たったの一晩で誰も住まない廃墟となり、荒れ果てたのだ。
住民は消えた。
溶けるようにして、最初から影法師であったかのように、ふ、と消えた。
誰も彼もが死んで、消えていた。
大切なものを吸い尽くされたかのように。
後ろを振り返る。
そこに、この地獄ような光景をを引き起こした奴等がいる。
何故か、それが分かる。
吹き上がる魔力の柱。
その数、七本。
赤
青
黄
緑
黒
桃
金
禍々しい虹のように、圧倒的な威力を周囲に撒き散らして、七本の光は天を貫く。
大地から命を吸い上げて、尚も輝く破壊の華。
止めなければ、このままでは世界が死んでしまう!
もう手遅れかもしれないけど、まだ、希望は残っている。まだ何とかできるはず!
立ち上がろうとするが、不意に気付く。
足が……無い。
腕も、首さえも。
そうだ、私はもう、負けていた。
世界を守ろうとして、愛した人さえ犠牲して、それでも尚、届かなかった。
希望なんて、もうとっくに無かったんだ。
こんな。
こんな理不尽で終わるのか。
守るために戦って、守りたいものも、守らなくちゃいけないものも奪われて、失って、最後に残った命さえ、届かなかった。
相手は正義のヒーロー。
自分は邪悪の権化。
そう定義されて、恨まれ、憎まれ、罵倒され、それでも最後はこの世のためと尽くしてきたのに。
こんな最後なのか。
視界が真っ赤に染まる。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
死んでも死にきれない。
このままじゃ終われない。
頬を伝う感触は、きっと血の涙。
世界を終わらせる七つの柱。
赤色が私に近づき、何かを言う。
もう聞こえない。だけど分かる。
私と分かり合えなかったとか、君が世界を滅ぼすのを止められなかったのは残念だ、とか言ってるんでしょう?
ハッ、笑っちゃうね。
お前らがそうなのにさ!
最後まで気付かないで、こっちの言葉に耳を傾けないで、それでこの有り様になってまだ勘違いできるのかよ。
ははは、最初から分かり合えなかったんだね。
だったら、最初から、最初に会った時に、躊躇わずに殺しておけば良かったよ。
ほんと、自分が嫌になる。
かつての友達、七人のヒーロー。世界を滅ぼした大悪党共。
お前らなんか地獄に落ちろ。
◆◆◆
うぁ。
夢見最悪。
なんかとんでもない夢見た。
詳しくは覚えてないけど、凄くイライラして、我慢できなくて、喚き散らしたくなるような、怒りと悲しみと失望と諦めがごっちゃになってるような…………。
あーッ! もう!
最悪! ホント最悪! せっかくの新たな目覚めだって言うのに、生涯最悪の目覚めを記録しちゃったよ!
うがぁあああああッ!
『……随分、荒れていますね』
あぁ、システムさん、マイダーリン! 聞いてよ、最悪な夢見たんだよ! 悪夢だよ悪夢!
なんか、こう、世界が滅んでるチックな場所で、魔力ドバーッな柱が残念でしたねプププーッ!って感じ!
『……??? それは、その、大変でしたね?』
そう!
そうなのもう! 大変だったよ!
二度と見たくないね、あんな夢!
『それで……進化は完了していると思うのですが、何かを不調はございますか?』
んん? あぁ、そっか、進化終わってるんだっけ。
あまりにも悪夢のインパクトが強くて忘れてたよ。
『お気持ちお察しします……。恐らく私の不安がフィードバックしてしまったのでしょうね』
システムさん、後半小さくて聞こえないよ。
まぁ、システムさんが聞かせたくないことなら無理に聞かないけど。
『すみません。それでは、一緒に《ステータス》の確認を致しましょう』
《ステータス》
名前:白氏 瑠璃
レベル 1
種族:ミュータントマゴット
HP:126/126
MP:2000/2000
SP:180/180
攻撃力:45
防御力:90
素早さ:58
スキル
N:『射出』
R:『腐食性血』『腐食耐性』『感知』
HR:『魔術知識』『言語理解』『欲望喚起』『氷寒魔法』
称号
『システムと相思相愛』『共食い』『神肉食』
カルマ値:0
おろ? 少しスキル変わってる?
『はい、『氷魔法』が『氷寒魔法』に『酸性血』『酸耐性』がそれぞれ『腐食性血』『腐食耐性』にランクアップしましたね』
進化することで結構変わるスキルもあるんだねぇ。
熟練度みたいな隠しステータスが関係してたり?
『申し訳ありません。開示できない情報です』
ンモー、そればっか。
ま、いいよ。大丈夫。それよりスキル新しくゲットしようよ。
進化したから、スキル貰えるよね?
『勿論です。今回はチケットとポイント、どちらに致しますか?』
チケットで。
『おや? 以前、ポイントにすると仰ってませんでしたか?』
うん。
考えたんだけどね、ポイントって、確かに魅力的なんだけど、レベルアップする中で稼げるんだよね。
ポイント引き継ぎのスキルを持ってないから、使いきれない半端分とか出たら悩みそうだし、チケットでスキルがダブっても、統合できるかな、って考えたら、チケットを選ぶデメリットが無いからさ。
自由に選べないのはデメリットと言えばデメリットだけど、私、ガチャポンとか、籤とか引くときのワクワク感、すっごく好きなのよ。
『なるほど。ではチケットをご用意いたします』




