うじむし03
どうやらこの世界にはレベルという概念があるらしい。
つまり、ファンタジーだ。
私をウジムシ転生させた、居るかどうかも分からないクソ神は絶対に許さないが、ファンタジーの世界に連れてきてくれたことだけは感謝してもいい。
私も一端のオタク女子。
ゲームや漫画の世界に行きたいと憧れない日は無かった。
常日頃から二次元に行けるなら何だってするのにと本気で思っていたものだ。
流石にウジムシにされるとは思ってもみなかったけど。
何だってする、というのは自分が予測できる範囲でしか無かったのだと思い知らされましたよ。えぇ。
レベルという概念があるならば、きっと進化という概念もあるはず。
そしてファンタジー世界に何故か地球原産の悪魔や天使的な存在が上位にいることは確定的に明らか。
進化ツリーを間違えずに辿れば、私も神に届くレベルまで進化できる! と思うのだ。
いやまさかウジムシから普通にハエになって人(虫)生終了は無いでしょう。
じゃあ何のために転生させられたのよ、ってなるじゃない。
まさか本気の本気でただの事故で、進化も何も関係の無いウジムシになっていたとしたら、詰む。どうしようもなく詰む。
だからこの問題は無かったことにします。ワタシハナニモシラナイ。
異世界転生のは大体理由有りきで行われているはず。
魔王を倒すとか世界を救うとか主人公に巻き込まれて、とか。
だったら私が強くなる道は残されている筈なのだ。
そして、それならば少し期待している進化ルートがある。
私は現在、不本意ながらウジムシをしている。ウジムシとはハエの幼虫だ。
そしてファンタジー世界には地球原産の悪魔や天使的なものがある。
ふふふ。そう、ハエで悪魔といえば有名なあのお方、ベルゼブル! ハエの王にして暴食の悪徳を司る魔王の一柱。
神に復讐しようというのだ。進化ルートに魔王が有りそうというのは中々都合が良いじゃないか。
それに異世界転生物語に定番の『暴食』。
これは大体チートであるはず。
食べた相手の能力を奪えたり、エネルギーを貯蓄したり、攻撃を吸収したりといった『食べる』イメージをそのまま能力に変換したような壊れ性能を持つことが多い。
来ましたわこれは勝ち確ですわ。
雑魚でウジムシな私でも、相手を食らえば強くなれます。
小説版のタイトルはこれだな。
これこそ成り上がりの王道!
日本のオタク知識を以てすれば、たとえどんな生き物に生まれ変わろうと強大な存在に進化できるルートを発見できる!
他にも美容品や衛生用品、調味料を作っちゃったり何だりして生産チートしてもいいね。
愚かなクソ神め、私を安易に転生させたことを悔やむがいい。
絶対に這い上がってお前の顔に腐った肉を塗り込んでやる。
『獲得経験値が一定の値を越えました。名前:未設定 はLv. 3からLv. 4にレベルアップしました』
そういえば名前は未設定のままなのか。
私は人間の記憶がしっかりあるし、人間の自分を捨てる気も全く無いから、名前はちゃんと自分のものを設定しよう。
こういうのは、念じればいけるはず。
『名前:未設定 の名前を 白氏 瑠璃に変更しますか?』
ほらね、念じれば通じるんだよ。
変更も何も、それが本来の名前だからね。
イエスっと。
『名前が白氏 瑠璃に設定されました。名前の設定完了により、『ステータス閲覧』が可能になりました』
キタ!ステータスキタ!
ファンタジーのド定番、これが無くては語れないという程の
存在。
それがステータス!
きっとこれもクソ神の手のひらの上なんだろうけど、ここは有り難く利用させてもらおう。
魔王にまで至ればそこら辺も何とか上手く出来るでしょ、多分。
神が居るかどうかも定かじゃないけどな! 魔王になれるかどうかも不安だけどな!
まずは見てみないことには話が始まらないね。
《ステータス》
名前:白氏 瑠璃
レベル 4
種族:ベイビーレッサーマゴット
HP:1
MP:1
SP:1
攻撃力:1
防御力:1
素早さ:1
スキル
なし
称号
なし
……想像以上にキッツいな。
種族ベイビーレッサーマゴットってのも酷い。赤ん坊で劣等種なウジムシってことだよね。
そしてステータスオール1
スキルなし、称号なし。
進化云々じゃない。まずは生き延びないと。