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うじむし28 ヒーロー03




 その後、変身した鉄雄に狂喜した蒔島を、狂喜させた鉄雄が掴まえて黙らせ、ベッドで呼吸困難に陥っている春彦にチョップを落とした所で、変身騒ぎは一応の落ち着きを見せた。


「それで……、何故変身ベルトなんですか?」


 そこで雄大が仕切り直し、新に疑問点を整理した。


 後で必ず実験と検証に協力するという約束で一応冷静さを取り戻した蒔島は、再び鼻息荒く立ち上がる。


「こいつの名は限定神化装置アンリミテッド・デバイス! 我々異世界人がこの世界で戦う為の兵器じゃぁッ!」


「え、わざわざ変な装置で戦うって、異世界人って、チート持ちなんじゃ……」

「それが出来たらワシがこれを作ったと思うか? ん?」


 義人が酷く落ち込み、肩を落とした。

 彼はチート無双にも憧れていたようである。


「他所様の設定は知らん。ワシ等はそういう世界に来ちまったんじゃ。この世界でワシ等には戦う力がある。じゃがの、ワシ等に戦う力はないんじゃ」


「戦う力があるのに、無いとは、どういうことでしょう?」


 鈴音が困ったように頬に手を当てる。

 特撮を知らない高校三年生としては、変身は遠慮したいようだった。


「先ず魔力。魔力という概念を持たぬ世界から来たワシ等に、魔力を十全に扱うことは出来ぬ。体の器官が違う。ワシ等は魔力を使う回路を持っておらぬのじゃ」

「……だが、さっきの俺は……」


 鉄雄が外したベルトに目をやりながら、後ろめたそうに呟いた。

 妹を思うあまりの暴走、そして変身までの流れを彼は忘れたいようだった。


「そう! それよ! ワシは諦めんかった! 魔力が使えん? ならば使えるようにしてみせる、とな! そして長年の研究の末に、ある特殊な鉱物ならば異世界人の持つチート級の魔力を取り出せることに気付いたのよ!」


 蒔島の目がまた狂気に輝き始めたので、春彦が軽くチョップして正気に戻す。

 ブラウン管のテレビを直すように、斜め45度の角度がコツである。


「じゃがお陰で国に目を付けられてのぉ……。そりゃそうじゃろな、今まで持て余すだけだった異世界人から、魔力を吸い出せるとあれば、そりゃ欲しいじゃろ」

「あの、もしかして、国に追われてるんですか?」


 恐る恐る、といった感じで彩花が訪ねる。

 蒔島はにんまりと笑った。


「逆に協力を取り付けた、そうですね?」


 孝介が確信を持って言うと、蒔島は哄笑を上げる。


「ひゃひゃひゃ! 痛快じゃったぞ!? 今まで散々人を狂人扱いしおった連中が、ワシに頭を下げるのはなぁ!」


 春彦が再びチョップを構えるが、今度は、蒔島は自分で正気を取り戻した。


「ふぅ……。いつ思い出しても笑えるわい。それでのぉ、なんじゃったか、ホラ、あれじゃ、王都でお前らが死んでての、拾ってきた死体付き出して魔力取り出せって言うから、言うことを聞く振りをして…………改造しちゃったんじゃ☆」

「何てことを……」


 それは予想外だったのか、孝介がぐったりとベッドに沈み込んだ。


「改造って、何しやがったジジィ!」


 不穏な言葉に春彦が噛みつくが、止める者はいない。先程と状況が違い、さすがに見過ごせる話題ではない。


「話は終わりじゃないぞい、座っとれ。えーっと、そう、改造じゃな。これは高純度の魔核を埋め込んで、適正のある魔法を引き出した。髪の色が変わったのは魔核が定着した証拠じゃな! 大したもんじゃないわい。心臓が二つになったみたいなもんじゃ、むしろお得じゃろ?」


 心臓が二つになりました、と言われて、ハイそうですか受け入れられる人物は稀だろう。

 ローブの中、自分の胸元に大きく縫った傷が有ることを確認してしまった鈴音は、そのまま気絶した。

 義人と彩花も青い顔をしている。


「……他にはあんのか?」

「そうじゃの、お前らのヘソの辺りに、魔核とデバイスを繋げるバイパスを作ったじゃろ? 他には、あぁ、背骨の一部を魔力増幅炉に変えたのぉ。後は……」

「……もういい、聞きたくねぇ」


 どんどん出てくる肉体の改造箇所に、春彦がうんざりしたように顔を手で覆った。


「お陰で死後何日も経っていたお前らが生き返れたんじゃぞ? 感謝せんかい、感謝」

「…………まぁ、そこはよ、ありがとよ」


 呻くように何とか礼だけは口にする。

 そうだ、死ぬよりマシじゃないか、と自分に言い聞かせて。


 雄大と孝介、義人と彩花は呆然自失、鉄雄は考え込み、話を続けられる状態ではない。

 春彦は、自分が頑張らなければならないか、とため息を吐いた。


「肉体強化、魔力増幅、変身機能、人の体をよくも変えてくれたもんだと思うがよ、それでジジィ、てめぇ俺等に何させるつもりだよ?」

「ひゃひゃひゃ! 話が早いのぉ! じゃがな、早すぎじゃな! 急ぐな若人! 先ずはデバイスの説明を聞けぃ!」


 蒔島は机からさらに六つのベルトを取り出す。

 それは色分けされており、それぞれが自分の髪の色に対応しているようだった。


「おいおいおい、嘘だろ、俺のもかよ……。まぁ、話の流れで分かってたけどよ……。金ぴかはねぇだろ金ぴかは……」


 春彦の嘆きを無視して蒔島は興奮に声を荒げる。

 出来るなら自分も呆然と意識を飛ばしてしまいたいものだ。自分の太い神経が、こんな時は恨めしい。


「当たり前じゃが、コイツを付けておらんと変身出来んぞ? お前らの魔核と対応している、例の特殊な金属で作られておるから他人には使えん。ひゃひゃひゃ! バカどもが悔しがる顔が目に浮かぶわい!」


 こんな色になるのだったら、鉄雄を笑うべきではなかった。

 全身金色は流石に趣味が悪い……。

 だが、変身しないと戦う力が得られないという……。最悪だ。


 いや、異世界にいるからといって、戦わなければ生き残れないということは無い筈だ。

 まさか今さら、魔王を倒したり何だりしなければ帰れないなんてことはないだろう。

 そんな単純な方法で帰れるなら、目の前の狂人がとっくに発見していると思える。


「良いかな、本来なら発揮できない魔力をベルトを通して噴出させ、バックルに魔水晶を形成する。この魔水晶を作る過程で既に気付いておると思うが、魔力は変化を促すもの、という観点から――――――」

「ジジィ、説明はもういい」


 春彦が蒔島の説明をぶった切る。

 実に残念そうな顔をしながらも、蒔島はしぶしぶ話を止めた。


「実験だろうと検証だろうと俺が協力してやる。だから、帰る方法を教えろ、知ってるんだろ?」


 鉄雄がハッと顔を上げる。

 恥を捨て、変身をしてまで生きて帰ることを選んだのだ。

 もしも帰る手段があるというのがハッタリだったなら、自分がどうなってしまうのか、鉄雄にも分からなかった。


「じゃからワシは知らんって。じゃが、知ってそうな奴は知っておる。ちゅうか、出来る奴、出来なきゃおかしい奴じゃな」

「誰だ、ソイツは……!」


 詰め寄る鉄雄に、蒔島は今までで一番狂ったような笑みを浮かべた。



「ソイツはな





            ――――――――神じゃよ」



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