うじむし25
凍った肉をお腹に収めつつ、『氷魔法』の考察を続けましょう。
といっても、やることはもう実践だけどね。
システムさんは『私の考えが瑠璃様の発想を狭めてはいけませんので』と沈黙している。
でも私には分かる。
システムさんは、優しく私を見守ってくれているって!
だから安心して色々試していこう。
まずは、どれだけ大きい氷を作れるか。
今は未だどうしても温度変化を挟まないと氷を作れないけど、その内、サクッと氷を作れるようになりたいね!
凍る前にどうしても冷たい空気を送らなきゃいけないと、勘の良い相手や、何度も戦っている相手、連戦中なんかで、魔法発動の前兆がバレそうだ。
ついでに、二酸化炭素や窒素を操作できるようになりたい。
二酸化炭素は凍らせればドライアイスだし、窒素は液体化すれば強力な攻撃手段に成り得る。
どちらも、水よりも『氷魔法』が作用するイメージが湧かず、上手くいっていない。
私の一芸特化の道のりは厳しそうだ。
今後の構想も練りながら、目の前に氷の山を作っていく。
少し歪んでいるけど、分かりやすく円錐状だ。
最初は小さく、それでいて徐々に周囲に氷を張り付けて、ゆっくりと大きくしていく。
む、空気が乾燥してきたな……。
空気中の水分を氷に変えている訳だから、そうなるか。
周囲の湿度0%にまでした場合、今度はどこから捻り出すことになるのかな?
漫画や小説の定番だと、血だよね。
追い詰められた氷使い、そこで逆転の一手! 手には赤い氷で出来た剣が!
ば、馬鹿な、自分の血を、氷に……ぐふっ!
みたいな。
今の私のサイズだと、捻り出せて精々縫い針サイズ、逆転には繋がらないかな……。
いや、わざわざ自分から出さなくても良いじゃん。
動物、木や草、土にだって水分は含まれてる。
それ引っ張り出せたり、凍らせたりは出来ないのかしらん?
『命ある対象は、それだけで魔法抵抗力を持ちますので、必要以上の魔力を必要とするでしょう』
出来ることは出来るのね。
でも、効率はスゴく悪い、と。
MPが有り余っている状態で、魔力を練る時間も有るけど、水が無くて追い詰められています、という状況だったら使えるのかね?
環境が砂漠とか? ちょっと状況が特殊過ぎるかな。
少なくとも、私は好んで砂漠に行ったりはしないだろうから。
氷の山を着々と育てつつ、私は『氷魔法』について考えを進めるのだった。
「――――」
「――――――」
その時、遠くから何かの声がした。
鳴き声じゃない、話し声だ。
人!?
ここに人が来たの!?
何言ってるかは分からないけど、確実に人の話し声だ!
ふぉおおおおお!
ちょっとテンション上がる!
やっぱ人、居るよね! そりゃ居るよね!
どんな人だろ? やっぱ冒険者?
魔物退治とかの依頼を受けて?
うわぁ、どうしよう。
挨拶は基本って言うけど、どうするべきだろう!?
いや、まて、期待しすぎだ、もしかしたら人間じゃないかもしれないじゃないか。
オークとかコボルトとか、進化したゴブリンみたいな、話せる系モンスターだったらどうするんだ?
……めっちゃガッカリする。
『落ち着いて下さい。混乱されているようですが、その……今の瑠璃様の御姿では、人間との接触は困難かと』
あ。
そうか……、こっちに来て初めて誰かの会話を聞いたから少し浮かれたけど、人間とウジムシで交流できる訳が無いな。
何らかの手段で意思疏通が出来たとしても、珍しい魔物ってだけでお仕舞いだ。
もしも私が人間の冒険者で、向かった先にウジムシが一匹いて、ハローと話しかけて来たら?
踏み潰す。
踏み潰して靴の底で磨り潰し、無かったことにするな。
うん、よし、冷静になった。
今の段階で人間と接触することはあり得ない。
声はこっちに向かってくるようだから、隠れて遣り過ごそう。
そう決めた私は、ゴブリンの死体の中に潜り込む。
もうね、死肉を掻き分けるなんて朝飯前ですわ。というかコイツが朝飯ですわ。
ずじゅずじゅ、と肉を食みながら潜ったところで、ふと気付いた。
あ、氷の山、どうしよう……?




