うじむし23
私は今、ゴブリンの死体の上で、敵と対峙していた。
たらり、と流れるはずの無い汗の感触を感じる。
私と敵の間で、緊張が走った。
そうだ、今まで私がいた環境、灰色肉の周りがおかしかったのだ。
彼らの姿を一切見ることがなかった。
魔物も生き物、生き物が要るなら、彼らと共生関係にある生物もいるのが当たり前。
勝手にくっついてるだけなんだろうけど。
そう、寄生虫。
ゴブリンにくっついてた寄生虫達が、今、私の前にうぞうぞと集まっていた。
うわ、いるわいるわ。
ゴブリン不潔だな、最低。
ダニ、シラミ、ノミが私の前に……。ひぃ、気持ち悪い。
まぁ、兄弟姉妹で流石に慣れたけどさ。
奴等は集まったきり、ジッとこっちを見ていた。
徐々にだが、確実に、敵意が高まっていく。
彼らからすれば、私は大事な移動手段兼マイホーム兼食事を台無しにしてしまったことになる。
移動手段と家と食料って、それほぼ人生そのものじゃん。
私がゴブリンを殺っちゃったことで、この虫たちは、命以外の全てを失ってしまったのか……。
シラミやダニが、針のような口を擦らせてキュイキュイと何かを叫んでいた。
恐らく、家や食べ物を返せとか、そういうことだろう。
あぁ、その姿を見て、私は、私は……。
実に不快だった。
ゴブリン一匹倒しただけでいちいちガタガタ言われて堪るか。
他の転生系物語見てみろ、何百匹何千匹のゴブリンが死んでると思ってんだ?
まぁ、ここでは関係ないけどさ、君たちには全く関係ないけどさ。
私だって生きるために食わなきゃいけないんだよ。
寄生してるんだったら、宿主守れば良かっただろ?
いつまでも 有ると思うな 主と餌
瑠璃、心の俳句
『ですからそれはせんりゅ――――』
我慢の限界だったのか、一際大きなノミが、ギシィイイっと叫んだ。
彼奴め、やる気か。
ビシィ! と弾けるような音と共にノミは砲弾のごとき勢いで私に突っ込んでくる。
速い! 私の素早さを遥かに凌駕している!
だが、如何せんただの虫。
攻撃に作戦も何もない。
『氷魔法』で突っ込んでくる虫を空気ごと氷付けにしちゃえば、はい、お仕舞い。
動きの速さも強さも関係なく、ことん、とノミはあっという間に凍ってしまった。何が起こったのかも分からないって顔をしてるな。
虫の表情とか分からないけど。
私が怖かったのは、魔法を練る前に全体で突っ込んでこられることだったんだよね。
凍ったノミの後ろで怯んでいる連中も、纏めて霜だらけにしてやろう。
フッ、許してくれとは言わないぜ……。ちゃんと君たちも食べるから、成仏しろよ。
ゴブリンの肉も凍らせとこう。
凍らせれば腐らないし、たしか、生肉や焼いた肉は食べ続けると体調を崩すけど、凍った肉なら平気だって聞いたことがある。
ゴブリンと、その寄生虫。
最初の狩りにしては大漁なんじゃないの?
よし、食料事情が解決したし、運動もしたから、後は……。
食いきるまで魔術大全を読む。
つまり、食っちゃ寝だな!




