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bestfriend

作者: 桜本 結芽

『ありがとう』


私は今、手紙を書いている。

いつも、私の側にいて、私を見守ってくれて、私が間違っている時、叱ってくれる人。


『君がいてくれて、本当に良かったよ』


私は明後日、遠くに引っ越してしまうから、明日、この手紙を渡す。


『例え、離れてても、何年経っても、ずっと、ずっと、友達だよ、私は、修也がいてくれたから、楽しく過ごせたんだよ』



ー数日前ー


私の部屋に電話の呼び出し音が響く。


《もしもし》


〈もしもし、修也?私、美羽。こんな遅くに電話して、ごめんね〉


《いいよ、どうしたの?》


私は、修也の声を聞くと、途端に涙が溢れてきた。

修也は、私が落ち着くまで待ってくれて、少し落ち着いた私は、


〈実はね、パパとママが、離婚するの〉


《うん》


〈私、どっちに引き取られるか、分からないの〉


《うん》


〈私、パパもママも大好きなのに、でも……〉


ずっと黙って、聞いてくれている修也、


〈二人共、最近、喧嘩ばっかりだったの〉


《うん》


また、涙が溢れてきて、声を震わせながら、


〈私が、悪いのかな?私が、パパとママの、喧嘩の理由かな?〉


しばらく、黙っていた修也が、


《違うと思うよ、美羽は、悪くない》


その言葉を聞くと、なぜか、安心して、涙を流しながら、


〈……ありがとう、修也〉


《いいよ、もう大丈夫?》


〈うん!〉


《良かった》


そう言って、修也は、私が電話を切るまで、待っていてくれた。



ー私が、修也と友達になったきっかけは、高校の入学式の時っだったー


ガチガチに緊張していた私に、初めて声をかけてくれたのが、修也だった。


入学式の日、緊張の面持ちで、教室に入ると、すぐに声をかけてくれた人がいた。


「ねぇ、君も、このクラス?」


「えっ、う、うん!そう!」


驚いた私は、突然聞こえた声の方へ顔を向けると、黒い髪を少し伸ばした、どこに行っても人気者になれそうな、風貌の彼を見て

私は一瞬、ドキッとした。

彼も緊張しているのか、少し顔が固まっていた。


「良かったー!同じクラスに可愛い子がいて!」


彼はそう言いながら、にこやかに笑った。

その後話をしている内、気が合い、メルアドを交換した。


「良かった!友達が出来て!」


そう、安堵したように呟く彼に私は、


「心配だったの?」


と、言ってから、はっと口を手で隠す私、つい、口に出してしまっていた。

顔を赤らめる私をよそに、彼が吹き出すように笑い出した。

何が面白かったのか、わからない私は、混乱していると、


「素直だね!」


そう、笑いながら言ってくれた。

その日から、私達は仲良くなり、名前で呼ぶようになった。


その時、私には彼氏がいたが、その彼氏とも、修也は仲良くなった。


ある日、私は彼氏と喧嘩をして、部屋でとても落ち込んでいた。

でもその時、携帯が鳴り出した。

それは、修也からのメールで、


【こんばんは、美羽が建都と、喧嘩をした事を聞いて、心配でメールしてみた。 大丈夫?あまり、落ち込まないで前向きに、考えよう。俺はずっと、美羽の味方だよ】


と、書いてあった。

私はその言葉を見ると、安心して、少し心が楽になった。


次の日、私は建都に謝った。

建都も、謝ってくれた。

その後も、私と建都と修也は一緒に遊んだりしていた。


でも、そんな幸せな日々は続かなかった。


ある日、建都が私を呼び出して突然、


「別れよう」


そう言って来た。


「どうして?」


と、尋ねると、


「別に好きな子が、出来たんだ」


そう言って、私の泣きそうな顔を見て、


「ごめん」


と、言うと、振り返り、去ってしまった。


その場で泣き崩れる私、ふと、修也の事を思い出し、無性に修也の事が聞きたくなった。


すぐに電話をかけると、出てくれた。


《もしもし》


〈もしもし、私、美羽だよ〉


《うん、どうしたの?》


黙り込む私、辛抱強く待ってくれる修也、その優しさに、心のダムが崩れるように、


〈け、建都が……別れようって……〉


途切れがちに話す私に修也は優しく、


《大丈夫?》


と言って、私を落ち着かせようと、してくれている修也の優しさに、また、心が楽になる気がした。


〈……ありがと〉


《いいよ、もう、落ち着いた?》


〈うん、ほんとに、ありがとう〉


私はそう言って、電話を切った。



私は、その日から、修也に、恋心を抱くようになった。

ずっと、私を見守ってくれる、修也を、私は好きになった。

修也は気づいてはいないけど、ずっと側にいる事が、楽しくて、毎日、一緒に遊んでいた。



そんな日が続き、とうとう、私と修也の別れの時が来た。



今日、私は、手紙を渡すために、修也の家に行き、チャイムを鳴らした。


〈はい〉


修也が出てくれた。


「修也?私、美羽だよ」


しばらく間があって、次に驚いた声で、


〈えっ!ちょっ、ちょっと待ってて!〉


またしばらく待つと、玄関から修也が出てきた。


「日曜なのに、ごめんね、これ、渡したくて」


私は手紙と、菓子折りを渡して、修也は困惑気味に、手紙と菓子折りを受け取ってくれた。


「じゃあ、またね」


「うん……」


そう言って、私は一度も振り返らず、自分の家に帰った。



次の日、私が引っ越す日。

私は、学校の友達には、言わずに行くつもりだ。

荷物をトラックの荷台に積み込み終わり、私もママの車に乗ろうとした時、


「美羽!!」


大声で呼ばれ、振り向くと、修也がそこに立っていた。

息を切らせて私の近くに来ると、


「気をつけて、後、また、会おうね、待ってるから」


そう言われ、私は嬉しさのあまり、泣いてしまい、修也が私の頭をなでながら、


「泣くなよ、また、会えるんだから」 


「うん!!」


私は、笑顔で頷き、


「ありがとう!」


そう言って、車に乗り込み、窓から外を覗くと、修也がずっと、手を振ってくれている。

そんな姿を見ると、安心して、次の生活を送れる、そんな気がした。



あの日から、五年が経った。


私は、証券会社に勤めていた。

その日、私は仕事が休みだったので、少し遠い公園に、出かけた。


すると、誰がが、私にぶつかり、私はとっさに、謝ると、相手も謝ってくれた。

その人を見ていると、なぜか懐かしい感じがして、よく見ると、その相手は、修也だった。

私は驚いて、


「修也……?」


恐る恐る尋ねると、修也は眼鏡を直しながらこちらを伺うと、


「美羽?」


そう言った後、弾けるような笑顔で、


「美羽!!」


叫ぶなり、私の手を取って、


「良かった!また、会えて!本当に良かった!!」


そう言っていた。



その奇跡の再開から二年、私達は結婚した。

子供も六人と、たくさん授かり、今では大家族で、幸せだ。



始めは、友達だったけど、今は、私の大事な旦那様、私は本当に、本当に幸せだ。



私の大事な、大切な、ベストフレンド、私の恋人、

私の、大切な……

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