第三十一話 古代の遺跡
「……なんだかちょっと、薄気味悪いわねぇ」
洞窟の壁面や天井をぐるりと見回して、ミーナが身震いする。
アキは、ミーナに同意するように頷きながら、ぴちょん、ぴちょん、と水滴の滴り落ちる足もとや、薄暗くて目視できない道の先に目を凝らした。
洞窟内はあかりひとつなく、まるで鍾乳洞のように壁面の石壁や足もとの砂利が湿っていて、気を抜けば足がすべって転んでしまいそうだった。
先頭を歩くエリアスの持つカンテラが、濡れた石壁に光を反射させて、ゆらゆらと揺れるまだらの光模様を壁に映しだしている。灯篭のあかりのようなそれは、なんだか幽鬼が揺らめいているようだった。
ミーナの呟きが洞窟内に反響して、それを聞いたエリアスが足を止めて振り返る。
「……たしかに、異様に水属性の気配の強い洞窟だね。ここまで属性が偏っているのも珍しい」
「……水属性?」
初めて聞く言葉にアキが首をかしげると、一番後方を歩いていたルイスが答える。
「ああ、属性とは、この場にある物質を構成している元素のことだ。この世界では、万物はすべて元素によってできていると考えられているからな」
「万物、と、元素……?」
いまいち想像できなくて頭を抱えていると、ミーナがこちらを振り返ってほほ笑んだ。
「アキ、元素って、創世の女神様がこの世界の万物をお造りになったときに、世界のエネルギー源として生み出した星の生命力そのものだっていわれてるのよ。というのも、この世界は元素の持つエネルギーを循環させることで成り立ってるらしいのよね。で、その元素はそれぞれ属性というものを持っているのよ」
「その属性が、火属性、水属性、風属性、土属性……といろいろあるわけだな」
補足するルイスに、アキは頷いてみせる。
「元素の持つエネルギーの循環……」
アキの頭の中に、王国でヨハンから説明を受けたときの話が思いだされる。
『この世界は、創造エネルギーを充填させることで成り立っているんです』
つまり、その元素のエネルギーというものが、ヨハンのいう創造エネルギーのことなのだろう。
そして、その創造エネルギーは世界を運営するために消費されていて、少しずつ減退していくため、定期的に充填する必要があるのだと言っていた。
(そのエネルギーを充填する役目を担っているのが、女神様によって生み出された勇者と魔王なんだよね……)
アキは、自然とエリアスへと視線を向ける。
つまり、エリアスは星のエネルギー体そのもの、つまり元素によって造りだされているということなのだろうか。
アキの視線に気づいたらしいエリアスが、こちらを見てふるふると首をふった。まるで、これ以上そのことを考えてはいけない、ととがめるようなしぐさだった。
たぶん、勇者と魔王が創造エネルギーのために生み出された人工生命、という事実を知っているのは自分たちだけのため、ミーナたちの前では口に出さないように、といいたいのだろう。
そんなアキとエリアスの水面下のやり取りには気づいていない様子のルイスが、淡い金の前髪をつかみながらぼやく。
「……それにしてもここは湿気がすごいな。こう水の元素ばかりが寄り集まってしまうと、水属性の魔法は使いやすいが、火属性の魔法を発動させるのは一苦労だろうな」
「ああ、吟遊詩人は魔法使いと同じ月系魔法を使うんだったよね」
ぽんと手を叩くエリアスに、ルイスがうなずく。
「そうだ。魔法使いとは会得する魔法が違うがな。魔法使いは攻撃魔法が多いのに対して、吟遊詩人は魔物のステータスを下げるような補助魔法が多いんだ」
ルイスとエリアスが魔法談義を始めて、アキはそれに耳をそばだてていた。
この場に水属性が多いと、火属性の魔法が使いにくい……?
もしかして、属性には相性があるのだろうか。
「ねえルイス、水属性が強いと、火属性の魔法って使いにくいんですか?」
興味本位で聞くと、隣に並んだルイスが当然といったふうにうなずく。
「ああ。月系魔法はこの場にある元素のエネルギーを借りて発動するものなんだが、元素の持つ属性同士は相反しているんだ。たとえば、火属性の相反属性は水属性、といった具合だな。相反属性の強い場では、反対の属性の力は極端に弱くなるのだ」
ルイスは洞窟内に視線を向ける。
「それで、この洞窟の場合は水属性が異様に強いから、水属性の魔法は通常に比べて威力が高く、詠唱も楽になるが、逆に相反する火属性の魔法を使おうとすると骨が折れるというわけだな」
「ふうん。魔法もその場の元素に適したものを使ったほうがいい、ってことですね」
言うと、ルイスが、そのとおりだ、と笑んだ。
そのあたりは、レオが詳しそうというか、好きそうな話だなあと思う。
もしかしたら、レオのように高レベルの実力までいくと、たとえ相反属性の魔法でも数少ない元素をかき集めて強引に発動できるのかもしれないけれど。
そうやって無理に魔法を使ったあとに、疲れたと言っては大量にお菓子を食べているレオの姿が思い浮かんで、アキは小さく笑った。
そうして雑談をしながら四人で洞窟の奥地へ進むと、今まで狭い坑道のようだった細道が終わり、突然天井が抜けるように高いぽっかりと開けた場所に出た。
岩壁に囲われただだっ広い空間が、アキたちの眼前に広がる。
――うわあ、すごい……!
洞窟の奥にこんな広い場所があるなんて思わなかった。
天井の岩が少し崩れているためか、洞窟内には野外の太陽の光が一本の直線のように射しこんでいる。
それが暗い空洞内をほんのりと照らしていて、くすんだ光がなんだか神秘的だった。
正面奥の岩壁に沿って、石造りの巨大な遺跡が物静かにそびえ立っていた。植物を思わせる細かい彫刻の施された何本もの円柱に支えられた建物で、それは、遺跡というよりは古代神殿を思わせる様相をしていた。
ミーナがその神殿の真下まで駆け寄って、額に手をかざしてそれを見上げる。
「あら、立派な神殿ね! いよいよゴール到着って感じかしら!」
遺跡の外観は、洞窟の岩肌を削って造られた基壇に、総大理石の円柱が外陣を取り囲んでいた。半壊している柱はところどころ欠けていて、その破片が基壇に倒れ伏している。
――なんか、だいぶ昔に建てられた神殿っぽいけど……。
アキもまたミーナの隣に並んで神殿を眺めていると、ルイスが後ろから歩み寄る。
「この遺跡、どうやら今は使われていないテオフィルス式の古代建築のようだな」
「テオフィルス式?」
テオフィルスって、どこかで聞いたような……。
そういえば、王国の第一王子アーノルドの本名は、アーノルド・クラウディウス・テオフィルスではなかっただろうか。
だとしたら、テオフィルス様式という名前は、王国の王族の名前から取られているのかもしれない。
そんなことを思いだしていると、柱を手の甲で叩いていたルイスがこちらに顔を向ける。
「アキ、テオフィルス式とは、王国に古くから伝わる建築形式のことだ。優美で軽快、円柱上部にある浮彫の彫刻も手が込んでいるだろう? 非常に美しいが、時間と労力がかかるので今はあまり使われていないんだ」
「へえ、ルイスって博識ですね!」
建築様式をすらすらと解説するルイスに、アキは感嘆してはーっと息をはく。
ルイスは貴族出身だから、いろいろな知識に精通しているのだろうか。
専門知識に長けているという点では、同じように得意分野の知識に長けていそうなレオやヨハンと気が合いそうだった。
素直に褒めると、ルイスがおどけたように前髪をかきあげた。
「ありがとう。芸術においては、人より詳しいと自負しているよ」
答えたルイスの後方、ミーナが遺跡の壁をじーっと見つめて言う。
「ねぇ、なんだか外壁にびっしり文字が彫り込まれてるんだけど、これなにかしら?」
「え、どれですか?」
アキも彼女の隣に並んで壁に顔を寄せ、そこに刻み込まれている文字に目を凝らした。
(あ、本当だ、字がびっしり……!)
遺跡の壁面全体に、小さい文字が所狭しと彫り込まれていた。注意して見なければ、壁に描かれた普通の模様のように思えるだろう。
ルイスが親指の腹を文字に滑らせる。
「――ふむ。これはなにかの物語なのではないか? 神話だろうか。今まで読んだことのなさそうな物語だが……。しかも、古代文字で書かれているから、きちんと翻訳しなければ全容はわからないな」
「ルイス、あんた古代文字も読めるの?」
ミーナが目を丸くする。ルイスは軽く口角を持ち上げた。
「簡単なものはな。さすがにすいすいとは読めないがね」
「それでもすごいわよ。古代文字って、この世界の創世記時代に使われていた文字なんでしょう? 読めるのなんて学者くらいだって聞いたことがあるわ」
「それはどうも。君にほめられると素直にうれしいんだが」
「またすぐそういうこと言う!」
ルイスとミーナのいつものやりとりに、アキは小さく笑う。
本当にこの二人は、さっき初めて会ったとは思えないほど仲が良い。
これも、二人の人好きのする性格の賜物なんだろうなあとアキは思う。
「ミーナ、ちょっといい? 入口の扉が開かないみたいなんだけれど、盗賊のスキルで解錠できる?」
少し離れたところで遺跡の入口を調べていたエリアスが、困ったような顔で手招きする。
あらら、もしかして扉に鍵がかかっているんだろうか。
ミーナと一緒にエリアスのところに駆け寄ると、外観と同じ石造りをした両開きの扉は固く閉ざされているようで、エリアスが押しても引いても開きそうになかった。
ミーナが腰に片手を当てる。
「ふうん、さっそく難所ってところかしら。遺跡に入れないんじゃここまで来た意味がないわよねぇ。ちょっといろいろ試してみるわ」
言って、ミーナは扉に近づくと、その上部や下部、左右の縁や足下の基壇を調べたり、ときには小さく魔法を唱えて解錠を試みたりしている。けれど、扉に目立った反応は見られない。
ポーチに入っている盗賊用の小道具を取り出し、手早くいろいろな方法を試したミーナは、お手上げといった様子でこちらに戻って来て肩をすくめた。
「駄目だわ。一切解錠につながる物がない。取っ手のない扉って感じね」
「それじゃあ、誰も中に入れないようにしたってことなのかな?」
もとよりそう設計されていたのだとしたら、それを開く方法などあるのだろうか。
アキが何気なく扉に手を伸ばすと、その指先が触れた瞬間、扉や壁面に刻み込まれていた文字がさざ波のように黒々と輝きだした。
え――……?
遺跡全体がまがまがしいほどに漆黒に染め上がる。
(――え、な、なにっ!?)
「何事だっ!」
突如息を吹き返したように光を発する遺跡に、ルイスが息を呑み、ミーナも凍ったようにその場に立ち尽くす。
天井から漏れる太陽光でほんのりと明るかった洞窟内も、遺跡全体が放つ輝きによって夜の闇が広がったように真っ暗になる。
「みんな、大丈夫――……」
エリアスがアキたちに向けて手を伸ばした瞬間、アキの額に、まるで刃で貫かれたような激痛が走った。
「い、痛っ……!?」
アキは思わず額を押さえてうずくまる。額が焼けるように熱い。
あまりの痛みにかきむしるように指先で額に触れれば、そこになにかが彫られたような凹凸を感じた。
(おでこに、なにか模様が浮かび上がってる―――っ!?)
「アキ!? 大丈夫っ!? 一体なにが――……」
すぐさまエリアスが駆け寄って、両膝を地面についてうつ伏せになっているアキを抱き起こす。
心配げにこちらを見下ろしているエリアスの緑の瞳を見返し、アキは必死に自分の額を手で示した。
「エリアス、なんだか、額が熱っ……」
「額!?」
エリアスは、アキの手をそっと避けてその額を見つめる。そうして視界に入った光景に、エリアスは息を呑んだ。
アキの額には、満月に似た円形を三日月が抱え込んだような、不可思議な紋章が浮かび上がっていたのだ。
「なんだ、これ――……」
痛みに耐えるアキには、エリアスの驚愕したような呟きが、まるで遠いところで呟かれたように小さく聴こえていた。
あまりの額の痛みに、いまにも意識が遠のきそうだ。
薄れていく意識をなんとかつなぎとめようと、アキは必死にエリアスの服をつかむ。
「アキっ、アキっ! しっかり!」
エリアスが体を揺すってくれている感覚だけが、なんとなくアキの体に伝わる。
けれど、まるで激痛から逃れようとするように意識が揺らぎ、エリアスの声と揺すられる感覚が失われていく。
(エリアス、ミーナ、ルイス、ごめんなさいっ……)
謝罪の言葉だけを残し、アキはとうとう耐え切れずに意識を失ってしまった。
エリアスは、闇のような光を発し続ける遺跡を背中に、腕の中のアキを揺すり続けていた。
「アキ、アキ! しっかりするんだ!」
何度も呼びかけるけれども、固く目を閉じた彼女は、力なく体を揺らすばかりで反応がない。
彼女の額には、やはり不可思議な紋様が浮かび上がったままで、まるでそれに呼応するように遺跡全体が同色の黒い光を放っている。
(なんなんだ、この紋章は――……!)
今まで自分が見てきたどの文献にも記載されていなかった。
なんらかの魔法だろうか。それとも呪いの類なのだろうか。
どちらにしても、彼女の意識を取り戻すには、この紋様をなんとか鎮めるしかなさそうだ。
ミーナとルイスもそれぞれに遺跡の壁面や入口に駆け寄り、ミーナは扉口を調べたり、ルイスは効果のありそうな月系魔法を連発で発動したりと必至に行動してくれている。
けれども、いっこうにアキの紋様、そして遺跡の黒々とした発光が収まる気配はない。
こうしている間にも、アキの額から汗が落ち、唇は蒼白になっていく。
――どうすればいい、どうすれば……!
エリアスはアキを抱き寄せる。
(俺が、彼女を守らないと……!)
――彼女が、自暴自棄になっていた俺を助けてくれたように、今度は俺が彼女のことを助けるんだ。
エリアスは、ぐったりとしなだれかかるアキを抱えて立ち上がる。
アキからなんらかの影響を受けて遺跡が発動したのであれば、それを止めるしか彼女を助ける方法はない。そして、止めるための手立てが思い浮かばないのなら、実力行使、扉ごと叩き割るしかないだろう。
エリアスは片手ですらりと腰の聖剣を引き抜く。それを眼前に構え、目を閉じた。
「頼む、彼女のために力を貸してくれ……!」
――勇者として、大切な人を守れる力を、俺に……!
念じて、エリアスは剣を大きく振り被った。その刀身を扉に向かって叩きつける。
衝撃と共に扉の壁面に刃が食い込んだ瞬間、今度は黒く染まっていた文字を上書きするように、光が遺跡全体の文字を駆け抜けていった。
途端、エリアスもアキと同じく額に熱を感じ、聖剣を床に突き刺して片膝をつく。
「痛っ……」
「エリアス! アキ!」
エリアスの異変に気づき、ミーナがいち早くエリアスとアキのもとへ駆けつけ、二人の体を支えるように腰を屈める。
ミーナの悲鳴を聞いて外壁の側面から走ってきたルイスは、苦しそうに呻いているエリアスの前髪をどけた。
「――これは、太陽、か……?」
エリアスの額には、アキと対比されるように、燃えるように広がる太陽の紋章が浮かんでいる。
「なんなんだ、この紋章は……!」
ルイスもまた己の記憶を思い起こすが、今まで読んだ文献には一切記載されていないものだ。
――月に似た紋章と、太陽に似た紋章。勇者とその片腕に宿るなんらかの力なのだろうか。
ルイスが思案しているうちに、遺跡の黒色を上塗りした黄金の光は、やがて二色で溶け合うようにしてその輝きを消失した。それと同時に、閉ざされていた扉が地響きに似た轟音を立てて開かれる。
「嘘、開いたわ……!」
信じられない、とミーナが目をみはり、口をぽかんと開ける。
ルイスは、アキを必死に抱きしめたまま膝をついているエリアスの肩に、そっと触れた。
「……エリアス、平気か? 意識はあるか?」
軽く揺すると、アキを腕に収めたまま硬直していたエリアスが、ぶるりと軽く首を振る。
ルイスの顔を見て焦点を合わせると、弱々しく笑ってみせた。
「あ、ああ、なんとか……。額の痛みも、治まったみたいだ」
ルイスは、答えたエリアスの額を注視する。
彼の額からは、さきほど現れていた太陽を模した紋章は失せていた。エリアスの腕の中でぐったりとしているアキの額も同様だ。
エリアスは、腕の中のアキを小さく揺する。
「アキ、大丈夫? 俺がわかる?」
「うっ……」
エリアスが再度アキの体を揺すると、彼女は薄く眼を開いて、焦点の合ってない目でエリアスを捉えた。そして、エリアスだとわかるなり、じわりと目元を潤ませる。
「だ、だい、大丈夫です……! エリアス、ごめんなさい、ルイス、ミーナも」
アキが身をよじろうとすると、エリアスが腕を伸ばして確かめるようにアキの体を包み込む。
「よかった、君が無事で……。君が苦しんでいたときはどうしようかと思ったよ」
お互いの無事を喜び合っているエリアスとアキを見守りながら、ルイスは顎に手を当てる。
(……ミーナをとおしてエリアスとアキをこの遺跡に導いた謎の魔族、それから二人に浮かび上がった太陽と月の紋章、そしてそれに呼応するように扉を開いた遺跡か……)
そのすべての要素がバラバラのように見えて、その実、なんらかの理由で繋がっているのではないだろうか。
けれど、今の自分たちの少ない情報では、その謎を解き明かせそうにない。
(謎は深まるばかりだが、歴代の勇者と魔法の物語の中で、魔王が勇者に接触を試みた事実や、太陽と月の紋章の話題など出たことがないのは事実だ……)
それを踏まえると、今代の勇者エリアスの物語は、後世に歴史を残すような英雄譚になるのではないだろうか。
(これは、エリアスのパーティに選ばれた吟遊詩人として、彼の生み出していく物語を責任をもって紡がなければならないな)
ルイスが誓うように胸に手を当てる中、エリアスが立ち上がり、自分に寄り添うように立ったアキの顔を覗き込む。
「アキ、体は大丈夫? もしつらかったらすぐに引き返すけれど」
「あ、ううん、私は大丈夫です。さっきの痛みなんて嘘だったんじゃって思うくらい、もうなんともなくて」
「……そう? それならこのまま先に進むけれど、無理はしないでね。つらかったらすぐに俺に言うこと」
人差し指を立てるエリアスに、アキはその指を見ながらおかしそうににこりと笑った。
「了解です! エリアスって、たまにお兄ちゃん属性出ますよね」
「なにそれ?」
首をかしげるエリアスに、アキの言葉の意味がわかったらしいミーナがふきだしている。
軽口を叩きあえるくらい元気ならば、エリアスもアキも大丈夫だろう――ルイスも目を細めて二人の様子を見守る。
ただ、またいつあの不可思議な紋章が現れて二人が痛みに襲われるかわからないから、彼らの状態には気を配っておかねばならない。
彼らのあの紋章がこの遺跡と関係しているのだとすれば、中に入れば頻度が増す可能性もある。
エリアスは白いマントをひるがえすと、開かれた遺跡の扉口を振り仰いだ。
「――それじゃあみんな、次はいよいよ遺跡探索だ。内部は魔物が出るかもしれないから、気を引き締めていこう」




