36
雨が、降ってきた。
久しぶりの雨だ。少しくらい濡れてもむしろ嬉しいくらい。
嘘だ。
服の隅々まで水が入り込んできて気持ち悪い…………。
けれど幸いと言うべきなのか、アマネさんと共に引き受けた猿たちではあるが、見事に撒くことには成功したこの頃である。
四方八方から襲い来る連中をほとんど返り討ちできたことによって、力の差を悟ったのか、撒いたというより退いてくれたとも言うべきかもしれない成果には、もう限界に達していたところだから何にせよありがたかった。
今度会ったら仲良くしましょうね。
是非是非。
ちなみにアマネさんは、背中にとんでもない重さ岩でも背負っているのかというくらいドンヨリしていた
何が彼女をそこまでたらしめているのか。
知らないふりで誤魔化そうとしても無駄だった。
「ごめんなさい…………」
しきりにそう連呼するばかりだ。
可哀想に。
よほど悪いことをしちゃったんだろう。
大丈夫。元気出して。
心当たりがないわけじゃないけど。
だからこそ困っているんだが…………。
「ごめんなさい…………」
「もういいって。怪我人も出なかったし、最終的にあんたの大手柄だろ」
そう。
あの時アマネさんが動いていなければ、俺はおろか軍人であるカラスでさえあの人を見捨て、見て見ぬフリをしたまま忘れようとしたに違いない。
それが、身体に染み付いた俺たちにとっては最善の選択だったんだ。
アマネさんにとってはそうはいかない。
最悪だったけど、でもかなりの危険を犯した割に、なんとか俺たちは全く犠牲を払わずにこうして捜し物をすることができる。
結果オーライと言えるはずだった。
そんな風に言ってあげたい。
彼女の功績はそれだけ讃えるべきものだと甲斐性のない俺でさえ思っているのだから、もう気にせずに背中を伸ばしてほしいものだが。
「でもカラスさんたちと逸れてしまったでしょ…………私たち、この山の土地勘なんてないから…………さっきのは運が良かっただけなのよ」
「はぁ…………」
ため息も出さざるを得ない。
さっきからそんな風にネガティブなことしか返してこないんだから、こっちの気持ちが滅入って仕方ないんだ。
どうすればこの頑固者に胸を張って誇らせてやることができるだろうか?
ぶっちゃけさ。
アマネさんはむしろ胸がないからこそ張るべきなんだと思うよね。
そうやって猫背になって寒そうな姿をしていても、大事な魅力が台無しになってしまうじゃあないか。
俺がそんなセクハラ言える人間ならこんな重い空気にならなかったんじゃあないだろうか。
重ねてぶっちゃけ、アマネさんは脚が綺麗だからまだ魅力がなくなったわけはないけどね。
「で、落としたのはこの辺か?」
「え…………ええ。急いでたからあまりよく覚えてないけど、この辺りのはずよ」
ふむ。
まぁ仕方ないといえば仕方ない。
あの数の猿を相手に余裕のある方がおかしい。
競り勝ちはしたが、確かに運が良かったんだと思う外ないのだろう。
それにしても気分が悪いぞ。
「…………おい、あったぞ」
雨に濡れてグッショリした自然の中で、俺は不自然に煌めく物を見つけた。
そしてそれを拾い上げ、別の位置を捜していたアマネさんに声をかけて投げ渡した。
うわっ、と慌ててアマネさんが受け取る。
やっぱり女の子にとっちゃ、重い武器なんじゃないのか?
「ありがとう…………」
アマネさんはお礼を言うと、取り戻した籠手を腰に下げた番に添い寄せた。
つまらない由来で彼女の形見となった格闘武器だが、触るとその剛性が優れていることに気が付く。
はめてみないとわからないけど、使用者にほとんど衝撃を伝えない防具のような仕組みになっているんだと思う。
変態師匠の武器も、ある意味じゃ変態だったということかな。
アマネさんはその辺、かなり得をしている。
運がいいのは、最早彼女の長所のはずだから。
もっと自分に自信を持ってくれてもいいはずなのだが。
「…………さて、私のせいでかなり面倒をかけてしまったわね。さぁ、カラスさんと合流しましょうか。それから…………本当にありがとうございます」
「いいって」
そこまでされるとむず痒い。
最敬礼で声色も落とされるとさらにあざとい。
律儀を地でいく人だ。
ていうか、だ。
「別に…………あれだ。俺が仕事紹介しておいて、なんかあったら絶対俺のせいになるから。そういうことだ。行こう」
別に、アマネさんのことが好きだから助けに行ったんじゃないんだからね。
でもあんたが嫌いとかそういうこと言ってるんじゃないんだからね。
シエルを助けてくれると言ってくれた、恩人を助けてあげただけなんだから。
勘違いしないでよねっ。
元気になってくれただけ良しなんだからねっ!
なんだこのツンデレはっ!アマネさんの属性だと思ってたけどそうでもないっ!?
「はぁ…………にしても、ここどこだ?」
自分の心境にため息出るとか相当。
「わからないわ…………どうにかして、現在地がわかればいいんだけど」
方位磁針があったところで、脳内マッピングできるスキルがあるわけでもない。
グーグル先生もこの世界にはいないし。
狼煙を上げて助けを求めようにも、この雨だ。
強いて言えば、日が落ちるまでまだまだ時間があるということぐらいはわかる。
暗闇に覆われてしまう時間はまだ先だということだ。
「とにかく道に出ましょう。他のルートの軍の人が気づいてくれるかもしれない」
「だな」
千里眼の人にも期待。
ここだよー。
***
しかし誰にも出会わなかった。
誰一人としてすれ違わなかった。
すれ違ったところで、カラスみたいに近づいてくる真面目さんはいないということなのか。
人影がないからそれもない可能性なのかな。
どちらにせよマズイ。
このままジッとするのは非常にマズイ。
別に体力に限界がないわけじゃないのだけれど。
俺は人より頑丈である程度その辺りに自信はあるが、アマネさんをそんな酷な状況に置かせるのもマズイ。
正真正銘の女の子だ。身体を冷やしてはいけないと聞く。
結局、まず先に雨宿りできる場所を探すことにした。
手頃な洞窟でもあるなら、そこで服を乾かしたいところだ。
あとは火があれば万歳だけど、そこまで贅沢は言うまい。
しばらくすると目的の洞穴らしき場所を見つけることができた。
5人くらいなら余裕で入れる空間だ。
ありがたい。
…………やっぱり温まるものがほしいけど、それに役立ちそうな物は残念ながら見当たらなかった。
「火種もないし、仕方ないわ」
…………。
どうしましょう。
「…………」
「…………」
なんで黙るの、アマネさん?
「あの…………ハトさん?」
「はひ…………はい」
ななななんだろう。
なんでそんなに頬っぺた赤くして目逸らすの?
胸元おさえないでよ。危なっかしい絵面じゃないかっ。
「ふ…………」
「ふ?」
「服を乾かしたいんだけど、奥使わせてもらっていいかしら…………?」
「んも…………もちろんだ。むしろそのつもりだった。じゃあ、俺はなんか火付けれるもんでも」
「ダメよ!誰か来たらどうするのっ?」
「誰が来るって言うんだよ…………」
「そりゃあ…………クマさんとか?」
クマにさん付けしちゃうんだ。可愛い。
「ていうか、アマネさんならクマくらい楽勝な気がするんだが」
見たからね、猿の群れに突っ込んだ流星脚を。
見事な直線を。
籠手使ってた?
「は…………はだ————っ!戦えるわけないじゃない!クマに勝てるわけないでしょっ?!」
「そっか。そっかそっか確かに」
そういうことにしておこう。
「あ…………そっか、ハトさんも…………服、乾かすのよね?」
「いや、どうせ乾きにくそうだから俺はやめとく。これだけ脱ぐよ」
マント鬱陶しいっ!
ベシッ!
ギュムゥッ!ビシャァッ!
バサッ!
バサッ!バサッ!
パンッ!パンッ!
「これでよし」
簡易的だが、マントを干して洞穴の真ん中に小さなカーテンだ。その辺にあった超長い枝でレールを敷いている。
こうすれば俺の目がミスってすぐに絶景が視界に入ることはあるまい。
ミスってもマントが目立つお陰で致命傷は避けられるはずだ。
「なるほど…………じゃあ私も」
するとアマネさんもこれに倣ってマントを干してくれると、心許なかった範囲がさらに隠れて見事に空間を分け隔てることに成功した。
これでうっかりアマネさんの身体がチラリほども露わになることもあるまい。
チッ。
「じゃあ…………お言葉に甘えて」
そしてアマネさんはカーテンの奥に消えた。
んー…………ていうか元々肌率の多い服着てるのに、そんなに濡れてるの?
おっと、はしたない表現になってしまうな。
ビショヌレなのかい?
うーむ。
どうすれば健全な表現にできますでしょうか。
少しして、やけにリアルな衣擦れの音が雨に紛れて漏れ始めた。
「…………」
スッ。スーッ。
ビシャァ。
ゴソゴソ。
ビシャァ。
ゴソゴソ。
…………やだ俺ってば何無言で聴き入っちゃってんの?
暗くてカーテンが透けることはないけれど、なんかその…………俺の豊かな想像力が。
いかん。
周辺警戒、警戒っと。
異常なし。
雨止みかけてんな。
もっと降れよっ!音で紛らわさないとアマネさんに対して失礼な感情が芽生えちゃうだろっ!
俺なんでこんなテンション高いんだ…………っ。
「ハ…………ハトさんっ」
ちょっビクッ?!
「もう大丈夫…………こ…………この中あったかいわよ。風邪引くから」
…………ハッ!
息と思考止まってたっ。
つまりどういうことだ。
見ればカーテンの隙間から細い手がテマネキテマネキしているじゃないか。
どういうことだ!何がしたいんだ!何が起こるっていうんだこのヤロー!
「いや、俺はいいって」
「大丈夫だからっ!その…………そのまま風邪を引かれると迷惑なだけよ…………」
ああ、これはなんか悪い夢だ。
彼女いない歴 =DTを拗らせ、ついに妄想と幻の境境界の見分けが付かなくなった者の末路だ。
「目はつぶっててよねっ!」
了解しました。
はうっ?!いつの間にカーテンがこんな近くまでっ?!
足が勝手に…………!
落ち着け!
これは試練だ!
真実の幸福を気付かさんために主が与えたもうた試練なのだ!
幸福とは、本能に抗うことで得られることもあるっ!
友情という名の幸福をっ!
ならば俺は戦おう。
この試練を乗り越えた時!俺が真の賢者足り得る男児であることを証明してみせよう!
うおおおおおお!!
「お…………お邪魔します」
ちくしょーめぇっ!!自分の精神的脆さがほとほと嫌になるぜぇっ!!yeah!!
こんなことでも考えてないとタガが外れそうだった。
もうどうにでもなれ。
「見てないでしょうね?」
見えてない。
もう頼みの綱は俺の瞼だ。
彼らに全てを託し、今このカーテンの中を超絶健全空間に奉るしかない。
頼んだぜ。
「ちょっと…………びしょ濡れじゃない。やっぱり脱いで乾かしましょ————」
待て急に、やめ————!
「…………っ」
「…………ああ、悪い」
しくった。
「いえ…………こっちこそごめんなさい」
…………がっでむ。
目開けちゃった。
まず最初にビックリしたアマネさんの顔が飛び込んで来たけど、次にうる艶な唇がクローズアップされ、そのまま下に流れると細長い首、そこを通り過ぎて広い肩幅の上には鎖骨が浮き出ているのにグッとくる。
そこで止まればいいのに、残念ながら急ブレーキはすぐ機能してくれる代物じゃない。
在ろう事か、俺の目は勢いそのままさらに下に層まで動いちゃったのである。
肋骨が浮き出た胸部に、申し訳程度の柔らかそうなスライムがちょこんと。
「…………」
着てますやん。
え、なんで目つぶらなきゃいけなかったの————?
バシリ、と頰の痛みと共に目の前に電気が走ったのはその時だった。
え、なんで?
ちょっと気持ちを整理させて?
「あ、ごめんなさい…………っ」
「いやその…………」
「目が…………ちょっと」
目かぁ〜。
目線かぁ〜。
ごめんね。
いや、俺がここで謝るのは逆に失礼ではないだろうか。
ならばむしろお礼を言うべきだ。
見えるとこ見るといい身体だと思います。
ありがとうございました。
違うか。謝った方がいいか。
よく見ると、際どいところとかあったしね…………濡れ透けとか。
冗談はさておき、結局危惧していた気まずい空気が訪れたこの頃である。
まさか俺がこんなフラグを踏んでしまうなんて。
「なんか…………男の子って女の子が濡れてるとなんか、なんか言うじゃない?」
「…………」
言わないよ。
胸中に留めるから。
思っても口には出さない。それが紳士っていうやつなんだよ。
…………紳士が下心なしでレディファースト謳ってるわけないでしょうが。
もちろん下心見せないのが紳士ですがね。
俺の彼女への所業は、これにてどうか許してほしい。
彼女が俺の服に触れる瞬間、左腕にも触ろうとしていたから。
咄嗟に拒否反応を起こしてしまっただけなのである。
これは誰にも知られたくないコンプレックスだからなんだが。
「…………服、乾かさない?」
「…………ああ、ちょっと向こう向いててくんない?」
「うん」
この人に長時間気遣わせると何するかわかったもんじゃない。
できるだけすんなりと言葉を受け入れて、自分で上着だけ脱ぐことにした。
その時、もちろん左腕の部分はコツがいるのだが————。
うわ…………結構、水吸ってたなぁ。
よいしょ。
ビシャァッ!
「もう大丈夫?」
「できればこっち見ないでくれると助かる」
「そう…………かな。なんで?」
察してください。
主に俺は体つきに自信がないのと、見せたくない部分が十二分にあるからな。
妙な詮索はよしてもらおう。
大丈夫。
ズボンの水気は我慢するから脱がないよ。
「雨、止むかしら?」
「もうだいぶ弱まってた。もう少ししたら出れるんじゃないか。
どうせこんなところじゃ1日中干しても乾くかわからない。
これだけ水を切っていれば気持ち悪さも軽減されるはずだ。
動きに支障は出ないだろう。
一応、気休め程度に干しておくが。
「じゃあ、それまで座りましょうか」
「…………そうだな」
…………。
「…………」
なんだこの空間。
昔、こんなシチュを欲していた時分もあった気がするが、実際にあるとほんと、何すればいいのかわからない…………。
できることと言えば落ちてる石の数を数えることぐらいだ。
ひぃふぅみぃ。
ダメだ。肋骨が。チラリと見えた肋骨を思い出して数えてしまう…………。
改めて思うとアマネさん細かったなぁ。
肩も窪みあって、肩峰が盛り上がって関節部分もよく見えるくらいだった。
たしかにその辺のフェチがないでもないけど、実際は現実的な問題の心配をしてしまうものだ。
あんな肩で、あの装備、軽い素材とはいえ籠手を振り回せるものなのか。
胸筋も脇の筋肉もそれほどなかったみたいだし、いくらなんでも無茶なものを持っている。
たとえここがファンタジー世界でも、生身の人間は三次元を逸脱しない。
アマネさんが魔法使いだという話も聞かないし、身体強化の魔法が常時発動されているわけでもないはずだ。
…………身体強化の魔法?
最近、その単語を聞いたような気がするな…………。
その時、俺は何を連想していた。
実は俺、人間じゃないんだったっけか。
あの人は元気で解剖やってんのかなぁ。
すると不意に、何やら暖かいものが背中にピトッとくっついてきた。
もぞもぞと動き、位置を確認してるのか、都合のいい場所を決めると動きが止まった。
こ…………これは。
あの何事?
「こうするとあったかいみたいよ…………人肌の温度が一番いいんですって」
マジかぁっ!
どうしてこう余計なことをしてくれるんだっ!
俺の理性がっ!
ギリギリで保ってくれた理性がっ!
崩壊っ!しそうにっ!
クソォっ!あったかいどころじゃねぇっ!確かに萌える!熱くなりすぎる!
誰かその辺の氷水ぶっかけてくんないっ?
あ、でもこれを拒否するとアマネさんが冷えちゃうんじゃないか?
そうかそうかっ。アマネさんが寒かったのなら仕方がないっ。
俺はまだ余裕があるけども、女性は体温が低いらしいし健康にも関わる。それは一大事だ。それなら吝かじゃない。
万難を排してその力となろうではないか。
俺は紳士だ。
もっと密着する範囲を広げるべきか。
動くべきか…………。
ゴクリ。
実質これ以上動くとセクハラって言われるのが怖いです。
おい誰か俺のテンション下がること言ってくれっ…………。
親父ギャグでも何でもいいから世界一つまらないこと言って俺を賢者にしてくれっ!
さん、はいっ!
「これは、あの…………お礼というか…………なんというか」
またまた不意に、アマネさんから漏れ出た声に、ついに俺は理性を強く保つに至った。
お礼だなんて、またズルいものを持ち出されてしまったわけだが。
まだ気にしてたのかよ————さっきのこと。
ただ女の子の手助けをしたくらいで俺が天狗になるわけもなければ、恩を傘に着て変なことをする気も、さらさらないのに。
そんなにお礼がしたいだなんて、俺のこと好きなの?…………とか、烏滸がましい。
「ハトさんって、結構傷とかヒドイ。痛くないの?」
「ああ、別に。そういえば、傷がある男子はモテるってほんと?」
「知らないけど…………あたしは苦手かな」
「さいですけ」
この人は責任感が強いだけだ。
好意、好感がどうよりも、誰かが傷ついたり、病気になることを極端に恐れている。
そして自分のせいで人が困ることも恐れている。
良い人で済むならそれでいいのだが。
この人は、どうやら自分を否定しているらしい
。
賞賛されることをしているのに、それを自分のバリューに加算しない人間だ。
あの男とは逆の人類…………。
「その左腕も痛くない?」
そして、他者をよく知ろうとする悪い癖もお持ちだ。
できれば避けてほしい話題だよ。
けれど、無視するのもマズイ。
俺だって…………周りの機嫌を極端に恐れている人間なわけだからな。
「痛くないよ。ただ、ちょっと————」
ちょっと————なんだろうな。
なんと説明したらいいかわからない。
いや、どうはぐらかすべきか。
この腕を、なんと仮称すべきか。
呪い。
呪い。
形見、ではないとして。
ロリ仙人からもらった霊験あらたかな鉄腕。
ロケットパンチが打てない鉄腕。
やべぇ、この腕のメリットが今ひとつわからなくなった。
「この腕は、何でもないよ」
「例えば、名誉の負傷とか」
「そんなんじゃないよ。むしろ、不名誉の負傷だ」
「…………自分の腕なのに、随分おざなり」
あんたも随分自分の命がおざなりだな————なんて言いかけてやめた。
嫌味は嫌いだ。
最近は言うのが増えてきてしまったとはいえ。
どうしてそんな身を切る親切を言ってやらなくちゃならないのか。
俺は別に…………。
それにどう言っても、俺がこの腕に対して思っていることはただ一つだ。
「普通だよ。ただの火傷みたいなもんだ」
火傷ではない。
そう含みを持たせてしまったことを後悔する。
絶対にアマネさんが気にする言い方になってしまったから。
「治るかしら…………」
「…………治るかな」
…………どうでもいい。
まず、この腕が治ることはない。
贖罪の供物としてはちょうどいい。
またしばらく沈黙の時間だ。
また、実りのある話もしないまま、アマネさんは俺のことを知りたがる。
とても迷惑な話だな…………。
「…………雨止んだか」
「そうかな?そろそろ行きましょうか」
そんな時だけ空気を読んでくれる雨が、あと一歩だけ嫌いになれずにいた…………。
雨は大嫌いだ。
いつでも悪い報せが来る日は雨だった。
スケべな文章だけ捗ってごめんなさい。
m(_ _)m




