リベルタ誕生
帝連歴六百年代後半。
『右手に剣、左手に呪紋』と呼ばれる戦乱の時代は終り、帝国連邦は統一されました。ようやく訪れた平和の中で人びとは剣を、ある者は鍬に、ある者は舵に、ある者は槌に持ちかえました。そしてまた、鞭に持ちかえる者もいました。それは翼を持つ馬『翔馬』に騎乗し、天空を翔る競翔に挑む騎乗鞭でした。
① リベルタ誕生
「キュイー」
ほのかなホコリが斜めの光の中でたゆたいに舞う薄暗い羊小屋の奥で、かん高い声が響きました。その声の主を隣りの房の羊たちがヅラヅラと顔を並べて少女の背中越しに興味深げに見ています。少女はワラの上にヒザをついて両方のこぶしをにぎりしめて見つめていました。
「やった!出てきた!ほら!がんばって!カラをやぶって!」
『イニス・アテルナ』は十四ヶ歳にしては幼い感じのする少女です。
こげ茶色のスカート、芥子色のブラウスに灰色のエプロン、使いこんだ黒い革ぐつ、赤毛を後ろでむすび、茶色の目、北国人特有のきめ細かい白肌に細い体、その姿からはどことなくか弱さが感じられます。
けれども、この卵をふ化させようとして、この月三つの間、その一所懸命なようすは大人も驚くほどでした。羊小屋の奥に乾いたワラをしきつめ、羊たちが入ってきて卵を割らないように柵でおおいましたし、伯爵にもらった温熱魔法の呪紋が描かれた呪符を忘れず、日の出、日の入り、正午、真夜中とに卵にはり、その度ごとに卵をうらがえしました。母親がするように卵をなでながら愛情こめて話しかけもしました。そして夜は卵を抱いて寝ました。
この北の地も昔に比べて暖かくなったとはいえ、晩冬から初春の季節に羊小屋に寝泊まりするのは楽ではありません。そうしながら羊の世話と午後学校と父親の食事の用意を怠けないでやっていたのでした。
「キュイー」
かさねられたワラに包まれて楕円スイカほどの卵のカラがピキピキと割れていきます。割れ目から小さな口が見えてきました。
「がんばって!てつだってあげたいけど、伯爵さまが『見守ってあげるんだよ』って、おっしゃったから」
幼い命は、この世に出ようと必死でした。たしかに、そのカラは先ほどまで彼を育て守るのにたいへん必要なものでした。けれども今は、それをやぶって出ようと、もがいています。
「キュイイキュイイ」
細い前足が出てきました。まだ煮こんだ黄大根のようにやわらかいひづめ。不器用に、それを使ってカラを割ると、ぬれた体がズルリと出てきました。まだ生えそろってはいない銀色の体毛と羽毛、成長すると長くなりますが今は短く丸い顔、少し飛び出した黒曜石のような円らな目、小さな耳をヒクヒクと動かし、それと同時に前足の上の肩口から伸びた小さな翼もヒクヒクと動きます。よく見ると、たてがみと尾は光に当たった部分が虹色に輝いていました。
「キュイー」
「やった!出てきた!ああ!生まれた!生まれたわ!わたしの子供!わたしのリベルタ!今日からあなたは『リベルタ』よ」
イニスは用意しておいた柔らかい布で急いでくるんで、そのふるえる小さなぬれた体を拭きました。その間、『リベルタ』と名づけられた仔翔馬は、まだ視力のない眼差しで一心にイニスを見つめていました。
「キュイーキュー」
「おめでとう!生まれたのね!イニス!」
イニスが振り返ると柵の向こうに背の高い少女が立っていました。彼女の名前は『ソムニ・ラクス』、イニスより月四つだけお姉さんの十四ヶ歳。でも同じ歳と思えないほど体格もよく、セミロングの金髪、まつげの長い大きな青い目、若い貴族女性が好んでするスポーツ『マギア・テニス』の水色のウェアを着ていて、いかにも活動的です。ここまで走ってきたらしく、ほほを赤く染めて「ハアハア」と息を荒くしています。
「ああ、ソムニ!そう、見て。わたしのリベルタよ」
「かわいい!きれいな赤ちゃんね。虹色のたてがみなのね」
「ちょうどいい時に来た。生まれたんだね」
「お父さま」
ソムニの横の空間がグニャリとゆがみました。そこから突き出された左手が出てきます。その手のひらには茶色で泣き顔のような奇妙な紋様が描かれていました。それは瞬間移動魔法の呪紋でした。
左手の次に男性が現れました。右手には大きな羽根ペンを持っています。魔法貴族の印である長い髪を後に一束にして編みこみ、北国貴族の正装を着て、肩をグッと上げた姿は、いかにも紳士の雰囲気が出ています。けれどもソムニを見る顔には少したれた目と笑顔で作られたシワとで慈愛深い表情ができあがっていました。
「ただいま。ソムニ」
彼は『マジェスタス・エア・ラクス伯爵』、この帝国連邦北国辺境『ラクス』の地を所領とする領主で愛娘ソムニの父親です。
「おかえりなさいませ、お父さま。でも、お父さま。ベルースで会議じゃありませんでしたこと?わざわざモメムヴェオなんか使って」
モメムヴェオをふくめた最高クラスの魔法は伯爵のような貴族でも、おいそれと使う事ができないものなのです。
「さっき会議が終わったんだけどね。今年の分のモメムヴェオ、これでもう全部使っちゃったよ。どうしても早く帰ってきたかったからさ。一昼夜、浮游船の中でジッとしているなんてできなかったんだよ。ああ、おめでとう。イニス」
「伯爵さま。無事生まれました。リベルタです」
「リベルタか。やっぱり、その名前にしたんだね」
「伯爵さま。たくさんの良い名前を考えていただいて・・・わたし、その中から『リベルタ』を選びました。よろしいでしょうか?」
「いい名前だと思うよ。おめでとう。イニス。がんばったね。人間が翔馬の卵をふ化させるのは簡単なことじゃない。なかなか帝都の研究機関でも成功しないことだからね」
「ありがとうございます。伯爵さま。伯爵さまの呪紋のおかげです」
「ねえ、お父さま、わたしも抱いてもいいでしょ?」
「ソムニ。今、それは遠慮したほうがいいと思うよ」
「えー、いいでしょ?イニス」
「・・・ええ、どうぞ。ソムニさま」
「ほら、イニスは『いい』って言ってるわ」
「ソムニ。生まれたばかりの翔馬の赤ちゃんは、とってもデリケートなんだよ。ほんとのお母さん翔馬も他の翔馬や人間に赤ちゃんを見せたりはしない。赤ちゃんがストレスを感じて病気になったり、時には死んでしまうからね」
「でも、イニスは抱いているわ」
「ソムニ、見てごらん。イニスに抱かれた赤ちゃんは鳴いていないだろう?イニスをお母さんとして赤ちゃんは認めたんだよ。安心しているんだよ。だから、そっとしてあげようね」
「わかったわ。じゃあ、いつになったら抱いていいの?」
「そうだね。目も見えるようなって、ひとりで立てるようになって、体も大きくなって、放牧地に歩いていけるようになるくらいかな」
「ええ!そんなころじゃ、もう抱けるような大きさじゃないわ!」
「はははは。そうだね」
「もう!お父さまのいじわる!」
「キュイ!キュイ!キュイ!」
「どうしたの?リベルタ」
「いけない。ぼくらがいるから怖がっているんだよ。さあ、ソムニ。帰ろう」
「ええ?もう?もうちょっと見てていたいわ」
「ソムニ。きみ、レッスンの途中じゃないのかい?」
「そう。もうすぐ産まれそうだって聞いたから、わたし飛んできたの」
「じゃあ、インストラクターを待たせたまんまなんだね。しょうがないなあ」
「伯爵さま。お帰りなさいまし」
「ああ、ただいま。ラボロリス」
「伯爵さま。赤ん坊が羊を怖がっているかもしれんで、羊どもを古い方の小屋に移しましょうか?」
「そうだね。ラボロリス。そうしてくれるかい」
「お父さん。来てくれたの?」
いつの間にいたのでしょう。イニスの父親『ラボロリス・アテルナ』が伯爵よりも若いのに白髪が多く混じり、老けて見える顔を見せました。
「イニス。その赤ん坊な」
「なに?」
「その声は腹すかしとる声だ」
「え?そうなの?」
「そんなこともわからんで、そいつの母親になれるか。ほれ」
「え?」
ゴツゴツと荒れた手が差し出されます。そこには陶器でできた哺乳ビンがありました。
「お父さん」
「そいつのほんとうの母親の乳だ。今朝、翔ばす前にしぼったから新鮮だぞ。飲ませてやれ」
「ありがとう。お父さん」
哺乳ビンを受け取って、イニスはリベルタの口の前に吸い口を持っていきました。リベルタはヒクヒクと鼻を動かして匂いをかいでいましたが、それがなんであるかすぐにわかったらしく、磁石のように吸いつきました。そして、大きな目をトロンとさせてジュウジュウとおいしそうに飲みました。
「うふふ、ほら、リベルタ。そんなにせっつかないで。もどしちゃうわよ」
うれしそうに乳を与えているイニスを残して三人は羊小屋の外に出ていきました。
翔馬の厩舎、そして普通の馬がいる厩舎と羊小屋、ガチョウ小屋と並んだ場所は伯爵邸と放牧地の間にあり、目の前はルビオ・ベリー畑がなだらかな斜面に広がって豊かな水をたたえた『アルタス湖』まで続いていました。初春の青空の下、湖の向こうの独立峰火山『マンス・ディプドラ』が、その逆さの勇姿を湖面に映しています。
幼いころから見慣れていても伯爵は、この光景が大好きでした。特に短い間とは言え、旅に出ていたのち山と湖を見ると『帰ってきた』と実感するのでした。
「無事に生まれてよかったね。ラボロリス」
「いえ伯爵さま。あたしも絶対、無理だと思っておったんですが・・・あいつの根性には降参しましただ」
「でもこれから、あの赤ちゃんの世話がたいへんだね」
「そうですなあ。ある程度大きくなれば、ほっといても大丈夫なんですが、そうなると翔ぶ練習も・・・いや、それは大きくなってから考えればええとして、そこまで育てられるかどうか」
「イニスなら大丈夫さ」
「そうですなあ。あの根性、あいつに似たんですなあ。ふと、あの仔翔馬と一緒におったのを見たときに・・・おかしなもんですなあ。まったく、それまで忘れとったのに・・・」
「そうだね。そう言えば、ぼくも・・・」
その会話を聞いていたソムニが割って入りました。
「あ!イニスのお母さんでしょ?イニスに似てらしたの?」
「あ・・・では、あたしは羊を移しますんで、古い小屋を開けて、中に空気を入れにゃいかんで」
と、立ち去るラボロリスとは逆の屋敷の方向に伯爵父娘は歩きだしました。ソムニが伯爵の腕をつかんでブラブラと父親の顔を見上げます。
「お父さま。イニスのお母さんってどんな人でしたの?」
「さあ、よくおぼえていないから」
「うそ!さっき『そうだね』って言ってらしたわ!」
「ははは・・・思い出そうとしても、なんだか霧の中の人のような気がするんだよ。ほんとうに」
「もう、お父さまったら、もったいぶって。ひどいわ」
「そうだね。とりあえず、あの翔馬の赤ん坊の名前にヒントがあるような気がするね。偶然にイニスは選んだようだけど、何か運命的なものを感じる」
「魔法貴族として?人間として?」
「イニスを親愛する者として」
「おお!お美しいですこと!じゃあ、『リベルタ』って、どういう意味ですの?」
「あれ?まだ教わってないのかい?」
「まだ、その単語は習ってませんの!」
古くからの慣習として人や土地、翔馬の命名には、今は話されない古代帝国語から選ばれます。
「それはね」
にこやかな中にも、きびしさを感じる声で伯爵は言いました。
「『自由』って意味さ」
「じゆう・・・うーん」
ソムニは美しい目の間にシワを作り、腕を組んで歩きました。
「むずかしいわ」
ふたりは屋敷の裏庭にやってきました。そこは段々状になっており、一段一段に様々な花々が咲きてらっていて、青磁色のヒスイズイセン、チョウロウザクラの臙脂、ホウオウスミレの萌葱色、カエンモクレンの赤丹の花と、色のパレードが春の趣を出していました。
「ソムニ。そんなにゆっくりしていていいのかい?レッスンは?」
「いいんです。あの先生、ぜんぜん怒らないのよ。わたしが失敗したり、わざと変なことしても『いいですねえ』『おじょうず』『ソムニさま天才』ってパチパチ手をたたいて、ほめてるだけなんですから。ああ、つまんない」
「あ、だけど、向こうからすごく怒ってる人が来るよ」
「ソムニさま!」
裏庭の階段をドスドスと降りてくるスーツ姿の老人がいました。
「まあ!ドクシス」
その姿を見るなりソムニは伯爵の後ろに隠れました。老人は伯爵の姿を見て、一瞬、驚きましたが、すぐにキリッと背筋を正し、スッと白髪の頭を下げました。
「・・・伯爵さま。お帰りなさいませ。お早いお帰りでございますね」
「うん。モメムヴェオを使ってね」
「え、なんとわざわざ・・・それでは伯爵さま。失礼して、わたくし、ソムニさまにご用事が」
「うん。いいよ」
ラクス家三代につかえ、ラクス領財政からソムニの躾けまで気を配る老執事ドクシスは、シワだらけの顔を、よりシワだらけにして言いました。
「ソムニさま!先生に断りもなくレッスンを中断してしまわれるとは何事です!」
「えー、あの、それは、ちょっと用事がありますからと、お伝えいたしましたけど」
「いいえ!何も言わずに飛び出していかれたと聞いております。しかも、それは今回だけではないとも聞きおよんでおります!」
「そうなの?ソムニ」
と、伯爵は背中のソムニに笑顔を向けて聞きました。
「それはその、年頃の女の子にはいろいろと・・・」
「ソムニさま!あなたがあれほど『マギア・テニス』が習いたいとおっしゃいますから高いレッスン料を払って、わざわざ国都ベルースから先生をお呼びしているのです!それなのに、なぜ怠けるのですか!」
「えーと、それは理想と現実の大いなる違いに気づいて逃避行動に走ると言う思春期特有の成長の表れで・・・」
三人は踊り場でクルクル回る形になってしまいました。
「ソムニさま!わたくしが申したいのは『やりとげる意志』です!わたくしは、ご婦人方があのような、はしたないスポーツに興じるのは好みではありません!ですが、これからの時代、社交の場で必要になってくるのでは、と思って承諾させていただいたのです。ならばラクス家次期当主として一度選んだ道、最後までやりとげなくてなんとしましょうや!このようなことでは、ご先祖さまに申しわけが立ちませんぞ!」
「はい!そうですわね!申しわけが立ちませんから、わたくし、レッスンにもどりますわね!先生もお待ちですし!お父さま!ドクシス!ごきげんよう!」
と、ソムニは階段を二段飛ばしで駆け上がって消えてしまいました。
「あははは。あの元気。実にたのもしい次期当主だね」
「笑い事ではありませんぞ。伯爵さま。ソムニさまのご教育は今が一番大事なのです」
「生まれた時から、ずっと『今が一番大事』だって言ってるよ」
「伯爵さま・・・」
この老人には冗談は利きません。彼も子どものころ『マジェスタスさまのご教育は今が一番大事』と言われてきたのです。
「ごめんごめん。イニスの卵がかえったんだよ。それを見に行ってたんだ」
「おお!とうとうやりおりましたか!これも皇帝陛下聖魔法の賜物・・・あ、それでモメムヴェオを」
「そう、どうしてもすぐに見たくてさ。かわいい赤ちゃんだったよ。イニスをお母さんのように慕ってたよ」
「なるほど!イニス!まったく、あの娘には感嘆させられますな。見捨てられた翔馬の卵とは言え、それもラクス家の貴重な財産。それを無駄にせず生かすとは。わたくしドクシスがラクス家一番の忠臣と思っておりましたが、今回の働き、いやはや、イニスには脱帽いたしました」
「どうしてイニスが、あの卵をかえしたか。わかるかい。ドクシス」
「え?伯爵さまへの忠義ゆえの行動では?」
「あははは。ドクシスらしい答えだね」
「ちがうのですか?」
「ちがうと思うよ」
野生の翔馬のつがいは一度に一個の卵を産み、あたため、生まれた子どもを育てます。おもにそれをするのは牝の役目で、牡はエサ集めをします。
けれども時たま、卵が二個産まれることがあります。その時、牝は先に産まれた一個はあたためますが、二個目は巣から追い出してしまいます。
一度に、ふたりの子どもは育てられない、ふたりとも育てようとすると共倒れになるかもしれない、そんなふうに本能的に行動するのです。
人間に飼われ、そんな心配は無くなっても、そうしてしまうのです。しかも卵の人工ふ化はウナギのそれよりも、はるかにむずかしい。だから二個目が産まれた時は魔法液の原料として処分されるのが常でした。
けれども・・・
「伯爵さま!お父さん!お願いです!この卵を、わたしにください!いえ、いえ、売ってください!高くてもかまいません。でも、支払いは分けてください。お給金から引いてください。お父さん。わたし、お昼ごはんいらないから。それに午後学校をやめて食堂で働きます。ね、そしたら、お給金へっても大丈夫でしょ?お願いします!伯爵さま!お父さん!わたし、この卵をかえして育てたいんです!」
牡翔馬『アエスタス』と牝翔馬『セルタ』の卵が二個産まれ、その一個を処分すると聞いた時、ふだんおとなしく、まじめで目立ったことなどしないイニスが伯爵と翔馬調教師である父親の前にひれ伏しました。
驚いたふたりでしたが、少し話し合ってから承諾しました。
けれども伯爵は給金を減らしたりしませんでしたし、父親もイニスに昼ごはんを食べさせ、午後学校にも行かせました。元々、一個しか産まれなかったものとあきらめればいいのですし、卵がふ化するとは思えず、そのうちイニスもあきらめるだろうと思ったのでした。
けれども・・・
「キュイ・・・」
「ありがとうございます!神さま!」
おなかがいっぱいになって眠ってしまったリベルタをなでながら、イニスは幸福と感謝の酔いの中にいました。何の夢を見ているのか時どき、リベルタは「キュイキュイ」と寝言を言っています。
「神さま!ああ、ありがとうございます!この子をくださってありがとうございます!やっぱり神さまはいらっしゃったんですね。この子とわたしは似た者どうし。お母さんにすてられた不幸な子。でも、でも、わたしがこの子のお母さんになります!」
神の力『魔法』を人間が手にし、その魔法を使って、神にしかできなかったことを人間は次々と起こしました。火を放ち、氷を作り、光を生み、雷を起こし、巨大な塔を建て、山をくずし、川をせき止め、海を埋めました。そして人間は世界のあらゆる場所に行きました。
そこで人間は思いました。
『神はいない。神は死んだのだ』
神に祈る者はいなくなりました。
けれども、イニスは神に感謝していました。
自然、だれに教わるでもなく神に感謝しました。
神は信じる者の心の中に生きていたのです。