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短編

贖罪の舞曲

道端

水溜まり

赤い雫が落とされる

何粒も何粒も、音をたてて落ちて行く


『ドウシテ、コロシタノ?』


曇天

五月雨

赤い水が白磁の肌を伝う

雨音が激しく鼓膜を叩きつける


『ドウシテ、ワタシヲ、コロシタノ?』


水溜まりが赤く染まり、雨音が消えていた




「やめろ、やめてくれぇっ!?」


一閃

また一つ、骸が転がる

どすん、と音が響く

地面に緋色の液体が流れる

暗赤と明赤が混ざって一つになる


「……あと、二人……」


黒衣の少女が、息をを吐きながら呟く

肩が上下に激しく動く

美しい顔に、疲労の色が浮かぶ

手に握った小太刀を、眼前に構える


「相手は一人。それも、子供の女だ!!」

「ひるむな!!二対一だぞ!!」


黒服の男が叫ぶ

その手には、大振りの刀を構える

サングラスが、照明を反射した

少女の汗が地面に落ちた


「シッ!」

「フッ!」

「…!」


男達から、短い呼気が漏れる

少女は、無言で飛び掛かる

三つの刃が、冷たい光を帯びて交わる

火花が派手な音をたてて散った




小太刀が舞う


―――私のせいで


光が線となり、空間を切り裂く


―――私のせいで、あの娘は


線は男達を撫で、分断する


―――私のせいで、あの娘は死んだ


ずるり、と音をたてて、胴が落ちる


―――ワタシガ


もう一人の首が、弧を描いた


―――ワタシガ、イモウトヲ


音をたてて、地面に落ちた


―――ワタシガ、イモウトヲ、コロシタ


世界を沈黙が包んだ




『ねぇ、お姉ちゃん!』


どうしたの?


『ふふ。お姉ちゃん大好き!』


ありがとう


『お姉ちゃん、行ってきます!』


気を付けてね


『いや、嫌!助けて、お姉ちゃん!?』


やめて、離して!その娘を離して!


『やだぁ……恐いよぉ……おねぇちゃん…』


嫌!やめて!その手を離して!


『死にたくないよぉ……お姉ちゃん、助けてよぉ……』


ハナセハナセハナセハナセハナセハナセハナセハナセ!!!!





「………っ!」


真夜中、シンプルなベッドの上で、少女が荒い呼吸を繰り返していた

寝間着は乱れ、布団はずり落ち、身体中が汗で濡れたいた


「夢……?」


虚ろな瞳で呟き、ベッドに倒れこむ

微かにきしんだ音が鳴る

純白の枕に、少女の碧色の髪が複雑な模様を描き出す

窓から差し込む月明かりが、部屋中を青白く染め上げる


「まだ、ダメなの?」


虚空に語りかける

まるでそこにだれかがいるかのように

視界に、一枚の写真が映る


「ねえ、―――」


写真立てが音もなく倒れた

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