日曜日
今日は久し振りの休日だ。
何をしようと考えてる間に気付くと夕方になっていたという今までの休日とは少し違う。
最近は仕事に追われ疲れが溜まっていたせいか、昨夜は仕事から帰るなりすぐに眠った。
そのお蔭で今日はすっきりと目覚めたのだ。
こんなに気持ちのいい朝は、何年振りだろう―――…
彼は、久し振りの気持ちのいい目覚めに加え、眩しい位の晴天に気分が高揚していた。
彼はシャワーを浴びて、服を着替え、出掛ける事にした。いつもの気怠さや、焦りは無かった。
ただの休日だというのに、こんなに気分が高揚しているなんて馬鹿らしいと一瞬思ったが、それを止める事は出来なかった。
先ず、彼はいつも乗る筈の車には見向きもせず、駐車場を通り越した。
わりと田舎な彼の家周辺は、晴天を更に映えさせた。
何処へ行こうというあてもなく、ゆっくりと20分ぐらい進むと、小さな喫茶店が目に入った。
(そういえば朝食がまだだったな。)
小さな喫茶店に入った。
カランカラン―――
「いらっしゃいませ。」
夫婦だろうか。二人の老人が笑顔で迎える。
少し温かい気持ちになりながら、トーストを食べる。
もちろん店を出る時も老夫婦は笑顔で見送った。30分程で店を出て、何処へ行こうかと考えていると、読みたかった本を暫く放ったらかしにしていたのを思い出した。
(図書館に行こう!)
彼は足を速めて近くの図書館へと向かった。
目的の本が見つかると、2時間程で読み終えた。
(図書館は何て安らぐ場所だろう。いつもの雑音や、気になる時間も今日は関係がない。)
図書館を出てふと時計を見ると、もう12時だ。
コンビニで昼食を買うと、彼は電車に乗り込んだ。
窓から見える景色を少しの時間楽しみ、電車を降りる。
彼は2年前に住んでいた町へやってきた。懐かしさを覚えたが、やはりかなり変わってしまっている。
(この大好きだった町も、変わってしまっている。僕と同じだな…)
(あの場所も変わってしまっただろうか。僕がいつも支えてもらったあの丘。)
しかしそこは何も変わっていなかった。彼を待っていたかのように、一面にはきれいな花が咲いている。
(ここは変わっていなかった。僕を待っていてくれたのか?こんなに変わってしまった僕を、まだ見捨ててはいなかったのか?)
少し、涙を流した。
彼はとても寂しかった。仕事ばかりの毎日で、大切なものもないし、自分がいなくなっても何も変わらないだろうと思っていた。こんな日が一生続くのだろう、と。
しかしその丘は彼を待っていた。
(いつも助けてくれてありがとう。僕は勘違いをしていた。自分なんか、と卑下しては、繰り返し繰り返し涙を流していたんだ。僕は自分から逃げていた。僕にだって何か出来る筈だ)
彼は子供に返ったように泣いた。恥ずかしさや、気遣う事などここには無かった。
(もう僕は大丈夫だろう。何かを探すのは、これからでも遅くない筈だ。)
(明日からは、退屈な仕事も少しは楽しめるかもしれない)
なんて事を考えながら彼は、ゆっくりと昼食を食べた。