消された記憶(メモリー)
「ん・・・。」
目が覚めたと言うことは分かった。 だけど手と足を伸ばそうとしたら『何か』に拘束されていた。 まるで小さい頃に見たヒーローのアニメでヒーローが改造されるシーンのようだ。
辛うじて少しだけ動く上半身を動かし、全身の見える部分のみ確認する。 見える限り服は全部取られているが身体にヘンな機械や怪しげなベルトが付いていたり、人間ではない何かの手が付いていたりすることはない。 まさか改造される前か? イヤな想像をしてしまって冷や汗が垂れる。
「おっと目が覚めたようだね。 調子はどうだい?」
部屋の隅から声が聞こえた。 俺は急いで声の聞こえた方に顔を向る。
「これがいいように見えるか?」
「ああ 拘束が邪魔だったね。 改造が失敗して理性が飛んだ時の保険みたいなものだったからね。 普通にやり取りで来て暴れてない所を見ると成功したっぽいね。」
男がしゃべり終えた後パチン と指を鳴らした。 部屋の中に明かりが付き、両手両足の拘束が消える。 声のした方を見ると眼鏡をかけていて、殴ると折れてしまいそうなほど細い体をした男が白衣を着て立っていた。
「いつまでも裸だと見てるこっちも辛いから」
と言ってもう一つ持っていた白衣をこっちに投げる。 それは他に着るものがないのでそれにそでを通した。
「じゃあこっちから質問するね。 君の名前と職業を言ってみてよ。」
「俺の名前は・・・」
ここまで言って違和感を覚える。 名前が思い出せない? そもそもなんで俺はここに居る? 目が覚める前は? そもそも『俺』は『何』だ?
「その様子だと改造は成功したようだね。」
頭を抱えている俺をみて男は言った。
「とりあえず一般常識を除いた記憶を消去させてもらったよ。 君は『素材』はよかったんだけど余計な感情とかあったからね。」
男はそこまで言うと一旦息を吸う。 俺は固まったまま動けなかった。
「今日から君は僕達の『組織』で生きてもらうよ。 名前はそうだな・・・ 『ロウ』と名乗ればいい。 君の戦い方は狼そのものだからね。」
男はニコニコしながらそういった。
「記憶をなくしたままっていうのも可哀想だからね。 頑張れば記憶を少しずつ戻してあげるよ。 君の仕事を簡単に説明しよう。 僕達が指示する場所を破壊してくれればいい。あと、僕の事は『博士』とでも呼んでくれていいよ。 僕も君と同じ記憶を消された人間だからね。」
博士とかいう人間が予想外のカミングアウトをした。 しかし俺に動く気力はなかった。
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