連れて行かれる狼(ロウ)
「あんた 新入りなら新入りですってさっさと言えばよかったのに。」
最初の場所に戻った時、かけられた第一声はそれだった。
「ロウって名前だっけ? 私はジェミー。 後ろの男は私の執事でリンクスっていうの。 よろしくね。」
ゴスロリ女改めジェミーはそう言った後年相応の笑顔で右手を差し出す。 俺はその手を強く握り返した。
リンクスは相変わらず、直立不動のまま俺を睨んでいた。 まるでお前をまだ信用したわけではないと言いたそうな表情で。
「そこの三人 仲良くやってるのはいいけどそろそろゲート開けるよ~。」
という博士の声が通信越しに聞こえる。 その後地面から特に音を立てずに扉がせり出す。
「へぇ。 音出さずにドア出てくるんだな。 てっきり俺は なんかゴゴゴ~ とか言う音して、ごっつい扉でも出てくると思った。」
俺は感心しながら扉をくぐる。 その先は下に続く階段になっていた。
「あんた 馬鹿? そんな音出してたら簡単に見つかっちゃうでしょ!」
とジェミーは言いながら俺の後頭部にとび蹴りをくらわせる。 俺はバランスを崩し、石でできた階段を転がり落ちて行く。
しばらくしたら身体の回転が収まり、床にたたきつけられた。 そしてその上のほうから博士の声が聞こえた。
「ロウ。 お帰り~。 どう? 家のエース。 強かったでしょ?」
博士はまるで面白い劇を見た後の子供のようにはしゃいでいた。
「結構戦ったからね。 ウォッチのメンテするから貸して。」
博士はそう言って右手を突き出す。 俺は変身を解除しそのまま博士にウォッチを預ける。
「ありがと。 しばらくの護身用に試作品預けとくよ。」
博士はそのままウォッチを黒く塗ったようなものを俺の左腕に巻き付ける。
「使わないに越したことはないけどいざって時は使ってね。 君の鎧と武器はそのまま転送される『はず』だから。」
博士はそう言って走り去って行った。
「はずって。 オイオイ。 というか俺はいったいどうしたらいいんだよ・・・」
いきなり初めて来た場所に置いていかれる。 記憶がない事よりはマシなのだろうがかなり心細い。
「やることないんなら パーティーしましょ! ロウの歓迎パーティー! うん決めた! やろう! リンクス。 よろしく。」
いつの間にか後ろに来ていたジェミーは大きな声ではしゃぎながらそう言った。
「まずは他の人との顔合わせね。 食堂行きましょ。 案内するわ。」
俺はジェミーに手をひかれ、奥の方へと進んで行った。
すぐにもう片方の作品を追い抜きそうな速度でPVが伸びてきて驚いています。
気が付いたらお気に入り登録がひとつ消えていて少し悲しい俺でした。