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悪役令嬢保護制度下の恋  作者: 南蛇井


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第四幕 ― 王子の宣言

王子は、玉座を見上げた。


黄金の装飾。


赤い天鵞絨。


幾代もの王が座った場所。


だが彼は——


座らない。


階段を上がりきらず、

最後の一段の手前で止まる。


いや、さらに一歩下がる。


床に立つ。


象徴より、一段低い位置。


それは偶然ではない。


意志だった。


沈黙が広がる。


粛清派も、穏健派も、軍部も。


誰も動かない。


王子はゆっくりと口を開く。


「私は、選ばれる王ではなく、選ぶ王になる」


その言葉は大きくはない。


だが、広間の隅々まで届く。


従来——


王は血統によって“選ばれる”。


生まれによって保証される。


制度によって守られる。


間違っても、揺らがない。


揺らがせてはならない。


だが王子は、逆を言った。


「生まれは、私をここへ運んだだけだ」


視線を上げる。


玉座を見ない。


人々を見る。


「王とは特権ではない。選択の連続だ」


息を呑む音。


その言葉は、王権の定義を書き換える。


「私は、常に選び続ける」


一瞬、視線が王妃へ向く。


そして——


広間全体へ。


「その結果が誤りであれば、責任も引き受ける」


制度に守られない王。


血統を盾にしない王。


拘束令すら自らに適用され得る王。


それは民主化ではない。


王は依然として王だ。


だが——


自己制限を宣言した王。


王が制度の外側に立たないと告げた瞬間。


王権は神聖から倫理へ移行する。


神に近い存在から、


選択に縛られる存在へ。


玉座は依然として空。


王子はそこに触れない。


床に立ったまま、続ける。


「私は守られる王にならない」


それは、自分自身への宣告でもある。


「私は、選ぶ。

そして、選び続ける」


沈黙。


だがそれは拒絶ではない。


理解の沈黙。


この瞬間、


王は制度に保証される存在ではなくなった。


王とは、


決断し続ける者。


特権ではなく、


重さ。


玉座は光を受けて輝いている。


だが今、

もっとも重いものはそこにはない。


床に立つ一人の人間の言葉にあった。

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