表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢保護制度下の恋  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

【第三場面】記事公開と学園の反応

翌朝。


まだ霧の残る石畳の上に、刷りたての紙面が並べられた。


見出しは大きく、躊躇なく掲げられている。


『薔薇庭園に咲く倒錯の美』

――副題:感情の所在は未確認


 


最初に手に取ったのは、上級貴族の令嬢たちだった。


白い手袋越しに紙を広げ、静かに読み進める。


「……見事ですわね」


「ええ。あの場で取り乱さない冷静さ」


「やはり、品格が違う」


レディアナの名は直接賛美されていない。


だが行間が語っている。


・規則違反はない

・感情に流されない

・調停を許容する余裕


それらはすべて、上流階級が尊ぶ資質だった。


「これぞ貴族の振る舞いですわ」


評価は、確実に上がった。


 


一方、中庭の噴水近くでは、別の声が上がる。


「……かわいそうじゃない?」


「紅茶をかけられて平然としていられるわけない」


「“震えていたが目は逸らさなかった”って……無理してたんじゃない?」


中間層の生徒たちは、記事の美学よりも感情を読む。


副題が目に留まる。


――感情の所在は未確認。


「ほら、やっぱり傷ついてるかもしれないって書いてある」


彼らの中では、リリアナは被害者として強化されていく。


同情が、静かに広がる。


 


そして、さらに別の場所。


男子寮の談話室。


「なあ、三人の関係ってさ」


「結局どうなんだ?」


「倒錯って書いてあるぞ。なんかすごくないか?」


笑い声。


興奮。


想像。


記事は、関係性を“構図”として提示した。


その結果、一部の生徒はそれを娯楽として消費し始める。


「悪役令嬢、完璧すぎるだろ」


「ヒロインもただの被害者じゃないってことか?」


「王子、調停者ポジとか最高じゃん」


物語化。


憶測。


脚色。


三人はいつの間にか、学園最大の連載作品になっていた。


 


同じ記事。


同じ文章。


だが受け取り方は三様。


 


薔薇庭園の出来事は、もはや過去の一瞬ではない。


評価へ。

同情へ。

娯楽へ。


 


茶会は、思想になる。


 


上級貴族は「品格」を見る。

中間層は「感情」を見る。

一部生徒は「構図」を見る。


 


そして誰も気づかない。


当事者たちの内側が、

まだ何一つ確定していないことに。


 


風が吹く。


掲示板の新聞がわずかに揺れる。


そこに記された言葉——


倒錯


それはもはや形容ではない。


学園にとっての、新しい価値観の兆しだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ