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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第1章 勇者と聖女

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第7話:金剛の守護者、大海を知らず

魔法のゼクス、剣術のシオンに続き、ミラが「力仕事なら、この者が一番ですわ」と連れてきたのは、岩石のような筋肉を鎧のように纏った、大柄な巨漢だった。


 名を、ゴルド。  


魔王軍四天王が一角、別名『金剛の守護者』。  


魔王軍最高の防御力を誇る剛腕の戦士であり、その肉体はドラゴンの一撃すら無傷で跳ね返し、たった一人で堅牢な城門を粉砕する「動く要塞」である。


俺様口調で豪快に笑う彼は、魔王軍における「絶対的な壁」として恐れられていた。


「ガハハ! 俺様が来たからには安心しろ! 坊主、まずは俺様の体に打ち込んでみろ。身体強化ってのは、こうやるんだ!」


 ゴルドは仁王立ちになり、丸太のような腕を組んだ。カイルは、アルドから「練習用」として渡されていた、少し銀色に光る無骨な剣を構える。


「……いいんですか? この剣、結構重いし鋭いですよ」


「構わん! 俺様の筋肉は、並の鉄などバターのように弾くわ! ……ぬんっ!」


 ゴルドが気合を込めると、その肉体は黄金色に輝き、金剛石以上の硬度へと変貌した。


カイルは意を決して、全力の一撃をゴルドの腹部に叩き込む。


 ――キィィィィィンッ!


 鋭い金属音が響く。


だが、切られたはずのゴルドは無傷。


逆に、カイルが持っていた剣が、飴細工のように「ぐにゃり」と曲がってしまった。


「ガハハ! 見たか坊主、これが『守り』の極致だ! ……ん? だが待て、今の剣、少し手応えが……」


 ゴルドは冷や汗を流した。


今のカイルの一撃、もし自分が本気で強化していなければ、危うく皮膚を裂かれていた。


何より、あの曲がった剣……「練習用」と言っていたが、希少金属ミスリルの中でも最高純度の代物ではないか。


 調子に乗ったゴルドは、その動揺を隠すように、傍らで見守っていたアルドを指差した。


「おい! 貴様もやってみろ! 遠慮はいらん、シオンが言っていた『薪割り』とやらの力、俺様が正面から受け止めてやる!」


「えっ、でも、危ないですよ。ゴルドさんは先生なんだし……」


「ガハハ、心配無用だ! 俺様を誰だと思っている!」


 アルドは困ったように眉を下げたが、ゴルドがあまりに自信満々なので、「じゃあ、少しだけ……」と歩み寄った。


「それじゃあ……失礼します。……よっ」


 アルドは、武器すら持たなかった。


ただ、軽く。


本当に軽く、挨拶でもするかのようにゴルドの肩を指先で「押した」。


 ――ドォォォォォンッ!!


 次の瞬間、爆音と共にゴルドの姿が消えた。  


あまりの衝撃波に、周囲の木々がなぎ倒される。   「……あ」


 アルドが指を差した先。数百メートル離れた裏山のミスリル鉱山に、人間一人分の穴が空いていた。  


アルドたちが駆け寄ると、鉱山の硬い岩盤に頭から深々と突っ込み、足だけを出してピクピクと痙攣しているゴルドの姿があった。


「ゴ、ゴルドさん! 大丈夫ですか! すみません、ちょっと力が入りすぎちゃったみたいで……!」


 アルドが慌ててゴルドの足を掴み、スポンと大根を抜くように引き抜く。  


引きずり出されたゴルドは、目は回っているわ、鼻血は出ているわ、全身の「金剛の強化」が粉々に粉砕されているわで、散々な有様だった。


「……あ、あ……あ……」


 ゴルドは震える指先で、自分を軽々と抱え上げるアルドを見上げた。  


((……物理の法則が……俺様の存在意義が……粉々だ……。なんだ今の……指先から大陸一個分の質量が飛んできたぞ……))


「あの、本当に大丈夫ですか?……あ、お詫びにこれ、畑で取れたトマトです。食べますか?」


「……た、食べる……。……アルド様、あんた……あんたこそが、俺様の目指すべき『本物の壁』だ……!世界は広いなぁ!こんな強いやつがいたなんて!!」


 ゴルドは涙を流しながら、アルドの強さに完敗を認めた。  


それを見ていたゼクスとシオンは、遠くで深く溜息をつく。


「……また一人、犠牲者が増えたでござるな」


「クク……。だから言ったでしょう。あの御前では、我々の常識など無意味だと」


 境界の村に、また一人「アルド信者」が増えた。  

そしてカイルは、曲がったミスリル剣を見つめながら、「お兄さんの『少し』は、山を貫くんだな……」と新たな真理に辿り着くのだった。



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