表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/59

第21話:後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件

龍皇の肉体から溢れ出したドス黒い影が、空を覆い尽くす巨大な異形へと膨れ上がる。


実体化した邪神は、もはや一つの生物というより、世界を飲み込む災厄そのものだった。


「ひ……ははは! 壊せ、喰らえ! 全てを無に帰してくれようッ!」


 邪神の咆哮が大地を震わせ、その触手がカイルへと振り下ろされる。


だが、その一撃が届くよりも早く、黄金の閃光がカイルを包み込んだ。


「……えっ?」


 カイルが気づいた時には、彼はすでに数百メートル後方の、ミラたちの隣に立っていた。


目の前には、いつの間に移動したのか、カイルを抱えていたはずのアルドが静かに背を向けて立っている。


「みんな、下がっていて。……ここからは少し、危ないから」


 アルドはそう言うと、ゆっくりと邪神に向かって歩き出した。


「アルド殿、お一人で!? 無茶よ!」


ベラドンナが叫ぶが、ミラはそれを手で制した。


彼女の瞳には、確信と、そして僅かな戦慄が宿っていた。


 アルドは腰に差していた、無骨な、しかし手入れの行き届いた一振りの剣――**聖剣『星凪ほしなぎ』**を抜き放った。


「カイル、よく見ていて。オーラソードっていうのはね、ただ魔力を出すんじゃない。こうして、密度を高めて『形』を整えるんだ」


 アルドが剣を構えた瞬間、世界が沈黙した。


 彼を中心に溢れ出した黄金の魔力は、カイルのそれとは比較にならないほど濃密で、鋭い。


剣の周りに形成された光の刃は、あまりの魔力密度ゆえに、周囲の空間を物理的に歪め、パチパチと神罰のような火花を散らしている。


「……すげぇ……。なんだよ、あの密度……。お兄さん、本当に人間なのか……?」


 カイルが感嘆の声を漏らし、オーラソードの真実に打ち震える。


「馬鹿な……。あのような魔力の凝縮、理論上不可能です! 空間そのものが悲鳴を上げている……!」


 ゼクスが魔力演算の限界を超えて驚愕し、シオンはただ、憧憬の眼差しでその背中を見つめていた。


 邪神は本能的な恐怖に駆られ、ありったけの呪いを込めた極大の消滅波を放った。


「基本の型が大事なんだよ、カイル。……薪割りの時を思い出して……。足腰を据えて、狙いを定めて……こう!」


 アルドが、ただ真っ直ぐに剣を振り下ろした。


 それは、彼が毎日庭で行っている「薪割り」と全く同じ動作だった。


 ――断ッ。


 音すらなかった。


 黄金の一閃が空を両断し、邪神が放った呪いも、その巨大な肉体も、背後の暗雲すらも一瞬で消し飛ばした。


「バ、バカなァァァァァッ!! この我が、ただの『村人』ごときにィィィーッ!!」


 邪神の断末魔が響き、その存在は塵一つ残さず完全に消滅した。


 後に残ったのは、雲一つない、透き通るような秋の青空だけだった。


「……よし、おしまい。……あ、龍皇さんも、悪いのが抜けて眠ってるだけみたいだね。ミラさん、後で介抱してあげて」


 アルドは『星凪』を鞘に納めると、何事もなかったかのように腕組みをして、カイルたちに微笑みかけた。


「どうかな、カイル。コツは掴めたかい?」


「……お兄さん、コツっていうレベルじゃないよ……」


 カイルは力なく笑い、オーラソードの到達点を知って、改めてアルドという存在の大きさを噛み締めた。


「結局、アルド殿にはことわりも何もかも関係ありませんね……。我々の苦労は何だったのか」


 ゼクスが呆れたように頭を振ると、一同の間にようやく、温かな笑いが漏れた。


 数時間後。


ログハウスの食卓には、いつものように賑やかな声が響いていた。


テーブルにはアルド特製の野菜シチューと、焼きたてのパンが並んでいる。


「やっぱり、みんなで食べる夕飯が一番だね」


 アルドが笑い、カイルは「次は俺が薪を割るよ」と張り切り、リナは南の国での出来事を思い出しながら、少し顔を赤くしてシチューを運ぶ。


 北の聖域。


 そこには今日も、世界最強の剣聖が守り抜いた、かけがえのない「日常」が流れていた。



もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ