表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/56

第20話:勇者の背中、聖域の絆

瓦礫の山となった地平の先で、アルドはついにその巨躯を見つけ出した。


 オーガキングとしての誇り高き角は折れ、腹部に巨大な風穴を開けられたゴルドは、魔力を使い果たし、人間の姿で物言わぬ岩塊のように横たわっていた。


「……酷いな。でも、間に合ってよかった」


 アルドは腰に下げていた水筒を取り出した。


中身は、今朝アルドが「傷に効く薬草茶」として煎じてきたもの――その実体は、死者すら蘇生させる神霊薬エリクサーである。


「ゴルドさん、飲めるかい?」


 アルドがその琥珀色の液体をゴルドの口に流し込む。


 瞬間、ゴルドの全身から凄まじい生命力が噴出した。


見る間に腹の穴が肉で埋まっていく。


「……う、うう。……アルド殿……?」


 意識を取り戻したゴルドが、霞む視界でアルドの顔を捉えた。


己の不甲斐なさを悟り、強面の顔を歪める。


「申し訳ねぇ……俺様としたことが……みんなを……お守りできず……」


「大丈夫ですよ。今はゆっくりしてください」


 アルドは優しく微笑むと、自分より二回りも大きいゴルドを軽々と背負い、一歩踏み出した。


その足取りは、巨大な山を運んでいるとは思えないほど軽やかだった。


 戦場へ戻ると、そこは修羅場だった。


 ミラと、満身創痍のゼクス、ベラドンナが、リナと共にシオンの周囲を囲んでいる。


シオンの呼吸は浅く、魂の火が今にも消えそうだった。


「アルド様、ゴルドを……! 良かった……」


 ミラの安堵も束の間、シオンの容態を見て顔を曇らせる。


「ミラさん、気休めかもしれませんが、このお茶も飲ませてあげてください」


 手渡された水筒を開けた瞬間、ゼクスの眼窩の奥の火が激しく揺れた。


(……なんだ、この芳醇な生命の奔流は。茶、だと? 莫迦な、これは神話にのみ記される――)


 ゼクスは言葉を飲み込み、即座にシオンの口へ運んだ。


液体が喉を通った瞬間、シオンの顔に赤みが差し、致命傷だった傷口が眩い光と共に完全に塞がった。


九死に一生を得たのだ。


「……ふぅ。これで一安心ですね」


 アルドは安堵の溜息をつき、その視線を「戦場」へと向けた。


 そこでは、覚醒した勇者が、まさに「伝説」を体現していた。


「――おおぉぉりゃあああああッ!!」


 カイルの声が響く。


その手にある『真説・黒曜』は、眩いオーラの刃を伸ばし、龍皇の漆黒の爪を真っ向から切り飛ばしていた。


「俺だって……いつまでも守られてばかりじゃないんだッ!!」


 カイルは、勇者としての自覚を叫びに込め、猛攻を仕掛ける。


リナの聖なる祈りが邪神の力を削ぎ、カイルのオーラソードがその隙を逃さず肉薄する。


「アルド様、助けに入らなくてよろしいのですか?」


 隣に立ったミラが、心配そうに尋ねる。


アルドは腕を組み、静かな、けれど温かい眼差しでカイルの背中を見つめていた。


「カイルに任せてみようと思います。あの子は、自分でも気づかないうちにずっと強くなっていた。……本当にまずくなったら、俺が助けに行きます。でも今は、あの子の『勇気』を信じたいんだ」


 アルドは敢えて動かなかった。


それが、成長しようとする「弟」への一番の信頼だと知っているからだ。


 龍皇――否、彼に憑依した邪神が焦燥に駆られる。


「小癪なァ! 人間ごときがァッ!!」


放たれた極大の闇のブレス。


だが、カイルは逃げなかった。


「みんなが守ってきたこの場所を、俺が汚させないッ!! 喰らえ!!」


 オーラソードが巨大な光の柱と化し、闇を真っ二つに裂いた。


 光の軌跡が龍皇の胸部へと突き刺さる。


カイルの全身全霊を込めた突きが、ついに龍皇の腹部を貫通した。


「……がはっ……ぁ……」


 龍皇の動きが止まる。


瘴気が霧散し、勝利は決した――。


誰もが、そう確信した。


 だが、カイルの剣が貫いたその傷口から、血ではない「どす黒い何か」が、噴水のように溢れ出した。


「カイル、離れてッ!!」


 アルドの鋭い声が飛ぶ。


 龍皇の肉体が泥のように崩れ始め、その背後から、山の如き巨大な、実体を持った『邪神』が姿を現し始めたのだ。

 

「……クク、ハハハハ……!! 器(龍皇)が壊れるならば、この地を直接喰らうまでよ……!!」


 物語は、勇者の勝利という幕引きを拒絶し、真の絶望へと変貌を遂げようとしていた。



もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ