表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/55

第15話:絶対君主、聖域への降臨

北の聖域、アイゼンベルク辺境伯邸。


 穏やかな陽光が降り注ぐ中、突如として空間が歪み、世界の色が失われたかのような異様な静寂が訪れた。


 次いで、漆黒の礼装に血のような真紅のマントを翻し、一人の男がゆっくりと地面に降り立った。


彼の立つ場所だけ周囲の空気が凝固し、重力すら増したかのように錯覚させる。


 西の魔王、龍皇。


 その人間離れした、しかし完全無欠の美しい顔には、微細な感情の揺れすら見られない。


ただその瞳だけが、この世界のことわりの全てを見通すかのように深淵な輝きを放っていた。


「……何者だ!」


 真っ先に反応したのは、異変に気づいて駆けつけた四天王たちだった。


 ゴルドが巨斧を構え、ベラドンナが極彩色の魔力を指先に灯し、ゼクスが眼鏡を押し上げながら警戒態勢に入る。


そして、シオンは無言のまま、抜刀寸前の構えで龍皇を睨みつけていた。


彼らが自然と前に出たのは、ミラを守るため。


そして、その背後で腕組みをしている、アルドを守るためだった。


「……龍皇」


 ミラの唇から、微かな声が漏れる。


かつて恐怖で従っていたはずの龍皇の圧倒的な「存在感」が、彼女の知るそれとは全く異なるレベルで、自分たちの愛する日常を侵食しようとしているのを悟っていた。


 広間の隅で、カイルは激しい息苦しさを覚えていた。


全身の血が逆流し、心臓が警鐘を打ち鳴らす。


だが、彼の腰に佩いた魔剣「黒曜」は、この未曾有の強者を前に、かつてないほど淡い光を放ち始めていた。


魔剣の特性か、強者への歓喜に震えているのだ。


 隣のリナは、脂汗を流し、その場に膝をついていた。


聖女としての膨大な魔力と感受性が、龍皇の放つ圧力をそのまま肌で受け止め、肉体が拒絶反応を起こしていた。


 そんな中、龍皇は微動だにせず、ただ静かに四天王たちを見据える。


「……ほう。なるほど。貴様らが護りたかった『家族』とは、このような光景を指すか」


 龍皇の視線が、一瞬だけ四天王の背後にいるアルドに向けられた。


だが、アルドは相変わらず腕組みをしたまま、何の表情も変えずに龍皇を見つめている。


「挨拶が遅れたな。余は龍皇。西の大地を統べる者。今日は、貴様らに伝えに来た。間もなく、この北の地は余が統べる領土となる。その前に、貴様らが何を守り、何を糧として戦うのか、この目で確かめたかったのだ」


 龍皇の言葉が、ゆっくりと、しかし確実な破壊力を持って四天王たちの胸中に突き刺さる。


「……不遜なッ!」


 堪えきれなかったのは、シオンだった。


彼女は、武神ヴァルガスを介錯した時よりも速く、光の一閃となって龍皇へと肉薄した。


「――『極意・無間一閃』!!」


 空間すら切り裂く神速の抜刀術。


だが、龍皇はそれを、何の感情も込めない表情のまま、親指と人差し指の二本で、容易く止めた。


 キン、と高い金属音が響く。


シオンの刀身は、龍皇の指先一つで寸分も動かない。


まるで、絶対的な壁に突き当たったかのように、その刀身が僅かに軋む。


「……急くな、小娘。今日は挨拶にきただけだ」


 龍皇はシオンの刀から指を離すと、ゆっくりと宙へと浮かび上がる。


「貴様らが護るその幻想が、余という絶対を前に、どこまで抗えるか。また近いうちにまみえることになるだろう」


 龍皇の姿が空間の彼方へと消え、広間には重い静寂が残された。


シオンは硬直が解けず膝から崩れ落ち、カイルは荒い息を吐き、リナは恐怖で震えていた。


誰もが、その絶望的なまでの実力差に言葉を失っていた、その時。


 それまで沈黙を守っていたアルドが、ゆっくりと腕組みを解き、一歩前へ出た。


 その瞳には、いつもの穏やかさはなく、静かな、けれど底の知れない冷徹な光が宿っていた。


「……ミラさん。ああいう『招かれざる客』には、次はもう少し厳しく対応しないといけないね」


 その声は低く、しかし震えるカイルたちの心を一瞬で鎮めるほどに、絶対的な力を持っていた。


アルドが龍皇の去った空を睨むと、彼を中心に、一瞬だけ「世界の色」が塗り変わるほどの魔圧が爆ぜた。


北の大地を包んでいた不吉な冷気が、霧散した。



もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ