表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
2章 北限の聖域

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/59

第10話:夢魔の毒、冥龍の罠

北の国境、深い霧に包まれた静寂の森。  


そこは、足を踏み入れた者の感覚を狂わせる「迷いの森」としても知られていた。


その霧の深淵に、一人の女が優雅に佇んでいる。


 北の魔王軍四天王『夢幻将』ベラドンナ。  


紫のロングヘアを夜風になびかせ、彼女はアルドから贈られた世界樹のお守りを指先で転がした。


「ウフフ、ワタシ、あんなに心配されちゃったら……いつもより少し、張り切っちゃうわ」


 その時、森の霧が急激に色を変えた。


白から不吉な紫黒へと。  


地を這うような冷気と共に、影の中から冥龍将ハデスが姿を現す。


彼はガルドスのような巨体ではないが、その存在自体が「死」を象徴するような悍ましさを放っていた。


「……夢魔の四天王か。ガルドスのような脳筋が敗れたのは想定内だが、貴様のような女が我が術を止められると思うな」


 ハデスが杖を振ると、森の木々が瞬時に枯れ果て、地面から無数の亡者の腕が這い出してきた。


「『冥府葬送・魂の檻』。貴様の精神をバラバラに引き裂き、龍皇様への貢物にしてくれよう」


 亡者たちが放つ呪詛の言葉が、精神を蝕む波となってベラドンナを襲う。


だが、彼女は怯えるどころか、艶やかな唇を吊り上げた。


「あら、そんな古臭い呪いでワタシを揺さぶるつもり? アルド殿の淹れてくれるハーブティーの方が、よっぽど体に刺激的ホットだわ」


「何……!? 精神防御もなしに、我が呪詛を無効化しただと!?」


「無効化したんじゃないわ。ワタシの『愛』が、あんたの毒を上回っているだけよ」


 ベラドンナが指先で宙を撫でると、彼女の周囲に極彩色の蝶が舞い始めた。


「『万毒葬送・紫煙の檻』。……さあ、冥府の王様。どちらの『悪夢』が深いか、試してみましょうか?」


 森全体を覆っていた死の霧が、一瞬にしてベラドンナの毒霧に飲み込まれていく。  


ハデスは慌てて障壁を張ろうとしたが、彼の感覚はすでに狂い始めていた。


地面が空に見え、自分が放った亡者たちが愛しい家族の顔に見える。


精神に直接作用するベラドンナの魅了と毒が、龍の精神耐性すらも容易に貫いていた。


「な、なんだ……!? 身体が動かん、魔力が……逆流する……!!」


「ウフフ、可哀想に。あんたの術は、誰かを絶望させるためのもの。でも、ワタシの術は、みんなとの幸せな日常を守るためのものなの。……想いの重さが、違うのよ」


 ベラドンナが瞳を怪しく光らせると、ハデスの背後に巨大な「夢魔の口」が具現化した。


「アルド殿に『怪我をするな』って言われちゃったから。あんたみたいな不潔な影は、一滴も残さず、ワタシの毒で溶かしてあげる」


「ぎ、ぎあぁぁぁぁぁっ!!」


 悲鳴を上げるハデスを、紫の霧が包み込む。


 彼は死ぬことすら許されず、終わりのない「自らが焼かれる悪夢」の中に閉じ込められ、その魔力を根こそぎ吸い取られていった。


 数分後。


 霧が晴れた森には、煤一つ残っていなかった。  


ベラドンナは乱れた髪を整えると、お守りを大切そうに服の中に仕舞い、いつもの優しいお姉さんの表情に戻る。


「さて、お掃除完了。早く帰って、リナちゃんに新しい刺繍を教えてあげなくちゃ」


 『夢幻将』は、鼻歌を歌いながら軽やかな足取りで聖域へと戻っていく。  


彼女の歩いた後には、枯れ果てていたはずの木々が、なぜか春のような瑞々しさを取り戻していた。



もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ