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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第1章 勇者と聖女

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第21話:至高の称号と「ただの村人」

東の魔王連合軍を退け、王都に凱旋したアルド一行を待っていたのは、割れんばかりの歓声と、国を挙げた最大級の式典だった。  


謁見の間。国王は震える手で、黄金に輝く「剣聖」の紋章が刻まれたメダルを捧げ持ち、アルドの前に立った。


「アルド殿。貴殿の振るった剣は、もはや人の域を超え、神の領域に達していた。……我が国に伝わる最高位の称号、歴史上空位であった『剣聖』の名を、貴殿に贈りたい。さらに、公爵の地位と広大な領地を――」


 並み居る貴族たちが、嫉妬と畏怖が混ざった眼差しでアルドを見つめる。誰もが、彼がその栄誉を享受し、王都の頂点に立つものだと確信していた。  


だが、アルドは困ったように眉を下げ、いつものように穏やかに首を振った。


「お気持ちは嬉しいのですが、陛下。……辞退させてください。俺はただ、あの子たちを見守りたかっただけですから」


「な……な、何だと!? 『剣聖』の称号を、公爵の地位を捨てるというのか!?」


「はい。平和になったのなら、俺たちは村に帰ります。……村の畑、雑草がすごいことになってるはずなんです。肥料も撒かなきゃいけないし、村人も結構忙しいんですよ?」


 人生が変わる分水嶺だというのに、アルドは本気で「畑の雑草」を心配していた。そのあまりの無欲さに、国王は口をパクパクとさせて言葉を失う。すると、隣にいたカイルとリナが、顔を見合わせて明るい声を上げた。


「俺も早く帰りたいな! お兄さんの手伝いしなきゃ」


「私も! 久しぶりにお兄さんのお茶を飲んで、ゆっくり寝たいわ」


 王国を救った勇者と聖女までもが、王都の華やかな生活より「村の日常」を選んだ。  


そんな二人を見つめ、後ろに控えていた四天王たちも、それぞれの口調で満足げに言葉を交わす。


「……フフ。名誉という不確かな変数よりも、村の静寂という定数。アルド殿らしい選択です。……さて、私も溜まった書物の整理を始めなくては」  


ゼクスが眼鏡を上げ、帰郷への準備を告げる。


それがしも、あの村の裏山で再び薪を割りたいでござる。王都の風は、少々騒がしすぎた」  


シオンが愛刀を抱き、安堵の表情を見せる。


「ガハハ! 勲章なんて腹の足しにもならねえからな! 俺様は村に戻って、美味い飯を腹一杯食うぜ!」  


ゴルドが豪快に笑い、玉座の権威を笑い飛ばす。


「ワタシ、あの村に咲く薬草が恋しいですわ。……さあ、リナちゃん、帰り支度をしましょうね?」  


ベラドンナが優雅に扇を揺らし、愛弟子の手を取って微笑んだ。


 ミラは、アルドの隣に立ち、国王へ向かって優雅なカーテシーを見せた。


「……そういうわけですわ、陛下。ワタクシたちアイゼンベルク辺境伯家も、領地であるあの村へ戻らせていただきますわ。……それでは、ごきげんよう」


 唖然とする国王と貴族たちを置き去りにし、アルド一行は風のように謁見の間を去っていった。  


王宮の門を出た瞬間、アルドは空を仰いで大きく伸びをする。


「さあ、みんな、帰ろうか。今日の夕飯は奮発して、王都で買ったいいお肉を使おう!」


「「「おー!!」」」


 最強の剣聖、最強の魔王、最強の四天王。  


伝説に名を刻むべき者たちは、今やただの「家族」として、夕日に染まる境界の村を目指して歩き出した。    

英雄の物語は終わった。  


そして、騒がしくも温かい、彼らの「日常」が再び始まろうとしていた。



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