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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第1章 勇者と聖女

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第11話:王都からの使者、教会の神託

その日は、一通の仰々しい親書を携えた、王国の使節団が村を訪れるところから始まった。  


村の広場に鳴り響くファンファーレ。着飾った騎士たちと、豪華な馬車。


「神託が下った! この境界の村に、世界を救う『勇者』と『聖女』の資質を持つ者がいると! カイル殿、リナ殿。速やかに王都へ参り、王に謁見せよ!」


 使者の宣言に、村中がざわめく。


だが、当の本人たちは、アルドの後ろに隠れて露骨に嫌そうな顔をしていた。


「……えー。俺、行きたくない。ここでアルドお兄さんと薪割りしてる方が楽しいもん」


「私も。お兄さんのいない王都なんて、ただのうるさい場所だわ」


 十五歳になり、伝説の魔王たちすら凌駕する力を秘めた二人は、今や王都の栄華などよりも、アルドの修行の日々に価値を見出していた。


アルドは困ったように微笑み、二人の頭を撫でる。


「こら、二人とも。せっかく王様が呼んでくれてるんだよ? ……じゃあ、条件だ。俺も付き添いとして一緒に行く。それならいいかい?」


「やったー! それなら行く!」

「お兄さんと一緒なら、私も行くわ!」


 アルドの提案に二人は即答したが、困ったのは使節団だ。


「一般人の同行など前例が――」と言いかけたその時。


いつものようにミラが四天王を従えて現れた。


「あら、それならワタクシたちも同行しますわ、アルド様。アイゼンベルク辺境伯家として、皆様の後見人を務めさせていただきますわ」


「は? ……あ、アイゼンベルク辺境伯? 失礼ながら、我が国にそのような家名は……」


 使者が不審げに首を傾げた瞬間。


ミラの瞳が妖しく真紅に煌めいた。  


魔王の権能――絶対魅了チャーム


「……いいえ、存在しますわ。この北の大地を古くから守護する、高貴なるアイゼンベルク家。……そうですわね?」


「……あ、ああ……。そうだ、思い出した。アイゼンベルク辺境伯爵家……。王国の盾たる名門中の名門……。ミラ様がそう仰るなら、何も問題はございません!」


 ミラの言葉が、使者たちの脳内で「絶対の真実」として書き換えられた。


四天王たちは「流石はミラ様、相変わらず手際が良い」と言わんばかりの涼しい顔で控えている。


「ミラさん、お知り合いだったんですか? 助かりました、ありがとうございます」


「ふふ、ちょっとした顔見知りですわ、アルド様」


 ミラの嘘にアルドは純粋に感謝し、そのまま旅行の準備へと移った。


だが、使節団の騎士が不安げに「村の守りは……」と問いかける。


「……案じることはありませんわ。ワタクシの家の庭師や門番たちを数十名、ここに駐屯させます。彼らがいれば、いかなる災厄もこの村の土を踏むことは許しませんわ」


 ミラが指を鳴らすと、影から数名の「庭師」が現れた。彼らは四天王直属の部下――他国の領地では『公爵級』の強さを誇る怪物たちだ。


そんな彼らが、ただの農村の草むしりと魔物除けのために配置された。


「……ガハハ! おいお前ら、アルド殿の大事な村だ。蟻一匹通すんじゃねえぞ!」


「ハッ! 命に代えましても!」


 世界最高の防衛線を村に敷き、アルドは「それじゃあ、万全の準備をしないと。」と、旅支度を始めた。


「よし、カイル、リナ。お勤めを果たしに行こうか。」


 こうして、世界を救うはずの「勇者」と「聖女」、彼らを導く「最強のお兄さん」、正体を偽装した「魔王」、そして「四天王」という、人類史上最も危険な一行が王都へ向けて出発した。  


後に『史上最強の剣聖』と呼ばれることになる男の、これが始まりであった。



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