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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第1章 勇者と聖女

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第10話:魔王城会議

北の大地を統べる魔王城。


その最深部にある作戦室では、緊密な空気が張り詰めていた。


 中央に座すのは、氷のドレスを纏った美しき魔王・ミラ。


そしてその周囲を、この五年間で「異常な変貌」を遂げた四天王が囲んでいる。


「……定例会議を始めますわ。各々、この数年での『成果』を報告なさい」


 ミラの言葉に応じ、まず軍師ゼクスが眼鏡を上げ、静かに口を開いた。


「私は、アルド殿の魔力循環理論を数式化し、自身の術式に組み込みました。結果、従来の三倍の演算速度と、消費魔力九割減を達成。……もはや、近隣諸国の魔導師団を一人で無力化する程度なら、瞬き一つで十分かと」  


ゼクスは、アルドの「水汲みの所作」から、魔力を停滞させずに極小の負荷で回し続ける極意を盗んでいた。


その実力は、既に他国の「老魔王」に匹敵する演算能力に達している。


 次に、剣姫シオンが愛刀を抱き、凛とした声で続く。


それがしは、マスター(アルド)の薪割りを二十四万回観察し、その『すじ』を剣技に写しました。


一振りに込める魔力刃の密度を分子レベルで凝縮したことで、今は……そう、伝説の神銀オリハルコンですら、薪のように割ることが可能でござる」  


シオンはアルドの手刀から「抵抗をゼロにする断ち切り」を学び、純粋な攻撃力において旧来の四天王の枠を完全に踏み越えていた。


 続いて、剛腕のゴルドが鼻を鳴らし、巨大な拳を合わせた。


「ガハハ! 俺様はアルド殿に吹っ飛ばされるたび、あの『指先の衝撃』を身体強化で再現しようと試行錯誤した。今じゃあ、ドラゴンの突進なんざ蚊が止まった程度にしか感じねえ! 全身が常時、ミスリル鉱山より硬え自信があるぜ!」  


アルドの「軽く押しただけ」の圧力を身を以て体験し続けたことで、ゴルドの守備力は、城塞一つ分を遥かに凌駕する金剛の域へ至っていた。


 最後に、ベラドンナが優雅に扇を広げる。


「ワタシは、アルド様の『アク抜き』から、物質の毒性と有益性を一瞬で置換する術理を学びましたわ。ワタシの呪いは今や、死を与えるだけでなく、対象の魂そのものを強制的に再定義しますの。……ふふ、リナちゃんの教育にも、良いスパイスになっていますわよ」


 報告を一通り聞いたミラは、深く頷いた。


「見事ですわ。貴方たち四人だけで、既に他大陸の魔王軍を各個撃破できるほどの戦力……。他国の魔王たちが我が領土を狙っているという噂もありますが、これならば安心ですわね」


 ミラ自身もまた、アルドの淹れるお茶や日常の所作から、その深淵な理を最も近くで学び取っていた。


彼女の魔力は、今や北大陸を永遠の冬に変えるほどに研ぎ澄まされており、四天王を合算しても届かぬ頂点に君臨している。


「全ては、アルド様という御方に出会えた幸運。……ですが、決して忘れないように。アナタたち四天王がこれほどの力を得たのは、あくまでアイゼンベルク家の『使用人』として、アルド様の平和な日常を守るためであることを」


「「「「御意!!」」」」


 四天王の返声が、重厚な作戦室に響き渡る。  


他国の魔王や人間界の王がこの場にいれば、卒倒したに違いない。  


世界を滅ぼしかねない最強の軍団が、一人の「純朴な青年」の平穏を守るためだけに、その牙を極限まで研ぎ澄ませているのだから。


「……さて。会議は終わりです。アルド様が、夕飯に美味しいシチューを作って待っているそうですわ。……遅れたら、承知しませんことよ?」


 ミラのその一言で、世界最強の会議は、最速の「帰宅競争」へと変わった。



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