第1話:辺境の青年、王都で二人の星を拾う
初めまして、ご覧いただきありがとうございます。 本作は、自分が最強だと気づいていない純朴な青年と、彼を慕うことになった少し訳アリな家族たちの日常と無双を描く物語です。
北の大陸、魔界と人間界の境界に位置する「境界の村」。
二十二歳の青年アルドは、村一番の働き者として穏やかな日々を過ごしていた。
「……ふぅ。やっぱり都会の空気は、俺には少し重いな」
王都の雑踏の中、アルドは所在なげに肩をすくめた。
彼は自分が人より「少しばかり頑丈で、力が強い」ことを自覚している。
村を襲う大型の魔獣を薪割り用の斧で仕留めるたび、その手応えから、自分が並の兵士よりは遥かに強いことも理解していた。
だが、都会の喧騒や権力争いといった目に見えない「複雑なもの」には、どうしても馴染めそうになかった。
仕留めたドラゴンの素材を換金し、冬を越すための買い出しを終えたアルドは、早々に村へ帰ろうと路地裏を抜ける。
そこで彼は、世界に見捨てられたような二つの命を見つけた。
ゴミ溜めの傍ら、泥にまみれ、凍える体で身を寄せ合う二人の子供。
銀髪の少年と、金髪の少女。
共に十歳ほどに見えるが、その瞳からは生きる希望が失われかけていた。
「……君たち、こんなところで何を」
アルドが歩み寄ると、少年――カイルが、少女――リナを庇うように立ち塞がった。
その手には、震える小さなナイフ。
「近寄るな!!」
カイルの瞳は、傷ついた獣のように鋭く、そして悲しいほどに脆かった。
アルドは、かつてドラゴンを仕留めた時のような威圧を完全に消し、穏やかな顔で腰を落とした。
「……一人で妹を守ってきたんだね。立派な覚悟だ。でも、君のその瞳は、もう限界だと悲鳴を上げているよ」
「っ……!? お、お前に何がわかる!」
「わからないよ。でも、君がもう限界なのはわかる。……俺はまだ二十二で、親と呼ぶには未熟だけど。……俺の家は、ここよりずっと暖かい。……どうだい。俺と一緒に来るかい?」
アルドは、カイルの持つナイフをそっと素手で握った。
鋼の刃がアルドの皮膚に触れても、傷一つ付かない。カイルは目を見開いた。
「そのナイフは、誰かを傷つけるためじゃなく、大切なものを守るために使いな。……俺が、その方法を教えてあげる」
アルドから溢れる魔力があまりに温かく、そして圧倒的に「正しかった」からこそ、カイルは力無くナイフを落とし涙を流した。
絶望しか知らなかった子供たちが、初めて「安心」とはこういうことだと知ったのだ。
アルドは、その重みを両腕に感じながら、彼らを背負って雪の降り始めた王都を後にした。
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