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追放された悪役令嬢は、辺境の村で美食の楽園を創り、やがて王国の胃袋を掴むことになる  作者: 緋村ルナ


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第5章:ルミエール村の小さな光。「エリアーナの台所」開店!

 エリアーナの畑で育った珍しい野菜と、それをシンプルながらも驚くほど美味しく調理されたスープは、ルミエール村の人々に衝撃を与えた。

 特にミリア婆さんは、目を丸くして言った。「エリアーナ、お前さんの料理は、まるで魔法のようだね。こんな温かい気持ちになったのは、何年ぶりだろうか」

 その言葉に、エリアーナは胸が熱くなった。


 初収穫で得たわずかな作物と、それを村人に振る舞うことで得た信頼。それがエリアーナに、次のステップへの勇気を与えた。

「私、この屋敷の一部を改装して、小さな食堂を開きたいんです」

 彼女がカインにそう告げると、彼は眉をひそめた。

「食堂、だと? こんな貧しい村で、誰が金を出して飯を食うんだ」

「はい。しかし、これまでの村にはない、珍しい料理を出せば、きっと皆さん、興味を持ってくださると思うんです。それに、ここでしか食べられないものなら、きっと、遠くからでも人が来てくださるはず」

 エリアーナの瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。彼女の熱意に、カインは何も言わなかったが、その視線は以前のように冷たいものではなかった。


 エリアーナは、さっそく行動を開始した。

 廃屋の中で比較的状態の良い一角を選び、自らの手で修理を始めた。歪んだ床板を直したり、雨漏りする屋根を塞いだり。できることは自分でやり、足りない材料は、僅かな私財を使い、カインに頼んで村の外から運んでもらった。ミリア婆さんやリリーも、少しずつ手伝ってくれるようになった。特にリリーは、エリアーナの真似をして床を拭いたり、料理の仕込みを手伝ったりと、好奇心旺盛な手助けをしてくれた。


 そして数週間後。

「エリアーナの台所」と名付けられた小さな食堂が、ルミエール村の片隅に、ひっそりと開店した。

 店の入り口には、エリアーナが大切に育てた花が飾られ、素朴ながらも温かい雰囲気を醸し出している。

 メニューは、エリアーナが自分で育てた旬の野菜と、ルミエール村の猟師が獲ってきた獣肉や、小川で採れる魚、そしてミリア婆さんが教えてくれた山菜など、地元で採れる新鮮な食材をふんだんに使ったものだった。

『野菜たっぷり健康スープ』、『森の恵みのグリルサラダ』、『素朴な根菜シチュー』。どの料理も、この世界では珍しい彩り豊かで、かつ栄養バランスも考えられたものだった。


 最初の客は、もちろん村人たちだった。

 皆、半信半疑の顔で店内に入ってきたが、エリアーナの出した料理を一口食べると、その表情は一変した。

「こ、これは……! ただの野菜が、こんなにも美味くなるなんて!」

「肉も魚も、今まで食べたことのない味付けだ……!」

 誰もが驚き、そして感動した。

 その噂は、あっという間に村中に広がり、小さな食堂は連日、村人たちで賑わうようになった。

 さらに、その絶品の味と珍しい野菜の噂は、口コミで近隣の村々にまで伝播し始めた。


「まさか、こんなに早く評判になるとはな……」

 ある日、食堂の様子を見に来たカインは、客の賑わいに目を丸くしていた。

 村に活気が戻ってきた。子供たちの笑顔が増え、大人たちも、エリアーナの料理を囲んで、楽しそうに談笑している。

「エリアーナ、貴様は……この村を変えたのかもしれない」

 カインが、ぽつりと呟いた。その声には、以前のような警戒心は完全に消え失せ、代わりに、エリアーナに対する確かな尊敬の念が宿っていた。

「まだ、始まったばかりです、カイン様」

 エリアーナは微笑んだ。その顔には、泥だらけになって働いた日々が作った薄い日焼けと、確かな自信が浮かんでいた。

 カインは、それから、エリアーナの食堂経営に、積極的に協力してくれるようになった。騎士としての知識を活かし、他村との交渉を手伝ったり、食材の仕入れルートを確保したり。時には、不審な人間が店に近づかないよう、用心棒役まで買って出てくれた。

「食」の力は、たった一人の公爵令嬢が荒野で始めたささやかな挑戦を、確かに村を変える大きな力に変えつつあった。

 ルミエール村の小さな光は、着実にその輝きを増していく。エリアーナは、ようやく、この世界で自分の居場所を見つけ始めた喜びを噛み締めていた。

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