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追放された悪役令嬢は、辺境の村で美食の楽園を創り、やがて王国の胃袋を掴むことになる  作者: 緋村ルナ


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番外編3:小さな足跡と未来の芽生え

「ママ、これ、食べてもいいの?」

 小さな男の子が、エリアーナが大切に育てた甘いベリーを指差して、つぶらな瞳で尋ねてきた。その隣には、彼より少し年下の女の子が、エリアーナのドレスの裾を引いている。

 エリアーナとカインの間には、愛らしい二人の子供が生まれていた。兄はカインに似て少し武骨だが優しいレオン(レオンハルト王子と同じ名だが、エリアーナは「強い獅子」という意味で名付けたかった)、妹はエリアーナに似て好奇心旺盛で明るいアイリス。


「いいわよ、レオン。でも、収穫が終わったらね。アイリスも、見てごらんなさい、このツヤツヤのベリー、甘くて美味しいわよ」

 エリアーナは、二人の子供の手を取り、共に畑の中を歩いた。子供たちは、エリアーナが身に着けている、土だらけのエプロンを物ともせず、楽しそうに畑の中を駆け回った。

 彼らは、いつもエリアーナの畑や、「エリアーナの台所」の厨房で遊んでいた。土の感触を覚え、育つ作物の生命力を肌で感じ、そして、様々な食材が美味しい料理へと姿を変える魔法のような光景を、ごく自然に見て育った。


 ある日、アイリスが厨房でエリアーナの真似をして、小さな木べらを握りしめていた。

「ママ、私も美味しいスープ作りたい!」

「あら、アイリスも? じゃあ、まずはこの野菜を洗うところからよ。美味しいものを作るには、食材を大切にすることが一番なの」

 エリアーナは、子供たちに「食」の尊さや、命の大切さを、言葉ではなく、日々の暮らしの中で教えていた。彼らが口にする全ての食材には、太陽の恵みがあり、土の滋養があり、そして人々の労苦が詰まっていることを。


 レオンは、カインに連れられて狩りに出かけることもあったが、エリアーナの畑仕事にも積極的に参加した。力仕事を手伝い、虫たちを観察し、やがてはエリアーナの助手として、土壌の状態を把握するようになっていた。

「パパ、この土、もう少し肥料がいるんじゃないかな」

 レオンの言葉に、カインは驚き、そして目を細めて微笑んだ。


 エリアーナは、自分の子供たちが、自分と同じように、土と食を愛する姿を見て、胸がいっぱいになった。彼女がルミエール村で築き上げたものは、単なる豊かな農業や、繁盛する食堂だけではなかった。それは、未来へ続く命の繋がりであり、次の世代へと受け継がれていく、確かな希望だった。


 夕暮れのルミエール村。子供たちの無邪気な笑い声が、畑の風に乗って響き渡る。

 エリアーナは、カインと共に、成長した子供たちの小さな足跡を見つめた。その足跡が、未来の豊かさへと繋がっていくのだと信じて。

 彼女が追放された日から始まった物語は、確かに、新たな命を育み、未来へと力強く続いていく。

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