第10章:絶体絶命の危機、暴かれる不正。私の選ぶ未来の道
レオンハルト王子とセレスティナによる妨害工作は、ついにピークに達した。ルミエール村は、流通の途絶と悪評によって、経済的に最大の危機に瀕する。店には客足が途絶え、収穫された作物は貯蔵するばかりで、行き場を失っていた。村人たちの表情は暗く、絶望の淵に立たされる者もいた。
「このままでは、村が……!」
ミリア婆さんの声にも、活気がなかった。リリーは、エリアーナの顔を不安げに見上げるばかりだ。
しかし、エリアーナは、諦めなかった。
「皆さん! まだ、終わりではありません! 私たちは、どんな困難も乗り越えてきました!」
彼女の言葉に、村人たちは顔を上げた。これまでのエリアーナの功績と、彼女の人柄を知る村人たちは、彼女の言葉を信じた。
「そうだ! エリアーナ様がいる限り、俺たちは負けない!」
「何があっても、エリアーナ様を裏切るものか!」
村人たちは、固い絆で結ばれ、エリアーナを全面的に支持し、共にこの困難に立ち向かうことを決意した。
その頃、カインは、命懸けの調査を行っていた。
エリアーナの予測した場所、そして自身の情報網を駆使し、彼はついに、レオンハルト王子とセレスティナが関わる不正の決定的な証拠を手に入れた。それは、貴族たちの不正な金銭の流れ、土地の不法な買い上げを指示した書類、そして、エリアーナを陥れるための偽証を依頼した証拠の数々だった。カインは、自身の身の危険も顧みず、王都の裏社会の人間や、かつての同僚の騎士たちと接触し、極秘裏に証拠を収集したのだ。
泥だらけになり、時には命の危機に晒されながらも、エリアーナの笑顔と、彼女がルミエール村にもたらした豊かさを思い出し、カインは決死の覚悟で挑んでいた。
「エリアーナ。これだ」
満身創痍の状態で戻ってきたカインが差し出したのは、厳重に封印された一つの包みだった。中には、レオンハルトとセレスティナの筆跡がある、彼らの罪を決定的にする数々の書類が収められていた。
「カイン様……本当に、ありがとうございます」
エリアーナの瞳には、涙が浮かんでいた。しかし、それは悲しみの涙ではない。深い感謝と、そして、今度こそ彼らを打ち倒すという決意の涙だった。
エリアーナは、その証拠を手に、カインと村の有力者と共に、はるばる王都へと向かった。
向かった先は、公爵家が取り次ぐ、王家直属の裁判機関。
エリアーナが提出した完璧な証拠は、まさに彼らを打つ鉄槌となった。彼女を陥れた策略の全てが白日の下に晒されることになったのだ。
エリアーナの無罪が証明されることは、もはや確実となった。
だが、その真実が明らかになったことで、新たな選択肢が彼女の前に突きつけられた。
王家から、ヴァレリア公爵令嬢としての地位と名誉の完全な回復が打診されたのだ。さらに、これまでの功績を讃え、王都への復帰を強く促された。
華やかな王都での生活。かつて失ったはずの、貴族としての輝かしい地位。
エリアーナは、その申し出に、深く考え込んだ。
ここまでの道のりは、本当に険しかった。泥にまみれ、汗を流し、時には涙を流した。村人たちと心を一つにし、カインと手を取り合って、数々の困難を乗り越えてきた。
王都での生活は、確かに何の不自由もない贅沢なものだろう。だが、ルミエール村での慎ましくも豊かな生活、そして、村人たちとの間に築いた、何よりも温かい絆。
どちらが、エリアーナが本当に望む人生なのだろうか。
彼女は、自分自身の心の声に耳を傾けた。そして、確かな答えを見つけた。
エリアーナは、大きな選択を迫られていた。この選択が、彼女の、そしてルミエール村の未来を決定づけることになるのだ。




