駆け落ち
事もあろうか?エルメスとの駆け落ちに同意してしまう。高位神の堕天を許す筈のない天界からの追手が遣わされた。メリルにとっては、最も苦手な相手であった。果たして逃げ切れるのか。
「だめでっ・・・す。それってエルメス様が12神から外れるって・・・事ですよね⁉︎そんなのダメですよぅ。」
エルメスが自分の力不足で天界を離れるなんてあってはならなかったのだ。
「たった一人の妻を幸せにする。その為に一生を捧げる神が一柱くらいいても良いだろう。嬉しくない?」
苦痛にの中でも頬を紅く染めて呟く。
「嬉しくないはず無いじゃないですか!・・・でもエルメス様の神格を落としてしまうくらいならこのままいなくなって仕舞いたいです。」
エルメスは更に追い詰める。
「メリル?君と2人だけで天界を出よう!」
エルメスの強い決心に絆されるメリル。
「わっ、私だってずっとエルメス様を独り占めしたいです。でも、エルメス様の神格が私のせいで堕とされるのだけは嫌です。」
「そんなに、私と駆け落ちするのはいやかい?」
「いやっ・・・では無いです。むしろ、エルメス様を独り占めしたいです。愛しています。だからこそ高位神のままでいて欲しい。」
「メリルは、高位神としての私が好きなの?」
メリルは、ハッとして黙り込む。
「・・・違います。エルメス様が神ではなかったとしても、エルメス様がエルメス様であれば愛せる自信があります。・・・分かりました。」
沢山の血液に塗れた顔を上げて、エルメスを見つめる。
「じゃ、もう十分に傷モノですけど返品は出来ませんが、それでも、良いですか?」
エルメスは、満面の笑みをたたえて宣言する。
「メリル?もう君は私のものだ。もう、離してあげないから覚悟して!」
「・・・はい。覚悟します。今から私の全てはあなたのモノです。」メリルは、苦痛と甘い陶酔の中、気を失った。
翌日、目を覚ますとメリルは、エルメスの背中に大事に背負われていた。
エルメスは、決して力も特別な体力がある訳ではない。それでも懸命に傷だらけのメリルの身体を背負い続けていた。
「気が付いた?大丈夫?何処か辛くない?」疲れを隠してエルメスは、優しく気遣う。
背中で苦痛に耐えるメリルは、静かに答える。「大丈夫です。でも自力では、移動するのは無理そうです・・・・・・ごめんなさい。」
メリルは、ナノマシンの感染によって何も出来ないほどの状態である。そんな役立たずをあえて背負って逃げてくれるエルメスの気持ちを考えると、『足手纏いになりたく無いから置いて行って欲しい。』とも言えないのだ。
「せめて身体強化だけでも付与しますね・・・」
「メリル!だめだ、少しでも魔力を使うと生命力が削られていくことが分かっているんだ。生命維持以外の目的で魔力は使うな!」珍しくエルメスが声を荒げる。
「はい・・・分かりました。」ただ手をこまねいて疲れの滲むエルメスを見護るしか出来ないメリルだった。
如何なる理由があっても、高位神の堕天を許す者はいない。神の秩序にも関わる問題である。
天界は、全ては眷属でありながらエルメスを誑かしたメリルに罪を背負わせる様に仕向けたのだ。
罪人メリルを殺して、エルメスを天界に連れ帰ると言うミッションが通達されたのだった。
そして、最初の追手はメリルをここまで追い詰めた功績を買われたヘパイストスの眷属、剣聖セリカであった。
本来ならGF以外で眷族同志の戦闘した罪を問われる立場だが、今回メリルの討伐を成功させる事によって免罪される予定なのだ。
満足な武器を持たないメリル。神器を自由に操るセリカと再戦を余儀無くされるのだ。
その残酷な時は、刻一刻と近づいていた。
いつも、投稿間隔が空いてすみません。ご閲覧お願いします。