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先祖返りの天使さま初陣

政略結婚の為に嫁いで来た白い翼を持った、魔法大国の皇女さま。愛する夫、エルメスの名誉の為に危険を顧みず戦場に赴く。

 遡る事、数百年前に最後の聖戦(神々と地上の全種族との覇権をかけた戦争)が起こった。


 聖戦は気の遠くなる程の過去から、その因縁を引き摺る呪われた魔法大国の皇族と神々の我儘がぶつかり合う形で起こってきた。


 神々は地上を汚した悪しき生き物としてヒト族を目の敵にし、弱き力無き者たちは生き絶え、飛び抜けた力を持ったヒト族だけが神々の侵攻を跳ね退けて戦の中で生き延びて来た。


 その生き残りはより強き力を持ち、気高くより美しき容姿で生き残った。


 其の皇族は、神から生き延びる為に、遺伝子交配・突然変異の誘発・異種間交配など非倫理的な行為を繰り返して力ある者を育成し続けてきたのだ。


 結果として健康に生まれて成長出来る子孫が極めて少なく、短命な者達や、奇形や障害を持って生まれてくる事が殆んどであったが、聖女と呼ばれる聖属性魔法を得意とする白魔導師達の活躍によって皇国は人口を増やして来たのだ。


 そんな無理を押しても継続してきた血統の中に特筆すべき歴史を重ねて来た皇族があった。


 それが最強の魔法大国と呼ばれたアンブロシア聖教国、王家であるカルバリオン家一族である。一族が率いるのは、世界最強の魔導師・戦聖女・賢者・魔剣士を数々生み出した他の追随を許さない魔導国家である。


 彼の国は過去に何度も大天使や高位の神族からの遺伝子を異種間交配して来た事実があった。


 そしてその最強遺伝子の特徴を生まれながらに発現して産まれた皇女がいた。


 それは、天使の姿をして生まれてきた可愛らしい女の子であり、何時か起こるであろう聖戦の救世主メルティアに因んで聖なる翼・セイントメリルと名付けられたのだった。


 



 15年後、その天使は政略結婚の相手として主神ゼウスの息子に当たるエルメスと婚約していたのだった。


 「メル?此方においで。」優しい声で呼び寄せる。


 天使は眩い光の羽衣を身に纏いエルメスの胸に飛び込む。


 エルメスは容姿淡麗にして、性格も穏やかで優しかった。何よりもメリルの美しさ、その卓越した能力を愛していた。


 一見幸せいっぱいに見える二人であるが実際には全く違っていた。


 祖国アンブロシアとしては、第一皇女であるメリルが高位神に嫁ぐ事によって次に起こるであろう聖戦を防ぐ意味合いに違いないのだが、神族にとってはそうでは無かった。


 或いはエルメスは違ったかも知れないが、神々の間ではガーディアンズファイトと言う各神族に属する眷族同士を競わせて自慢すると言う悪趣味なイベントが流行していた。


 それが、冗談抜きで危険かつ悪趣味極まりなかった。


 メリルは天使に先祖返りした稀有なスペックではあるが人族である。


 ガーディアン・眷族としての扱いなのである。そしてガーディアンズファイトの結果は主人としての神の格付けとなってしまうのだ。


 ガーディアンズファイトのルールは、格付けの低い神が何を競うのか目的を決めて上位の格付けの神の眷属が挑戦を受けるのだ。


 困った事に挑戦を断れば即負けたと判断され、属する神は降格される事になる。逃げる事は許され無いのだ。


 今まではエルメスに挑戦しようとする下位の神々はいなかったが遂にエルメスに挑戦状が届いた。


 相手はかなり下位の神らしく礼儀を弁えない挑戦者だった。


 神はアレカサリア、眷属は毒ヘビでの化身であるティエーネである。


 彼女の毒は、触れただけでも皮膚は爛れて腐敗してしまうほどの猛毒で咬まれれば高熱が続いて死ぬまで下がらないのだ。


 他にも毒を色々な形状で発射できるため回避は非可能と言われている。


 過去にも多くの問題を起こしてきた問題児でありこのガーディアンズファイト・GFが始まってから成り上がって来たのだ。


 エルメスは容姿や性格から神々から敵視される事はほとんど無かったが、悪い相手に絡まれた感じである。


 「元々GFにはメルを参加させるつもりは無かったんだ。出場は禁止だ!」


「いいえ!こんな蛇や毒に恐れを成したとなれば聖戦を制したと言われるアンブロシアの女王の名折れです。何よりエルメス様が私のために降格されるなんて我慢なりません。思い知らせてあげますわ!」


「万が一にも毒を受けるような事になったら直ぐに降参するんだよ。僕のことより君の事の方が大切なんだ。傷一つ負わないで欲しい。メルが傷つく事を考えると頭がおかしくなりそうだ・・・」


 「お任せください。一瞬で終わらせますから。」


明朝、初めてのGFが開始される予定だ。



旦那様の名誉の為に、ガーディアンズファイト初陣を飾ります。愛するのはエルメスさまだけ。絶対に負けません。

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