堕ちた星に与えられた、もう一度のチャンス。
第2章 ― 堕ちた星に与えられた、もう一度のチャンス。
あなたは、「生きる理由」が必要だと思う人ですか?
きっかけ、目標、運命――呼び方は何でもいい。
多くの人は、それがあるべきだと信じています。目的があるからこそ、前に進める。戦える。信じられる。
それとも、「そんなもの存在しないし、必要ない」と思う側ですか?
馬鹿らしいと思いますか?
でも、それも間違いではありません。人それぞれ、生き方は違います。まあ、少なくとも自分の生き方を選べる人はそうでしょう。
絵画を見て感じ方が人それぞれ違うように、世界の見え方も、感じ方も、意味の捉え方も違うのです。
そして「生きる理由」があると思っている人にとって、それは時に全てになる。
もしそれを失ったとしたら――もう、何をしていいのかわからなくなる。
虚しさに沈み、方向を見失う者もいれば……死を望む者すらいる。
それは、ある高校生の身に実際に起きたことでした。
彼の名前は――三ツ原ナオコ。
クラスの誰よりも野球を愛していた少年。
小学生の頃から情熱を持って練習し、努力を重ねてきた。
その才能と覚悟は皆に認められ、彼はすぐに注目の的となった。
「日本一になれる」と信じる周囲の声が、彼自身の夢を強く支えていた。
だが、その夢は全国大会の最後の試合で崩れ落ちた。
試合の終盤、相手チームの決定的な一打に対し、ナオコは全力で走り、ダイビングキャッチを試みた――
しかし彼は壁に激突し、胸部を強打。
その衝撃は脊髄にまで達した。
すぐに病院へ運ばれたが……希望はなかった。
診断は「下半身麻痺」。
腕と上半身には感覚が残っていたが、足は二度と動かなくなった。
彼の中にあったのは、怒りと絶望だけだった。
最も愛していたもの――夢、目的、生きる意味――それら全てを失った。
家族も、友人も、先生たちも励まそうとした。
だが、何を言われても響かない。
幼馴染の少女も、毎日放課後に見舞いに来て、学校の出来事を楽しそうに語ってくれた。
……だが、それが辛かった。
彼女の言葉も笑顔も、すべてが喪失の痛みを思い出させた。
だからある日、彼は言った。
「もう来ないでくれ」と。
少女は涙を流しながら、ただ悔しそうにその場を去った。
病室には、彼一人が残された。
繰り返し問い続ける。
――生きている意味なんて、あるのか?
やがて退院の日が来て、彼は車椅子の生活を始めることとなった。
母と共に帰路につくその途中、
悲劇が襲った。
酔っ払った運転手の車が正面から衝突してきたのだ。
母は重傷を負いながらも緊急搬送され、命は助かった。
だが、ナオコは――
助からなかった。
死亡が確認された。
皮肉なことに、彼はその瞬間――
死を望み続けたあの頃とは正反対の想いを抱いていた。
「生きたい」と。
「もう一度やり直したい」と。
こうして、三ツ原ナオコの人生は幕を下ろした。
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すべてが暗闇に包まれたそのとき――
どこからか、興奮した声が聞こえてきた。
そして徐々に視界が開け、彼は二人の人間を見た。
男。そして、汗だくで疲れ切っていながらも、心から嬉しそうに笑う女。
……そう。予想通りの展開だ。
彼は、新しく生まれ変わったのだ。
もう一度、人生のチャンスを与えられた。
新しい世界で。
新しい命として――