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生産性

作者: 空川 億里

 私は日本人なら大抵の者が名前を知っているトップレベルの国立大学を卒業し、その大学で教授になった。

 そして時の総理大臣のブレーンとして、ある新法の成立に加わったのだ。

 それは70歳以上の高齢者全員を強制的に死に至らしめるというものだった。

 これによって生産性のない70歳以上のヨボヨボの老人共は全員があの世に行き、少子高齢化が解決する妙案である。

 私は、これを「当然死」と名づけた。新法は「当然死法案」とネーミングされる。

 私の眼前にあるホロテレビにはニュース番組で流された、薬物注射で苦痛なく死んでゆくおいぼれ共の立体映像が映っていた。

 素晴らしい世界の到来だ。もはや用済みとなった年寄りが本人の意思と無関係に、あの世に行くのだから。

 中にはまだまだ健康で元気な老人もいたが、ロボポリスが70歳の誕生日を迎えた日本国民全員を、容赦なく連行してゆく。

 当たり前の措置である。この法案は国会で賛成多数で可決されたのだ。

 元気なジジイやババアの中には金属製の警官に抵抗して暴れる者もいた。

 が、そういう場合はロボポリスが拳銃を抜き、即座に年寄りを射殺する。

 連行される前に逃げ出す者もいたが、そんな時は指名手配され、見つかり次第制服を着た人造人間の警官が撃ち殺した。

 奴らは不要な存在だ。妥当な措置である。そんなふうにホロテレビを観ている時、部屋のドアをノックする音がした。

「失礼します」

 家政婦の声がする。

「お客様が参りました」

 次の瞬間、突然ドアが乱暴に開かれ、ロボポリス達が入ってきた。

「70歳になったから呼び出したのに、呼び出しに応じなかったな。貴様を逮捕する」

 ロボポリスが、宣告した。

「何を言うか!」

 私は怒鳴る。

「確かに私は70歳になったがまだまだ若い。死ぬなんて、とんでもない。しかも私は国立の一流大学を出て、長年総理のブレーンをつとめた男なんだぞ」

「70歳になったら本人の希望と無関係に全員が死を選択しなければならないのが、この国の法律だ」

 金属製の警官がピストルを抜き、銃口を私に向けた。

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