政志!~最強のNTRハンター〈亮〉を継ぐ男
ごめんなさい、魔が差しました。
「...まさかな」
俺の住むアパートに送られて来た差出人の書かれてない封筒。
中に入っていたのは1本のUSBメモリー。
テンプレな予感を感じつつ、USBをパソコンに差し込んだ。
『政志見てるか?』
「龍太?」
そこに映っていたのは高校時代の知り合い、根戸龍太だった。
陽キャの根戸は顔も良く、スポーツで鍛えた身体はモデルの様な体型。
高校時代は女子達からファンクラブまで作って貰い、女癖の悪い龍太はハーレム王気どりで手を出しまくっているという噂だった。
対する俺は普通の風貌。
クラブは中学まで野球、高校は美術部。
運動を止めてからも、一応トレーニングは欠かさず来たので、現在も体脂肪8%を維持していた。
「...えーと」
そんな事より、なぜ龍太はこんな映像を送って来たのか分からない。
高校時代は殆ど龍太と接点が無かったし、高校を卒業してからの二年は全く関わりが無い。
いや、龍太のハーレムから数人の女の子に告白されたっけ?
そんな困惑を他所に龍太の映像は流れる。
『お前の愛しい幼馴染みの史佳は俺の下で喘いでいるぜ』
「は?」
聞き捨てならない事を龍太が言った。
幼馴染みの史佳とは、山井史佳の事だろうか?
確かに史佳とは幼馴染みだっだが、べつに恋愛感情を抱いてた訳では無い。
ましてや、付き合っていた訳でも。
同じ高校だったが、俺と全く違う陽キャな性格の史佳は龍太のファンクラブに入っていた筈だ。
『アアオハアハエ...政志...ごめんね』
「何がごめんなの?ってか久し振りに史佳の顔を見たな」
画面が代わり、赤い顔をした史佳のアップが映る。
どれくらい振りかに見た史佳、そういえば、なかなかの美少女だったな。
『見てろ』
「何をだ?」
よく分からない龍太の言葉に聞こえる筈が無いのに、思わず突っ込んでしまう。
『フッッ!ハッハッホッ!』
『アッアッアハハハァー』
カメラをベッド脇に置いて撮影を再開したのだろうか、しかし肝心の二人か殆ど映っていない。
「ちゃんと映像を見直したのか?」
端っこに映るのは、龍太の物と思われる尻と陰部の一部、そして二人の声。
どうやら四つん這いの体勢みたいだけど...
「捨てようかな」
こんな映像馬鹿らしくてオカズにも使えない。
『良い事教えてやる!』
まだ何か言ってやがる。
「お前の彼女池尻だったか?
アイツも喰っちまったぜ」
「はい?」
池尻って池尻美由紀の事か?
アイツは元々龍太のハーレムメンバーだったが、そこを抜けて俺と付き合っていた。
でも卒業で関係は終わったんだ。
『遠距離は無理』
そう言われて。
確かに新幹線で三時間の距離にある大学に進んだ俺と、地元に残った美由紀。
自然消滅とは思っていたが...
『卒業前に俺の所に来てな、
政志君と別れたくないって泣いてよ、セックスで引き留めたら?教えてやるよって言ってやったら...
バカだなアイツ!!』
「それは同意するよ」
『喜べよ、セックス上手くなったら政志に振り返って貰えるかもよって、言ったら必死だったぜ
近い内に迫られるんじゃねえか?
まあ童貞じゃ、満足させられねえか?
こんな風....に...な!』
『アイアババババ!!』
「だから、肝心な所が映って無いんだって!」
龍太の語りと、獣じみた史佳の喘ぎ声だけじゃねえか!!
(なんだありゃ?)
「しまった!」
頭の中にアイツの声が聞こえる。
思わず興奮しちゃったので、アイツ...〈亮〉が覚醒しちまった。
(なあ政志、ありゃなんだよ?
力任せなグラインド、我が身の快感しか考えてねえな)
困惑する俺を他所に、〈亮〉は画面に映る龍太のセックス映像の解説を始めた。
(また寝取られたのか?涅鶏政志)
「名前を呼ぶな」
コイツは二年前、突然俺の心に現れた。
なんでも寝取りを生き甲斐とし、何回も転生を繰り返したという、真のクズだ。
(うるせい!!)
コイツはその度に寝取った相手から凄まじい制裁を喰らい、殺されたり失意の内に死んだりと、酷い人生を歩んだのだ、自業自得だが。
(止めろ!だから人の人生を語るな!!)
頭の中で〈亮〉が叫ぶ。
なぜこんな奴が俺に憑依したんだか。
(決まってるだろ、寝取り返しの為だ)
「はいはい」
よく分からないが、亮は神の罰を受け、寝取られた男に憑依して、寝取り返しをする事で、前世の罪が相殺されるそうだ。
どれだけ罪を犯したんだか。
(...細けえ事は良いんだよ)
「まあ良いけど」
自分の罪を実感するのは良い傾向だ。
(で、どうするよ)
「何が?」
(その池尻とか言う女だよ、近々来るって)
「そんなの無視だ」
(はあ?)
「当たり前じゃないか、既に池尻は龍太に寝取られているんだし」
(やり返さねえなんて。それでも男か?)
「男だよ、知ってるだろ」
(...まあ確かにな)
下半身を指差すと亮は黙る。
なんでも俺のブツはかなりデカイそうだ。
(...20センチとか、ありえねえだろ)
「止めろ」
とにかく〈亮〉を黙らせる。
二年前に大学で出来た新しい彼女をサークルの合宿で先輩に奪われそうになり、俺は〈亮〉によって覚醒した。
酒に酔わされ、下着姿に剥かれた彼女の姿。
未成年なのに無理矢理飲まされ泥酔していた俺は意識が飛び、〈亮〉に身体を乗っ取られてしまったのだ。
(あれは最高だったぜ)
「どこがだ!!」
思い出しても寒気がする。
翌朝、気かつけば俺の周りに男のサークル先輩達がガタガタ震え、彼女を含めた女の子達は全裸で布団の上に伸びていたのだ。
(しかし絶倫だな、一晩であれだけ。
まあ俺のテクニックあってこそだが)
「だから止めろって!」
そのお陰でサークルは崩壊したんだ。
抱いてしまった女の子達の中にはサークルの先輩達の彼女も混じっていたんだ。
『...政志君』
『もう一度だけお願い...』
未だに顔を合わす度、迫られる。
サークルの連中も悪事がバレるのを恐れ、みんな泣き寝入り。
いや、それ以上に男達は自信を失い、みんな不能になったとか。
「もう寝るよ」
(なんだよ、つまんねえな)
冷蔵庫からストロング缶を出し、2本続けて呷る。
空きっ腹に染み入るアルコール。
俺は忽ち酩酊状態に陥った。
(ん?)
「誰だろ?」
アパートの扉を叩く音に立ち上がり、ドアを開けた。
「...政志君」
(池尻だったか?)
「...池尻さん」
...いかん、〈亮〉に乗っ取られそうだ。
「私...根戸に騙されて...ごめんなさい。
政志の事を...」
(気にしない、気にしない)
「気にしないで」
「でも...私...根戸にセックスの味を」
(忘れりゃ良いんだよ)
「忘れて」
「そんなの無理だよ...馬鹿よね...もう満足出来ないの」
(どうやら他でも試したのか。成る程、こりゃ救わねえと)
「大丈夫、忘れさせてあげる」
「え?いや政志君酔ってるの...ング...アハァ」
(キスくらいでこれかよ、チョロいな)
「どうしたの」
「...嘘...キスだけで身体がこんな...」
(これからが本番だ!行くぜ!!)
「美由紀!!」
ここからの意識が無い...
完全に〈亮〉に乗っ取られたのだ。
「...しまった」
翌朝、俺は激しい後悔の中、目が覚めた。
「こんなの初めて...今までのアレはなんだったの?
無理...もう離れられない」
半ば白目を剥きながら、うわ言を繰り返す美由紀に、龍太からの逆ギレと、増えてしまった女に怯えるのだった。
(良かったじゃねえか!)
「うるさい!俺は刺されたくないんだ!
普通の恋愛をしたいだけなのに!!」
〈亮〉に叫んだ。
亮の救済かな?