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ポケットダンジョン放浪記  作者: 芋窪 Q作
第1章 旅の始まり
2/25

2話

 祠で祈ったら授かったギフトを教えてもらえた。


 ポケットダンジョン


 ワケわからん。

 ちっちゃなダンジョンと言う意味だろうか?

 ポケットサイズの。


 考えながらチョッキの内ポケットに手をいれると──


 世界が歪んだかと思ったら、洞窟の中にいた。

 幅1メートル程の狭い洞窟……と言うか洞穴。

 奥行きは2メートル程でその先に六畳程の空間が見える。

 なんと言うか………ワンルームマンション?


 後ろを見るともやもやとした実態の無い空間があり、顔を近付けると横に裂け目が生まれ、先程まで居た祠が見える。

 更に近寄ると再び空間が歪み、元の祠の前に戻った。

 片手はチョッキのポケットに入ったまま。

 もしや、と思ってチョッキのポケットからズボンのポケットに入れ直したら、今度は体育館の半分くらいのサイズの洞窟に出た。

 先程と同じく、周りは鍾乳洞のような壁。天井に穴が空いているらしく、光が差し込んでいて暗くはない。

 地面は芝のような草に覆われており、直径5メートル程の池が見える。

 特筆すべきは、なぜこんな場所にあるのか分からない平屋のログハウス。

 中に入ってみると、4人がけのテーブルが幾つか並んでおり、奥にはカウンターと厨房が見えた。

 食堂っぽいが、人の気配がなく施設も使われた形跡がない。

 ログハウスから出て、辺りを見回すが、他に見えるのはログハウス脇の井戸と例のもやもや。

 取り敢えず、もやもやから祠の前に戻る。


 ふむ。

 ズボンのポケットには体育館の半分くらいのサイズの洞窟。

 チョッキの内ポケットにはワンルームマンションサイズの洞窟。

 ポケットのサイズに見合ったダンジョンに繋がっているのか、それともポケットにダンジョンが生成されているのか……


 貰い物の服には合計で3つのポケットがあった。

 一つはチョッキの内ポケット。もう一つはズボンの尻。残る一つはチョッキの左胸部分にあるのだが、これが一番小さい。

 オレの予想が正しければ、これまでで一番狭い洞窟に繋がるはず。


 そう考えて、胸ポケットに手を入れたら、予想通り、2メートル四方の狭い場所に立っていた。

 これまでとは違い、大きな石を組み上げた壁。目の前に松明がかかっており、その脇には古そうな木製のドアがある。


 これまでで一番ダンジョンっぽいが、一マスしかないのはどうなのよ?


 ドアを開けると、そこには同じく2メートル四方の部屋があり、部屋の中央にはポツンと宝箱っぽいものが置かれている。


 ウィザー●リィ?


 取り敢えず箱を開けてみると、中には見るからにそれっぽいピンク色の液体の入った小瓶があった。

 取り上げて見ると、小瓶にはラベルが貼ってあり何やら文字らしいものが書かれている。

 が、残念ながら読めない。


 う~む。

 この部屋には他に何もなかったので、ポーション片手に祠の前に戻ってきた。

 オレの貰ったギフトはポケットを通じて、ダンジョン(?) に入る力らしい。


 使えるのか、これ?


 取り敢えず、ラベルに書かれた文字が気になるので飲み屋まで戻るか。

 そう思ったが、まだ一つ目の洞窟の奥に行ってなかったので、内ポケットに手を入れ中に戻った。

 細い廊下のような洞穴。

 よく見ると、壁にドアらしきものがあったので開けてみたら石で出来た洋式トイレだった。

 ぼっとんではなく水洗。水を流すレバーはなく、常に水が流れている。

 トイレットペーパーらしきものは見つからず、代わりにいい匂いのする小さな流し台があった。

 こちらも水は流れっぱなし。


 試しに使ってみたが、いくら洗えるとはいえ、自分の手で拭くのはかなり抵抗があった。

 どこかでトイレットペーパーを入手して設置せねば。


 トイレを出て奥に行く。

 六畳くらいのスペースがあり、左側1/3に岩に囲まれた湯気をあげる溜め池(と言うか、どう見ても温泉だよな、これ)が、あり、他はふかふかの苔が被う地面。

 そして、なにやら旨そうな果実をつけた高さ2メートル程の樹が一本。

 実をもいで匂いを嗅ぐと甘いような香ばしいような不思議な香りがする。


 食えるんだろうか?


 そう考えながら苔の上に腰を下ろすと思ったよりも柔らかい感触。

 ああ、この感触には覚えがある。


 人をダメにするクッションだ。


 オレは蕩けるような感触に身を任せながら、手にした果実を齧ってみた。


 んんん?


 期待してたのとは違う味覚に教われ思わず吐き出しそうになったが、せっかくのクッションを汚すのも嫌だったので、トイレまで駆け込み吐き出す。


 うーむ……ジューシーなフルーツを期待してたのだが、味は肉肉しかった。

 スパイシーな煮込みチキンかポークチョップあたり。

 驚いて吐き出しちやったが、もしかして、そういう物として食ったら旨いのでは?

 恐る恐る果実を齧り、ゆっくりと味わう。

 スパイスの深い味わいに、噛めば噛むほどあふれでる肉汁。それでいてくどくなくあっさりした舌触り。

 はっきり言って旨い。

 何個でも食えるな、これ。




「ああ~……」


 思わず声が出る。

 無理もないだろう、なにせ実に三日ぶりの風呂だ。

 声を出すなと言う方がおかしい。


 満腹するまで果実を貪ったオレは、どうせだからと溜め池……と言うか温泉に入ることにした。

 湯加減は熱くもなく温くもない。岩の間から湯が噴き出しており、ちょっとしたジェットバスっぽい。

 吹き出た湯は、そのまま壁に空いた穴に流れていく。

 たぶん、どこに流れていくのかは考えちゃいけないのだろう。

 にしても――――


「極楽ですわ~」


 あの飲み屋に風呂は無かったからなぁ。

 つか、この世界で風呂はあまり一般的では無いらしい。

 風呂好きのオレとしては、正直耐え難かったが、なんかあっさりと解決してしまった。


、ポケットダンジョン……


 以外と当たりのギフトだ。

 少なくとも食い物と風呂には困らん。

 この世界でどうやって生活しようか困ってたが……





 オレ、もう働かなくても良いんじゃね?

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*カクヨムでも掲載しています。

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