どいつもこいつも、部活やめるってよ
とある放課後、僕は、ひと気のない美術室で油絵を描いていた。
すると僕の親友が、息を切らせて美術室に駆け込んできた。
「おい、聞いたか。中島、部活やめるってよ」
中島って、同じクラスのあの中島? へえ、やめるんだ。てか、そもそもあいつ何部だっけ?
「あいつは、球拾い部」
球拾い部?
「一年の時は球拾い、二年になっても球拾い、やっと三年になれたのに、やっぱり球拾いしかさせてもらえないから、嫌気がさしたらしい」
まあ、球拾い部だからな。
「それから、知っているか。 美野島も、部活やめるってよ」
美野島は何部だっけ?
「あいつは、応援団応援部」
応援団応援部??
「その名の通り、運動部の大会で選手を応援する応援団を、その横で大声で応援する部活だ。団長ファイトー! 旗持ちファイト―! ガンバレ! ガンバレ! 応援団!」
で、退部の理由は?
「虚しくなったそうだ」
だろうね。
「そうそう、児島も、部活やめるってよ」
話の流れ上、一応聞いとくけど、児島君は何部かな?
「児島は、準々決勝敗退部」
準々決勝敗退部???
「あらゆる競技で準々決勝まで勝ち進み、見事敗退することを目的とする部活らしい」
いろんな部活があるんだね。
「退部の理由は、先日のテニスの全国大会で、あと少しで準々決勝敗退の栄光を掴みかけたのに、惜しくも全国優勝してしまったそうだ」
すげーな!
「夢破れたって泣いてたよ」
もう何がなんだか。
「ちなみに、俺も、部活やめるってよ」
何その他人事のような言い回し。えーと、何かもー、聞くしかない空気だから聞きますけど、君はいったい何部かな?
「俺は、オオカミ少年部」
オオカミ少年部????
「野生のオオカミを捕獲することを目的とした部活だよ。オオカミにちょいちょい噛まれて痛いから、やめようかと思って」
……嘘だろ。
「え?」
……お前、その話、嘘だろ。
「いや、ホント、まじまじ」
ついでに中島の話も、美野島の話も、児島の話も、全部嘘っぱちだろ。
「ばれたか。実は俺、部活動中なんだ」