閑話休題(それっぽいことを言いたいだけ)
そうそう、読者諸君に明かさねばならない秘密がある。儂の頭にはな・・・緑のツノがあるんじゃ!!
え?それで?みたいな顔するでない!才色兼備で完璧すぎる絶世の美少女の儂にとっては、チョー屈辱的なコンプレックスなんじゃよ!
実は、精霊と契約を交わす際にはある条件がある。
それは、「互いが死んでしまいたくなるような欠点を一つ、契約時点から死ぬまで一生抱え続ける」というものじゃ。
かつてゴブリンの娘じゃった儂は、とあることがきっかけで大精霊へと昇華したわけじゃが、その時から抱えておるコンプレックス。それは完璧を求める儂とは幾万光年もかけ離れた、醜悪の権化ともいえるゴブリンの耳!!!眉目秀麗なボディにあるまじき、緑緑としたぶにょぶにょなゴブリンの耳!!!
剥いでやりたいと何度も思って行動に走ろうとしたものの、「剥いだらそれはもうとてつもなく痛いんじゃないかしら」「耳のない精霊なんて、それこそ傷だらけの極道と同列じゃありませんの」などという乙女チック思考が、500年間未然に防いでくれておる。
なぜ、こんなことになったか知りたいじゃって?しょうがないのぉ〜(聞いてない)。
ある時、故郷からはるかに離れた湖で一人遊んでいたところにヤツは現れた。焔の大精霊ベクトリウス。後の大災禍を引き起こした元凶の精霊の一体とも呼ばれているベクトリウスは、儂にこんな交渉を持ちかけてきた。
「妾と・・・その・・・ゴブリン退治をせぬか?」
その頃の儂の歳は12を過ぎたくらいで、ゴブリン退治というのは何かの遊びだと思ってしまったわけじゃ。
「うん、いいよ〜☆」
そう答えるや否や、儂の体は光に包まれて・・・意識が戻ったあと、妙に体に違和感があったので、何が起こったのかを確認するべく傍の水面を覗き込むと、卒倒してしまった。体は人間のそれと遜色ないレベルの美少女に、しかし醜い耳は残っているという、何とも嘆かわしい精霊へと変貌してしまったのじゃ。容姿のあまりのアンバランスさに、儂はひどく葛藤したものよ。ベクトリウスからは何も知らされていなかっただけに、その頃はひどくベクトリウスを恨んだものじゃ。まあ、何も聞かずに勝手に契約した儂も1:99くらいで悪いがの。
そもそも、なんでこんな回想してるんじゃろ・・・ああ、確か別部署の西木さんと大浦さんと飲んでるところじゃった。
すんでのところで自我を保てているようじゃが、今日はよく飲んどるなぁ儂。
「西木さぁん、儂の耳どぉうおもいますぅ〜〜??」
「まぁ、可愛いと思いますよ?誰でも持ってるわけじゃないんだから、ゴブリンの耳なんて」
「そぉですけどぉ〜〜、こんな耳じゃいくら最強美少女でも、誰もお嫁に貰ってくんないっすよねぇ〜〜」
「じゃあ整形すればいいんじゃないっすか?」
やけにまともな返しをしてくる西木さん。
「でも、セラさんの言いたいこと分からなくはないですよ。僕が抽出した昨今のデータからみるに、明らかに顔で相手を決めてるケースが多いようなので」
うーん、ちょっと何言ってるのかわっかんないぞ、大浦さん。
「いやいや、そういうのってナンパから付き合っちゃうケースとかもあると思うんすよ。そういうのってデータに含まれてるんすか?」
「僕が見たものだと、確かに数百件くらいはあったような気がしますね。ちなみに、西木さんはー」
君ら会話がよくわからん方向に行ってしまって・・・嗚呼・・・意識が・・・ダメだこりゃ・・・
バタン。
「あれ、セラさん寝ちゃった?」
「この人もなかなか大変らしいね。神原さんとも何度かバチバチだったらしいし」
「え、そうなんですか?死神相手にとるってすごいですね」
「よくやるよねぇ。・・・ていうか今日、この人の退院祝いじゃなかったっけ?(笑)」
「あ、ホントだ(笑)」