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プロローグ、というか前回のお話し

500年ほど前、彼の地を混沌に陥れた史上最悪の大災禍"グランド・ファンタズム"は、ある一人の少女によって鎮められた。


何を隠そう、儂のことである。

儂の名はセラ・スピリファイト、真紅の精霊と呼ばれ崇め奉られておる。

あ、精霊ではあるが死んでないぞ。

ちゃんと500年経った今でも元の華奢で可憐な美少女のまま。

というのも儂は、グランド・ファンタズムを鎮めるべく、焔を操る精霊ベクトリウスと契りを交わしたのだ。

お陰で契約が成立したそのときから身体は老化しなくなり、我が右目はベクトリウスの右目と同化、自在に焔を操ることのできる真紅の瞳へと昇華したのである。

これが精霊と呼ばれる所以なのじゃ。いとも容易く契約したかのように聞こえるが、そもそも人間と精霊は種族の階級が違いすぎて、契約できない。そう、元の儂は人間ではなく、ゴブリンとかいう人間よりちょっぴり優秀な種族だったかの。


当時誕生した精霊は儂の他にも二桁単位でいたのだが、呪縛に呑まれた、戦死した、闇討ちされた、事故に遭った、等々あって現在は儂含め5人ほどにまで減ってしまった。


で、今儂が何をしているかというと、そうじゃな。



働いておる。


え、社会人と同レベルかよ、だって?

精霊とか呼ばれるくらいだから魔物と戯れてろだって?


・・・儂は悲しい。

かの大災禍を食い止めた張本人であったとしても、500年も経てば世代も代わり、知る者は徐々に減っていく。

かつては誰もが恐れ慄いた名声も、今や底を尽きようとしておるのだ。


以前、というか300年ほど前はそれはもう大層裕福な生活をしておった。

道行く者からは称賛を浴びせられ、サインをせがまれ、食べ物は持ち帰ることができないほど渡された。

だが今はどうだ。道行く人とは挨拶のみを交わし、サイン用にと大量に購入した色紙とペンは倉庫の中で風化の一途を辿っている。

以前は貧困に喘ぐ人間の気持ちがまるで理解できなかったが、今では清々しいほどに空っぽな財布の中身と毎晩睨めっこするのが習慣...


嗚呼、いつから儂の暮らしはこうも落ちぶれてしまったのだろうか...


その理由は、あるにはある。


今からちょっぴり150年前、敬愛する我が国の国王は隣国に向けて資源を巡る戦争を仕掛けようと画策しておった。その戦力とするべく新たな精霊を誕生させる研究も並行して行っておったのじゃ。

儂はその研究材料として30年ほど王立兵器研究所とかいうところに幽閉されておったのじゃが、ある時急に国王が面会にやってきた。


研究の激励かな?褒賞とかもらえるのかな?


期待を膨らませる儂に向かって、王はこう宣った。

「すまんな、お前はもう用済みだ」



・・・


文字通り、目の前がまっくらになった。

30年も隔離され、そのご褒美が貰えると思ったらこれじゃよ。

しかし、王都に戻った儂は更なる追い討ちをかけられることになった。

「よお、セラさん。見てくれよこれ」

王都に戻った儂を出迎えてくれた近所の老人なのじゃが、彼は自分の肩を指差していた。

「え、なにもないじゃん」

「いやいや、よぉーく見ておくれ」

すると老人の肩から光が溢れて・・・なんと精霊が現れた。


「ええええええええええええええええええ」


人間は本来、上位種族である精霊と契約を交わすことはできない・・・はず。


何だかよくわからない。

人と同サイズのベクトリウスとは違って、小人と称されるほどのサイズのそれは、しかし間違いなく精霊だった。

「これでワシもセラさんと同じ、精霊になったっちゅうことよ。ほっほっほ」

いやいや待て待て、なんで至ってありきたりな人間の老人が精霊になっておるんじゃ・・・?

「おじいちゃん(汗)、その精霊はどうやって契約したの?(汗)精霊なんて、そこら辺にいるようなもんじゃないのに」

「いやね、気づいたら儂の肩に乗っかってたべさ」

「・・・へ?」

「ほれ、あの子達も見てみ」

老人の指差す先には6歳くらいの子供たち。

その子達の周囲には、少年少女サイズの精霊がフワフワと漂っている。

何だかよくわからない(2回目)。

「うちの家内にも、ピンク色の可愛らしいのが付き纏ってるよ。見てくかい?」

「・・・いえ、結構です(汗)」

何が起こっているのだろう。

見かける人全てに大小様々な精霊が宿っておったんじゃ。

それ以来、精霊を宿す人間をたびたび見かけるようになり、今ではむしろ未契約者の方が少ないんじゃなかろうか、レベルまで普及しておる。


加えて我が精霊ベクトリウス、大災禍を食い止める際にほぼ全ての魔力を消費してしまったが故に500年全く姿を見せておらん。


要するに、超激レア精霊契約者という儂の名声はわずか30年の間になんの意味も持たないものへと変わり果ててしまったんじゃよ。

マイノリティからマジョリティへと見事な大降格っぷりよのぅ(泣)。


あまりにも急過ぎる時代の流れ、いや時代の気まぐれさに、儂は置いてけぼりにされてしまった。


現在儂は、王都から数十キロ離れた辺境の地アルデバランという地に職を構えておる。聞いて驚いて腰を抜かしまくるがよい、なんと今話題の「えーあいぎじゅつ」とやらの研究じゃ!ベクトリウス無き今では、「えーあい」の賜物ピーコちゃんと、それはもう愉快な日々を謳歌しておる。そしてこの物語は、そんな儂とピーコちゃんの栄枯盛衰を描いた物語になる・・・予定じゃ。


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