EP61 支配者
リーガビラサトラスへの侵入に成功し、一気に街を戦場へと変えていくボルカニア兵。しかし城を前にしてセルシアの秘密兵器であった機関砲の餌食となってしまう。
一方ボルケーノとともに城に乗り込もうとしていたボルザーノは、城に配置された大砲によりボルケーノが瀕死の状態にまで追い詰められ、落下。
満月の下、夜の街に響く砲音と銃声の中目を覚ましたボルザーノは、倒れたボルケーノの姿と敵味方入り乱れた死体の山を目にした。
ボルザーノが体を起こすと、周りをセルシア兵に囲まれていたことに気がついた。
「セルシア王クロチオス様が生きて捕らえろと御所望だ。同行願おうか」
ボルザーノはバロティアを握りしめて立ち上がった。
「誰に命令しておる。我はボルカニア王、ボルザーノ・ケイサルぞ」
「仕方がない。力づくでも捕らえるまで。かかれ!」
ボルザーノを囲むセルシア兵たちが一斉に近づく。迫りくる手にバロティアを振りかざすも、ボルザーノの体はすぐさま押さえられてしまう。
「クソ!離せ!」
「五月蝿い!黙れ」
暴れたボルザーノは頭を殴られた。すでに落下の衝撃で後頭部から出血していたボルザーノは脳震盪を起こして気絶した。
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「イスカ…ごめん…ね……」
…かあさん…?
ボルザーノは目を覚ました。
「どこだ…ここ…」
まだ痛む頭をおさえながら辺りを見回す。楕円形の闘技場だろうか。四層からなる観客席は人で埋まっている。観客の声が騒がしい。
「気がついたようだな。ボルカニア王ボルザーノ・ケイサル」
歓声は最骨頂に達した。
「クロチオス・ヴァウルス…!」
ボルザーノの前にはセルシア王が立ちはだかっていた。そしてその手にはバロティアが握られていた。
「これが伝説に聞く勇者の剣だな。ドラゴンを操る剣」
「返せッ!」
ボルザーノは立ち上がりクロチオスに殴りかかる。だがクロチオスの回し蹴りによって飛ばされてしまった。
ボルザーノは闘技場の土を舐めた。
クロチオスはボルザーノを蹴り、仰向けに回転させた。そして腹を何度も踏みつけた。
「カッ!ハァッ!」
「これは、今まで、散々、傷つけられてきた、者たちの分だ!」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
観客席がさらに沸いた。
ボルザーノは振り下ろされるクロチオスの右脚を掴み、右方向に投げ飛ばした。
「アアアッッ!」
ボルザーノはクロチオスの上にまたがり、顔面を殴った。しかしそれと同時に、ボルザーノの脇腹はバロティアに斬りつけられていた。
「グァァ…」
ボルザーノは脇腹を押さえながら背中を丸めてフラフラとよろめいた。その背中にクロチオスは手を組んだ拳を叩きつける。ボルザーノはペシャリと地面の上に潰れた。
「さぁこれからだ!ボルザーノ・ケイサル!せいぜい我々を楽しませてくれたまえ!」
ドシンドシンと地響きが聞こえた。そしてカラカラという鎖が引きずられる音もした。
ボルザーノはクロチオスの姿を見た。その背後には、手足と首を鎖で繋がれたボルケーノがいた。
「やれ!ドラゴン!奴を殺せ!」
クロチオスはバロティアの剣先をボルザーノに向けた。
「そん…な…」
「ギシャアアアアオオオッッ」
ボルケーノはボルザーノに向かって吠えた。
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一方、セルシア城壁前。セルシア兵の軍団が街に放たれた。そしてそこにはボルカニア兵の死体が散在していた。何も知らぬボルカニア兵は城壁前に突撃し、皆帰らぬ人となった。しかし一人、友を盾にして生き残った者がいた。
「誰…か…。生存者…」
反応はなかった。その四等兵は脚を負傷していたため、うまく歩けず地面を這っていた。
四等兵は最後の堀に掛かった橋のそばまで来た。
ダダダダダダダダダダダダダ
しかし敵の機関砲の無差別発砲をかわした拍子に石垣の下へと転がり落ちてしまった。
機関砲の音にかき消され、誰も水がはねた音には気が付かなかった。
鎧は四等兵を底へと沈めようとしていた。四等兵はもがいた。暗黒の水は夜の闇と溶け合い四等兵を包み込んでいた。
四等兵の周りには5人の兵士がいた。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」
「目を覚ませ。死ぬな!」
「あ…ここ…は…」
「よかった。お前、城壁の方から流されて来たよな?向こうはどうなってるんだ。様子を見に行った奴らは一向に帰ってこないんだ」
「…敵…銃…連射…皆…死んだ…」
「連射?どういうことだよ!なあ!」
「やめろ。揺らしてやるな。もう死んだよ」
「敵の銃はそんなにも強力なのか」
「どうする?」
「そうだ!爆弾」
「爆弾?なんだよ爆弾って」
「多分まだ、二十四班に山程あるはず」
兵士はリーガビラサトラスを走った。
「ムシャコ二十四班作戦隊長!」
「三等兵がなんの用だ」
「自分は二十二班の人間です。どうか爆弾をください」
「爆弾を?」
「はい。どうしても城壁が突破できないのです」
「貴重な兵器を使う価値は?」
「十二分にあります」
「分かった。荷車二台分、三分で用意する」
「ありがとうございます」
一分後、三等兵は荷車を引く二人の兵士と共に城壁を目指した。
「あの荷車を死守せよ!是が非でも城壁まで送り届けるのだ!」
白ひげを蓄えたムシャコは叫んだ。
「持ってきたぞ!」
「それが、爆弾?」
兵士は荷車の中を指さした。
「そうだ。これを敵に投げ込む。こいつは衝撃を受けると爆発する代物だ」
「やってやろう」
「ああ」
「進め!ボルカニアに勝利を!」
「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」
未知の機関砲目掛け、ボルカニアの軍団が突撃する。
ダダダダダダダダダダダダダ
機関砲は発砲した。ボルカニア兵がどんどん倒れていく。だが砲手の足元には、爆弾があった。
ドオオオオオオオオオンンンン
機関砲が、城壁もろとも吹き飛んだ。
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「ギシャアアアアオオオッッ」
歓声はさらに大きくなる。
ボルケーノは鎖を振り回しそれに繋がっていたセルシア兵を殺した。そしてボルザーノ目掛けて向かっていく。
「ボルケーノ、僕だ。ボルザーノだ」
ボルケーノが尻尾を振った。
飛び越えようとしたものの、足先がぶつかり吹き飛ばされてしまう。
「忘れちまったのかよ!ずっと一緒に、戦ってきたっていうのによう」
「ウォォオオオン」
ドシンドシンとボルザーノに駆け寄る。そして拳を振り下ろした。ボルザーノは飛び前転で避けた。ボルケーノは地面から拳を抜いた。
「ボルケーノ!ボルケーノ!」
ボルケーノはボルザーノの体を掴み上げ、地面に叩きつけた。
視界一面に広がったボルケーノの足裏を身を回転させ避けるボルザーノ。
「お前は、ボルカニアの、守護者じゃないか」
ボルザーノはボルケーノを前にして立ち上がった。ボルケーノはそこに炎を吐く。
ボルザーノは動かなかった。その身で炎を受け止めた。ボルザーノの体は燃えていた。
「それがセルシアの傀儡になってどうする」
ボルザーノはボルケーノの腹を殴った。
ドオオオオオオオオオンンンン
轟音とともに闘技場が激しく揺れた。
「なんだ!?」
クロチオスは辺りを見回した。
ドォォォォン、ドォォォォン
観客席で爆発が起きた。
「進めェェェ!殺せェェェ!」
「ボルカニアの勝利の為に!」
ボルカニア兵の軍団は闘技場の観客席に進入した。ボルカニア兵の怒号、響き渡る銃声、逃げ惑う人々の叫び声、闘技場は大混乱となった。
「小癪な。こうなればすぐさま奴を殺してあの兵士らの上に立つしかない。ドラゴン、ボルザーノを押さえていろ!」
クロチオスはボルケーノの方を見た。
「なんだとッ…」
しかしそこにボルザーノの姿はなかった。
「後ろだよ。間抜け」
ボルザーノはクロチオスの背中を蹴った。クロチオスは倒れた。
「馬鹿な…ドラゴンは確かに…」
「僕達の会話に、声は必要ない。全て演技さ」
そう言ってクロチオスの右手を踏みつけた。
「ぐぁぁぁぁぁぁ…!」
「これは返してもらう」
ボルザーノはバロティアを拾い上げた。
「だが…バロティアは俺の手に…!」
「だから言ってんだろ」
クロチオスはボルケーノに頭を掴まれた。両足が宙に浮く。
「バロティアは守護者を操る剣でもなんでもない。統治者の覇道を切り開く剣だ」
ボルザーノはクロチオスを斬った。剣はクロチオスの腰から入り心臓を切断して左肩から抜けた。
ボルザーノはバロティアを天に高々と掲げた。
「セルシア王クロチオス・ヴァウルス、討ち取ったり」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオ」」」
観客席にいたボルカニア兵は叫んだ。
その後、ボルザーノは城に入った。そこでセルシア王妃であるアミタに出会った。ボルザーノはアミタに話しかけた。
「貴方どこかで…そうだ城の肖像画…母上…?」
アミタはやわらかく微笑んでいた。
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リベルに命じられたシアンテは早足で廊下を歩いていた。
「モナードヴェン、ダーパの用意だ。大至急始めろ」
『はい直ちに』
オディオ家の誇る宇宙最強兵器、惑星破壊レーザー光線ダーパ。その開発、制御には青い血の生物、モナードヴェンの知恵が関与していた。その為モナードヴェンは他の青い血よりも幾分マシな待遇を受けていた。賢い青き血と白き血の関係の良い例である。
数時間後、シアンテはダーパの制御室に到着した。
「通達通り、目標はバジュラ銀河団天の川銀河惑星ウルカン」
「全入力完了済みです」
「誘導弾、発射」
「了解。誘導弾発射」
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その後、ボルザーノは半年をかけてセルシア全土を巡り、全ての街を攻略した。そしてリーガビラサトラスにて正式にセルシア王の地位を継承した。王冠はアミタによって授けられた。その場においてボルザーノはセルシアのボルカニアへの併合を決定。同時に統一国家ボルカニアの樹立を宣言した。こうして惑星ウルカンの国々はボルカニアの下に統一された。
ボルザーノはボルカニアの制度をそのまま旧セルシア地域に普及させた。ボルザーノは、天下を統一し平和な世界を作るという父と母と自らの願いを叶えたのであった。
その日、ボルザーノはアミタに連れられ、とある孤島を目指していた。全ての大陸から隔離された孤島、スピス島。上陸するや否や、アミタは歩きながら口を開いた。
「この星に流れ着いた時、ドラゴプロクスとドラゴメイドは離れ離れになっておりました」
意味の分からない話を突然振られたボルザーノだったが、とりあえず最後まで聞くことにした。
「この島はドラゴメイドが辿り着いた場所。ドラゴメイドのみが生まれる島。ドラゴプロクスから分かれた四つの国の王は、この島の人間から嫁を取るしきたりになっていました」
「え…でも僕の母上は…?」
ここでついにボルザーノはアミタの話を遮った。
「エヴリ…私の姉は、この島から追放された人間です」
「追放…え、姉!?」
「はい。全ての王妃は直系の血の繋がりがあるのですよ」
「そうなのですか…で、追放って?」
「彼女は自由を求め、お勤めを拒否しました。長はそれはもう烈火の如くお怒りになられましたよ」
「父上からは戦争孤児だと聞いていたので。母上も、苦労人だったのですね」
その瞬間、スピス島を揺れが襲った。
「地震か…。大丈夫ですか、アミタさん」
「はい。長のもとへ急ぎましょう」
ボルザーノは自らの嫁を貰う為、この島に来たのであった。
一方、その瞬間、ノトスガルブスに星が降った。街は瞬時に消滅した。衝撃波はウルカンを八周した。
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「誘導弾、命中を確認」
「発射態勢に入れ」
「了解。ダーパ、発射フェーズへ移行。全エネルギー充電完了。司令、発射準備完了です」
「カウントを開始しろ」
「了解。カウント開始。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…発射」
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「なんだ、あれ」
ウルカンの人々は皆、黄色に染まった空を見上げていた。それはボルザーノも同様であった。
「ボルザーノ王ッ!」
スピス島に、ノトスガルブスの一件を報告するための兵士がやってきた。
「ここは聖なる場だ。行動は慎め」
「ノトスガルブスが…壊滅しました…!」
「なんだと?原因は」
「巨大な隕石が確認されました。しかし、妙なんです」
「妙?」
「はい。その隕石が、等間隔で点滅を繰り返しているのです。学者もこれはおかしいと」
「それに加えこの黄色い空か。何が起きているんだ」
「惑星を木っ端微塵に破壊する兵器…」
アミタがボソリと呟いた。
「なんだと?」
ボルザーノは振り返った。
「いえ、セルシアにやって来た宇宙からの商人が言っていた話です」
「宇宙からの商人…。そいつの名前は!?」
「え…確か…オディオ商会かと」
「間違いない。そいつらだ。大至急イーロピアにいる商会の連中を捕まえて問いただせ!」
「ハッ」
「ボルザーノ様、大丈夫なのでしょうか…」
「案ずるな。私が解決してみせる」
ボルザーノは自らの妻をなだめた。そして黄色い空を睨みながら言った。
「これは私の国だ。何人にも手は出させない」
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『誘導弾への収束を確認。命中です』
シアンテは惑星ウルカンに向かうためのオーバーワールド内にてモナードヴェンからの報告を受け取った。
「司令、オーバーワールドを抜けます」
シアンテの乗る宇宙船の前には、かつてウルカンであった星の残骸が散らばっていた。
「王の剣を探すぞ」
「了解」
船は捜索を開始した。その最中、船内に何者かが乗り込んできた。警備兵はすぐさま扉の前に列を作り光線銃を構える。
扉が開いた。影が船内に伸び、低い声が響いた。
「少々予想外ではあるが、ご苦労であった。シアンテ」
「その御声は…先導者様…」
そこには、イスカ・ボルザーノ・ケイサルの姿があった。
「私は先導者などではない。……支配者だ」
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




