EP60 ボルカニア・セルシア戦争
ボルザーノらはなんとかセルシアが攻撃を仕掛ける前にダンバ村に到達した。そして住民を皆殺しにし、家を奪った。
数時間後、ニルコフ村からの一団が合流した。彼らは命令通りニルコフ村を完全に破壊し、ここまでやって来た。
夜も更けた。死体を重ねて焼いた炎も弱まり、やがて静寂が訪れた。その夜は数十分ごとに少人数ずつが変わるがわる見張りをした。
そして翌朝。
「本来ならニルコフ村にて朝を迎えているはずだった。進路が少しずれてしまった。今日はその遅れを取り返すぞ」
「「「おおおおおおお」」」
ボルカニア軍はダンバ村を出発した。北東に進み、本来のルートに戻りつつ前進した。目指すは北の果て、首都リーガビラサトラス。
「予定通りここから我々は最北端に向かう。それぞれ各班の作戦隊長に従い別れ、リーガビラサトラスを一気に叩く。作戦の通りだ。抜かりはないな?」
「「「ハッ」」」
第二目標地点、モカアの街を占領したボルザーノは言った。
そして一班と二班を引き連れ、先に出発した。
リーガビラサトラスは街の周囲に巨大な石垣と堀があり、街全体が城そのものであった。そして東西南北八箇所にある城門から侵入するというのが、本作戦の目標である。
八箇所を同時に攻撃し勢力を分散させるのが狙いだが、上陸地点から最も遠い北部の城門を攻撃する為の速度特化部隊、それが一班と二班であった。
ボルザーノ一行は森の中を、または崖の下の急流の側を、休むことなく馬で駆け抜けていった。何としてでも、敵との遭遇は避けなければならなかった。
一方、南門に向かう十三、十四、十五、十六、十七班は、途中のロバトグ街にてセルシア軍と会敵した。街への侵入を阻もうとするセルシア軍に対し、荷車上の歩兵が武器を手に取り自らの足で突撃を開始した。
「「「おおおおおおおおおおお」」」
セルシアの矢の雨を盾で防ぎつつ近づいて剣を振りかざしていく。
「突撃ィィィィィッッッ」
セルシアの陣形が乱れたところを騎馬隊が一気に突き抜ける。そして街への侵入に成功する。しかし、
パンッ、パンッ、パンッ
建物の影に隠れていたセルシアの鉄砲隊が横から鉛玉を喰らわす。
「罠にはまった…」
そう言って一人の兵士が落馬した。
鉄砲隊は主に馬を狙った。被弾した馬は悶え苦しみ制御が効かなくなった。中には馬から振り下ろされる者もいた。
前方の攻撃を受け回り込むも、そこにもセルシア軍がいた。
「これじゃあ埒があかねぇ」
ボルカニアの兵士は馬から飛び降り、尻を蹴り上げて馬だけを鉄砲隊の方へ突撃させた。
そして裏口から建物に侵入し、2階のベランダにいる兵士を背後から刺し殺した。武器を奪ってその兵士を下に落とし、弓矢と鉄砲でセルシア兵を上から狙った。主に兵装の弱い首周りと、武器の使用に必要な手が狙われた。
ロバトグ街での戦闘は激化し制圧は難航を極めた。
西門突撃部隊第二十二、二十三、二十四班は待ち受けていたセルシア軍と戦闘状態に陥っていた。
作戦隊長はやむなくリーガビラサトラスにまで使わない予定であったカタパルトを使用した。
「投擲開始!」
セルシア軍に石の塊投げつけられる。
「状況は?」
「依然不利です。何せ敵の数が多い」
「うむ…」
すると、セルシア陣営の方で突然大爆発が起こった。
「何だ!?何の攻撃だ?」
ボルカニア兵にとって今までに見たことのない現状が起きた。
「地面が、噴火したのか?」
「とりあえず確認してみよう」
「総員、セルシア兵を捕えよ。何が起きたのか問い詰める」
ボルカニア兵が爆発のもとへと駆け寄る。そこにはバラバラになったセルシア兵の死体があった。
ボルザーノ率いる一班、二班はリーガビラサトラス前最後の休息地点にて、会敵した。
共に休息していたが、最悪のタイミングで遭遇したということだ。森の中を進み、泉を目指していたら、その泉にセルシア兵がいた。すぐさま回避行動に出た一行だったが、回った先にセルシア兵が待ち構えていた。
直ちに抜剣。敵の攻撃を受け流しつつ元来た道を戻り始めた。流石に分が悪いことは六等兵でも分かった。
しかし、やはり追っ手はしつこかった。痺れを切らしたボルザーノは一気に攻勢に出るも、地の利を生かされセルシア軍に押されていた。
ボルカニアは一班、二班の四分の一程度を失ってしまった。
「ボルケーノ、来い」
ボルザーノはそう呟いた。
『ボルケーノ、来い』
ボルケーノの脳内に、ボルザーノの声が響いた。異変を感じたボルケーノは高く飛び上がり半回転すると、向きを変えて拳を地面に叩きつけた。
バキバキバキバキ
地面が裂け、裂け目の中から巨大な木の枝が広がった。
その枝はボルカニアにいる全てのセルシア兵を串刺しにした。
「フン」
ボルケーノは一つ息を吐くと、セルシア北部目掛けて飛び立った。
二十三班の一人が、生き残っていたセルシア兵を発見した。
「何が起こった」
セルシア兵の左太ももに剣先を突き刺した。
「ぐああああああッッ!」
「言え!貴様の代わりはいくらでもいるんだ。殺されたくなければ、早く!」
「ば…爆弾庫に…投石が当たって…それで全て…吹き飛んじまった…」
「爆弾?何なんだ爆弾ってのは」
「新しく支給された武器で…衝撃を与えると爆発する…」
「まだ残りはあるのか?」
「……」
「答えろ!」
次は兵士の左太もももを突き刺した。
「ああッッッ!あああああッッッ!この先の…東の補給所の…倉庫の中に…大量に…」
「東だな?」
「ああ…そうだ。あ、あああ、案内できる」
「そこにお前の仲間は?」
「いねぇよ…。奴らは新設された部隊だ。補給所と共にな。メンバーも、ほとんどが新兵だろうよ…」
「よし分かった。総員注目!今から東の補給所を占領する!」
「「「ハッ」」」
「間に合うでしょうか、作戦隊長」
「どの道爆弾とやらが敵の手にあれば、後ろからやられて大惨事になる。だが我らの手に渡れば、それこそ一気に敵を壊滅させられる。これはチャンスだ。だが、定刻にはなんとしてでも間に合わせる」
「分かりました。行きましょう」
「二十三、二十四班は待機。二十二班は落ちているセルシア兵の甲冑を身に着けろ」
「「「ハッ」」」
「ポリヤ二十二班班長、兵士を乗せた荷車を数台用意しろ」
「了解しました」
数分後、二十二班は東の補給所を目指し出発した。
ロバドグ街の戦闘は、次第にボルカニア軍が優勢となっていった。数の差は圧倒的であり、占領も時間の問題だった。しかし、その時間が問題であった。彼らは一日をロバドグ街で過ごそうとしていた。だがその価値はある重要拠点だった。
この先の道はリーガビラサトラスに続くほぼ一本道であり、道中最大の街がここであった。つまりリーガビラサトラス侵攻の砦となる街であった。
見事ロバドグ街を制したボルカニア兵達は、リーガビラサトラスへと急行した。
変装した二十二班は補給所の門を突き破って中に入った。
そしてポリヤが勢いよく捲し立てた。
「誰か!あるだけの武器を全て荷車に詰めて用意しろ!敵が目の前にいる!このままでは逃げられるぞ!」
補給所の人間が二十二班に近付いてきた。
「きょ、許可証を」
「何を言ってるんだ!聞いてなかったか?許可なんぞ取ってる暇はない!奴らに逃げられる!」
「で、ですが、規則ですので…」
ポリヤはそばに居る新兵の胸ぐらを掴んだ。
「お前は何の為に戦ってるか分かっているのか!?許可を取る為か!?違うだろ!王に勝利をもたらす為に命を懸けて戦っているんだ!」
「ひっ…」
「何をぼさっとしてるんだ!頭があるなら早くしろ!」
「は、はい!」
セルシアの新兵は走っていった。その間に荷車にいた兵士が降りる。そして新たな荷車を引く馬の上に乗る。
荷車に、次々と物資が詰め込まれていく。
「ほ、補充、完了しました…!」
「ご苦労。作戦隊長、いつでも行けます」
「了解。総員出撃!」
こうして無事に補給所を後にした。
「世話になったな。お前はもう用済みだ」
「そん…な…」
捕らえたセルシア兵の左太ももの剣を抜き、胸に刺した。
その後、二十二班は二十三、二十四班と合流した。
「時間は?」
「最終準備地点到着予定時間まで残り数刻。全速で間に合うかどうか…」
「言っただろ。間に合わせるって。総員、全速前進!リーガビラサトラスまで直行する!」
「「「了解」」」
ボルザーノは二手に分かれた。当然セルシア軍はボルザーノを追った。王の首さえ取れれば、戦争は終わるからである。
ボルザーノらは滝壺まで追い詰められてしまった。十メートルはあろう崖から水が落ちていた。
「まずいぞ」
ボルザーノが呟いたその時、水の落ちる音をも掻き消す叫び声が辺り一帯に響いた。
「グオオオオオオオオオン」
そこに悪魔が降り立った。
『水ニ体ヲ』
ボルケーノは言った。
「滝壺に飛び込め!」
ボルザーノは叫んだ。ボルカニア兵が滝壺に落ちた瞬間、ボルケーノは炎を吐いた。その炎は一瞬にして周囲の森とそこにいるセルシア兵を焼き尽くした。
ボルザーノが水から上がると、ボルケーノは彼の前に降りた。
ボルザーノに続きボルカニア兵も水から上がる。
「別れた奴らには先に行けと伝えておいた。お前らもリーガビラサトラスへすぐに向かえ」
「「「ハッ」」」
馬を失った兵士たちは自らの足で走っていった。
「僕たちも行くぞ、ボルケーノ」
ボルケーノは頷いた。
その晩、一から二十七までの班がそれぞれの最終準備地点に集結した。作戦開始は満月の南中とともに行われる。極寒の中、ボルカニア兵はその時を待った。
「時間です」
第一班作戦隊長セナはボルザーノに進言した。
「総員、出撃ッ」
ボルザーノはバロティアの先を城門へと向けた。そしてボルザーノに乗り夜空へと飛び上がる。
「「「おおおおおおおおおッッッ!!!!」」」
ボルカニア兵が門へと突撃する。
リーガビラサトラスへの八つの扉が叩き破られた。
侵入したボルカニア兵は、目についたセルシア人を片っ端から殺していった。
「こっちだ!全てぶっ壊せ!」
二十四班はカタパルトの籠に爆弾を詰めて投擲した。爆弾は次々と建物を破壊していく。
「鉄砲を使え!一人残らず射殺しろ!」
街中を駆け回るボルカニア兵が、扉を、窓を蹴破って建物内に入り込んだボルカニア兵が、老若男女、兵士、民間人問わず撃ち殺し、刺し殺していく。
「「「おおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!!!」」」
一度上がってしまった咆哮は止むことなく闇夜に響き続けた。
「このまま突っ込め」
ボルケーノは城の上空にいた。
『承知』
その瞬間、ボルザーノの横を何かが通り抜けた。
「…何だ」
見ると、ボルケーノの右脚がえぐれていた。
ドンッドンッドンッドンッ
太い砲音がボルカニア兵の咆哮をかき消した。城にある大砲の全てがこちらに狙いを定めていた。その大砲から、巨大な弾がボルケーノ目掛けて発射された。
「避けろッッ!」
身をよじったボルケーノだったが、弾は両翼に大きな穴を開けた。
「ガ…ア…」
ボルケーノが落下する。
「城は目の前だ!進め進め!」
何重にも敷かれた堀を抜け、城壁を前にしたボルカニア兵。しかしそこで城壁が横に開いた。
ダダダダダダダダダダダダ
城壁の中にある機関砲が凄まじい速度でボルカニア兵に銃弾を浴びせた。弾は鎧を貫通し、彼らは一斉に蜂の巣にされた。気づいた時には全身から血が吹き出し、肉塊となり地に伏せていた。
そして城内からセルシアの大軍が姿を現した。
ドンッドンッドンッドンッ
ダダダダダダダダダダダダ
ボルザーノは仰向けの状態で目を覚ました。
右を向くとそこにはボルケーノが倒れていた。左を向くとそこには敵味方入り乱れた死体の山があった。
ボルザーノは天を仰ぎ、それを掴んだ。
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リベルは再びシアンテ・ラ・オディオを呼び寄せた。
「森羅光封剣の件、どうなっておる?」
「はい、どうやら調査隊の実権をある者に奪われたようで…」
「何だと?調査隊に無関係者を入れたのか?誰だ」
「あ…いえ…その…」
「王を欺くつもりか…?」
「遣いです」
「遣いだと?誰のだ」
「彼は自らを先導者と名乗りました。彼は我々十二貴族に富を与えた恩人です。ただ彼は…その存在を王に公言するなと…」
「ほう。そいつの遣いが私の使節を乗っ取ったのだな。面白い。シアンテ、例の新型兵器の用意だ」
「だ、ダーパをですか!?」
「森羅光封剣はそれぐらいでは壊れんよ。私に刃向かう者に少し思い知らせる必要がある。それはシアンテ、君も同じだよ」
「そっそれは…」
「私に忠義を尽くすことを証明したくば、先導者の遣いもろとも惑星ウルカンを破壊しろ」
「…承知しました」
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




