EP54 無龍王ドラゴニヒロス
「これは先代の記憶…いや、―――」
『君はクビラ銀河団に向かってくれ』
「我が名はクビラ。主様の命によりこの地を統治する者なり」
「ああ。たった今解決した」
「主様のもとへ戻ろう」
「ここに戻る途中、支えてある星が輝きを失い崩れていく様子を見ました」
「仰せのままに」
「主様を離せ!」
『クビラ。君にはクビラ銀河団を与える。我がもとに平和と秩序を』
「有り難き幸せ。この命に換えてでも務めさせて頂きます」
『私はドラゴゲネシスの中に眠る。クビラ、子供達を頼んだよ』
「かしこまりました。主様…お任せ下さい」
「主様…主様…主様…」
『クビラ殿は後継はどうされる。いらっしゃる様には見えませぬが』
「私はまだまだ現役ですよ。後継探しもまだ先でいいと思っています」
「私はレコーダーだ。レコーダーの使命は二つ。アカシックレコードの全ての事象を記録し、それを保管して広めること。そしてカルディアへのゲートとしてドラゴゲネシスに殺されること。私は死なない。私に弟子は必要ない」
『僕を弟子にして下さい』
「ひとまず顔を上げなさい。君の名前は?」
『僕はマギデッド。白き血の純潔です。僕の先祖はこの銀河団をかつて治めた者だと聞いています。十二神将の一人であるクビラ。あなたがそうなのでしょう?』
「私は弟子をとらない。いや、必要ない。何故かは君ならよく分かるんじゃないかな?」
『あなたは不老不死の存在なのですか?』
「いや歳はとるよ。マギデッド、君の推測通り死ぬことはないけどね。そんなわけだから後継も何もないんだ。全て私一人で十分なんだよ。それに今は平和だからね、騎士が働く必要もないんだ」
『でも、もしまた闇の存在が復活して王に危機が迫ったら…ガハッ!』
「調子に乗るなよ小僧。それはつまり、主様が負けるということか?そういうことだな?」
『く…苦しい…離し…て…』
「あっ、す、済まない。大丈夫か?」
『ゴホゴホゴホゴホ、はぁ、はぁ、はぁ。まぁ…一応』
「…私は全てを王、主様に捧げた身なのだ。主様の侮辱を聞くと、つい体が動いてしまう」
『別に…侮辱した訳じゃ…。僕はただ油断は禁物だから備えは必要だって話を…』
「ああ。まぁ、確かにそうだな。…もしもドラゴギヴィルに主様の肉体が奪われてしまったら、私とて殺される。スペアは必要か」
『え?小声でよく聞こえなかったけど、何か言った?』
「いや、独り言だ。マギデッド、過酷な道だが、耐えられるか?」
『…!それって!』
「まだ許可したわけじゃない。君がクビラの弟子に相応しいか、しっかりと見極めさせてもらうぞ」
『分かりました!僕、頑張ります!』
『師範。そろそろ教えて下さいよ。秘密の任務のこと』
「ああ、そのうちな」
『まだ相応しくないですか?』
「マギデッド、お前のことは認めている。ただこれは私の使命なのだ。そう易々と人に話せることでもない」
『易々と話をする間柄でもないでしょう…』
「お前は口が上手いな」
『褒めてるんですか、それ?』
「ははは、どうだろうな」
「次の者よ、覚えておくがいい。この世に闇が存在する限り、平和が訪れることなどない」
『師範…逃げ…て…』
「私は死なない…!」
『でも捕まれば…きっと酷い拷問を受ける…。それは死ぬよりも…苦しいことですよ…』
「お前はどうするだ、マギデッド。なんで私を庇った!?」
『師範をここでお守りすることが…僕の…レゾンデートルだったんですよ…』
「そして常に警戒を怠ってはならない。自らの力を過信することも、現状に安心することも、あってはならないのだ」
「八億年の争乱、十三の厄災、ここに私の知りうる叡智の全てを記述しました。お困りの時は、先代がお助けになられるでしょう」
『ありがとう、クビラ。この書は大切にするよ』
「私は宇宙の表舞台から身を潜めようと思います。どうかお許し下さい、主様」
『暫しの別れになるな。さらばだ、クビラ』
「わしはマギデッド。身寄りもなく宇宙を放浪する占い師じゃ」
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「待て、お主ら、何をしておる?」
『遅いですよ、クビラ。こいつは、このアンディラ団長は裏切り者です。今ここで斬り捨てます』
「な…何を…」
『クビラ!お前なら分かるだろう!?この子供を!』
「もちろん…若様ではないか…名前はア…あっ…名前は…?」
『やはり、影響が大き過ぎる。クビラ、忘れるな!アロ…アロ…アロ…ぐぁぁぁぁぁぁあああああ!思い出せ!思い出せよ!』
「落ち着くんだアンディラ!髪を引き抜こうとするのはよせ!」
『ア…あぁ…ア…ア…』
『裏切り者に死を』
「待て!チャトゥラ、皆も落ち着くんだ。アンディラが何をしたと言うんだ!」
『そのガキを始末しろと仰せになったのはアレク王ぞ』
『我々は王の指示に従うのみ』
『まさか貴様も裏切る気か、クビラ』
「私は…」
『私は自らの敵を斬るのみ』
「…!アンディラ!やめろ!逃げるんだ!皆!」
『はぁ…はぁ…はぁ…』
「なんてことだ…。何をしたか分かっているのか!?アンディラ!」
『あなたもただ見ていただけじゃないですか。私を止めることもなく』
「……。十二神将はお終いだ…」
『私はこの子をセメラムズに預けようと思います。邪魔をするならあなたも殺します』
「私は関与できない。誰に対しても。私は傍観者でいなくてはいけないんだ」
『では、おさらばです。私は身を隠します。光のもとで生きることは出来ない』
「なら、私と一緒だな」
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「そばに来たまえ少年。主の未来を占ってやろう」
『えっとぉ…』
「なに、金は取らんよ。こんなに強い念を感じたのは久々なのじゃ。少しだけ、老人の好奇心に付き合ってくれ」
『は、はぁ。分かりました。ごめんなシオン』
「ほうこりゃまた。凄いな」
『そうなんですか?』
「ああ。君は今後、災難続きだろうよ」
「よもやセメラムズから抜け出すとは…」
「おや、久しぶりだのう。店の前が騒がしいと思ったらやはりお主でしたか。いやはや、これはまた逞しくなられて」
『この剣にはドラゴフォースが封印されている。その封印を解きたい』
「これは、森羅光封剣。かつて主様が使われておったのう」
『結局なんなんだよ、アカシックレコードや、ドラゴギヴィルの言っていたプラヴィーロレコードって』
「わしはレコーダーといってな、自らの意思でアカシックレコードに繋がることが出来るのじゃ。しかし読み取れることは大きな流れのみ。それでお主を占ったわけじゃよ。これまでも長いこと繋がってきたが、わしにもその正体は分からぬ。プラヴィーロレコードは、光龍王ドラゴフォース様に関係するものと聞いておるが、未だ目にしたことはございませぬな」
『マギデット、話があります』
「聞きましょう」
『タケルの心、魂を救うには、カルディアという場所に行って、ビオロと呼ばれる人を連れ戻す必要があります』
「繋がったのですね」
『はい。そしてカルディアに行くには、そのゲートとなる物を消し去らなくてはなりません』
「なるほど」
『俺はゲートが、あなただと思うのです、マギデッド。世界に一つだけの存在、それがレコーダーでしょ?』
「ご名答。私は宇宙の誕生と共に生まれました。アカシックレコードの叡智を人々に伝える為。そして、この時のために。私を殺せるのはドラゴゲネシスであるあなただけ」
「遂に、時が来たのか」
「では、始めましょう」
『はい。マギデッド。ありがとう』
「言ったでしょう。この為に存在しているのです」
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マギデッドは目を覚ました。
「ここは…?」
マギデッドは一人の少女を見つけた。
「ああ。なるほど」
マギデッドは呟いた。
「ずっとあなたが…」
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「これは先代の記憶…いや、アカシックレコードに記された、先代の記録か」
「目覚めたようだな。次なるレコーダーよ」
「あなたは?」
第漆章 天地開闢篇 完
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




