EP53 闇龍王ドラゴギヴィル
宇宙を構成する十三の銀河団の一つ、マハーラ銀河団。この地に派遣された騎士は自らをマハーラと名乗った。
マハーラ銀河団において、星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。しかしマジラ、メキーラ銀河団と同様に、銀河全域が高熱に侵されていた。
吹き荒れる熱波はマハーラの身を焼いた。マハーラはその原因究明を急いだ。しかし太陽の異変でもなければ、恒星の異変でもなかった。
このままでは分子が今の形状を保てなくなり、銀河は滅ぶ。マハーラは焦った。時だけが過ぎていった。温度はさらに上がっていた。
ついにマハーラは発見した。クビラ銀河団に接する半径六千光年付近だけが、さらに上昇具合がまた激しかった。マハーラはその先に何かがあることを察し、クビラ銀河団へと向かった。
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クビラ銀河団に隣接する二つの銀河団。その一つであるヴィカーラ銀河団に派遣された騎士は自らをヴィカーラと名乗った。
ヴィカーラ銀河団においても、星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。インドラ、ハイラ銀河団と同じく、この銀河団でも大規模な太陽フレア、そしてそれに伴う激しいプラズマ波と衝撃波の渦が蔓延っていた。
銀河に到着するや否や、ヴィカーラは波に飲まれてしまった。
ヴィカーラは二つの半球を創造した。そしてその中に自分が入り、内側から接着した。ヴィカーラは波の流れに身を任せることにした。ヴィカーラを乗せた球は銀河団中を巡った。揺れが収まり、ヴィカーラは周囲の状況を伺うために一度球から出た。そこはマハーラ銀河団との間にある暗黒領域であった。
偶然、ヴィカーラはそこでマハーラに遭遇した。
「ヴィカーラ?どうしてここに」
「衝撃波に煽られて、私は銀河を放浪していた」
「そうか」
「其方は?」
「ああ、急激な温度上昇が発生していた。原因はおそらくクビラ銀河団だ。俺はそこへ向かっている」
「なら私もお供しよう。ヴィカーラ銀河団の異変も収まるはずだ」
マハーラとヴィカーラはクビラ銀河団へと向かった。
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レグーノ銀河団の周りを周回する三大銀河団の一つ、クビラ銀河団。ここに派遣された騎士は自らをクビラと名乗った。
クビラ銀河団において、星の連鎖崩壊が始まってしまっていた。そして降り注ぐ放射線の量が異常であった。
やはりクビラ銀河団にも、正体不明の塔が宇宙空間にそびえ立っていた。
塔を睨みつけるクビラの前に、最後の賢人が現れた。
「我はヴィシューヌ。主様よりこの塔の建設と管理を任された者なり。して、貴様は何者だ。何をしにここに来た」
「我が名はクビラ。主様の命によりこの地を統治する者なり。ここは我の土地だ。早急に立ち退くがいい」
「何を言うか。それは主様の命にないことだ」
「聞かぬというのなら、自力で退かすまでだ」
「主様の計画の邪魔をするというのなら、こちらとて容赦はせぬ」
刹那、クビラとヴィシューヌの拳がぶつかった。続けざまに反対の手でクビラの胸を突こうとしたヴィシューヌだったが、すんでのところで止められてしまう。
クビラはその拳を掴んで振り回した。頭上で手を離し、翼の反動で真上のヴィシューヌを蹴り上げる。両足の二段階攻撃。ヴィシューヌは塔に叩きつけられた。
クビラはヴィシューヌに接近し、その肉体に何度も拳を打ちつけた。そしてヴィシューヌを踏みつけて宙返りし、その場で三回転して勢いをつけヴィシューヌを蹴り付けた。クビラの右脚はヴィシューヌの体を貫通し、勢いを殺すことなく塔を歪めた。衝撃は内部のメインコンピュータに伝わり、それを故障させた。
「クビラ!」
クビラのもとにマハーラとヴィカーラが到着した。
「俺達の銀河の異変の原因が恐らくこの銀河に…」
「ああ。たった今解決した」
黒煙を上げ赤色に輝く塔の残骸の前にクビラはいた。
「主様のもとへ戻ろう」
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再び、レグーノ銀河団。
マジラ、インドラの中心、チャトゥラ。メキーラ、ハイラの中心、シャンディラ。マハーラ、ヴィカーラの中心、クビラ。そして外縁部を周回するシンドゥーラ、アンディラ、バジュラ。三大銀河団群と外縁周回銀河団、それら全ての中心、レグーノ銀河団。
突如として星の連鎖崩壊が起こり、ドラゴゲネシスがその対処を開始してから数年。星を押さえる手綱を握り続ける彼の体力はかなり消耗されていた。しかし連鎖崩壊の波はさらに広がり、ドラゴゲネシスの対処範囲から綻びが生じていた。
「初めましてかな、ドラゴゲネシス」
苦痛に喘ぐドラゴゲネシスの前に一人の龍王が現れた。
「お前が…ドラゴギヴィルか…」
「左様。私がドラゴギヴィルだ」
「この現状を作り出したのは…お前だな?」
「左様。全ては大いなる目的の為」
「大いなる目的…だと?」
突然、ドラゴゲネシスの持つ手綱にかかる力が緩んだ。それはつまり、星を押さえつける力が弱まったことを意味している。
「何だ!?」
ドラゴギヴィルが口を開いた。
「大いなる目的には膨大なエネルギーが必要だった。私はそれを星の終わりに放たれるエスタルダストから供給することを画策した。それにはより多くの星を同時に崩壊させる必要があった。その為にこの銀河団を取り囲むように三つの銀河団に制御装置を配置した」
ドラゴギヴィルは両手を広げ高らかに笑った。
「…そしてついに大願は成った!このエネルギーを手にし私は、この宇宙の王として君臨するのだ!」
エスタルダストのエネルギー、それは決して物質ではないが、ドラゴゲネシスはその大きなうねりを感知していた。エネルギーがドラゴギヴィルへと集まっていく。
エスタルダストのエネルギーは決して物質ではないのだが、それは星の欠片を伴ってドラゴギヴィルの新たな肉体へと変貌していった。
「ハハハハハ!ハハハハハ!ハハハハハハハ!」
ドラゴギヴィルの巨大化は止まることを知らない。銀河団四つ分のエネルギーと星の欠片。それらはドラゴギヴィルを、その手の中に銀河一つが丸々収まってしまう程にまで巨大化させた。
「なんてことだ…」
ドラゴゲネシスはぼやいた。星は消え、銀河団内は闇に包まれた。ドラゴギヴィルの姿は遥か遠くの銀河にある星々からの僅かな光によって確認していた。
「エスタルダストは素体を主と認識する。たった今同調は完了した」
ドラゴギヴィルが動き出した。試しにレグーノ銀河団にある一つの銀河を手に取り、それを握りつぶした。
「まずは、ドラゴプロクスを回収する」
ドラゴギヴィルはバジュラ銀河団の方向へ進み出した。
「待てッ!」
ドラゴゲネシスは剣を創造し斬りかかった。しかし刃は空を切った。ドラゴギヴィルの肉体はもはや肉体とは呼べなかった。エスタルダストという"肉"に、星の欠片という"皮"が一部張り付いているだけであった。ドラゴゲネシスの目前だけでも、その六割は"皮"のない部分であった。
「物理的ダメージがないだと…」
さらにその身長差から、ドラゴゲネシスの攻撃は皮膚に付着したウイルスが転がるようなものだった。ドラゴギヴィルは見向きもせずに進み続けた。
「主様!」
ドラゴゲネシスのもとに、クビラが、それに続いてマハーラとヴィカーラが戻ってきた。
「ここに戻る途中、支えてある星が輝きを失い崩れていく様子を見ました」
「そうか。それはコイツの仕業だ」
三人の騎士はそこでようやくドラゴギヴィルの存在を認識した。そのあまりの大きさから、これが一個体だとは誰も思わなかった。
「「「主様!」」」
チャトゥラ、インドラ、マジラが、シャンディラ、ハイラ、メキーラが、バジュラ、アンディラ、シンドゥーラが、続々とドラゴゲネシスのもとへ集結した。
「今目にしている通り、これがレグーノ、クビラ、チャトゥラ、シャンディラの四つの銀河団にある星のエスタルダストを吸収して巨大化したドラゴギヴィルの姿だ。奴は今ドラゴプロクスの回収に向かっている。そこにはドラゴフォースの魂も封印されている。そして奴はドラゴイードルの身体を介して存在している。奴は全ての力を手にした後、私と決着をつけるつもりだ。当然、四大龍王の前に手立てはない。であるからして、奴がバジュラ銀河団に到達する前に止めなければならない。幸い、移動速度は我々の方が上だ。先回りして対策を練る」
「「「仰せのままに」」」
騎士は口を揃えて返した。
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ドラゴゲネシスと十二の騎士はバジュラ銀河団へと到着した。
「遅いと言えど、バジュラ銀河団の公転周期よりは速い。恐らく奴はこの方向から来る」
「しかしどう対処されますか、主様」
「敵が巨大なら、こちらも巨大になればよい。そういうことでございましょう?」
「その通りだ」
「そんな無茶な!」
「無理は承知。それでもやらねばならぬことはある。私はドラゴゲネシスだ。巨体だろうがなんだろうが、この手で創造してやる」
騎士達は自らの手で星を破壊していった。そこにあるエスタルダストと星の欠片をドラゴゲネシスに捧げる為。
ドラゴゲネシスは新たな肉体の創造を開始した。バジュラ銀河団のエスタルダストと星の欠片がドラゴゲネシスへと集まっていく。
「あ、あれは!」
チャトゥラがレグーノ銀河団の方向を指差して叫んだ。
光が歪み、漆黒のうねりが度々ギラリと光っていた。ドラゴギヴィルが刻一刻と迫っていた。
「そんな!主よお待ちくだされ!まだ完全では…」
「いや、もう時間がない。今倒さなければならぬのだ」
ドラゴゲネシスが動き出した。
「ドラゴギヴィル!ここでお前を止める!」
「邪魔だどけ!ドラゴゲネシスッ!」
銀河一つ分の大きさにまで巨大化したドラゴゲネシスだったが、ドラゴギヴィルの手に握り締められてしまった。
「このまま俺がドラゴプロクスを手に入れる様を見ているがいい」
ドラゴギヴィルは止まらない。
「「「主様を離せ!」」」
十二の騎士はドラゴギヴィルの右手に攻撃を続けた。
「コイツの"皮"を剥ぐんだ!星の欠片を粉々にしてやれ!」
ドラゴゲネシスに引っかかっていた"皮"が砕け、手の中から落下した。
「今だ!主様の翼となれ!」
十二の騎士はドラゴゲネシスの背に集まり翼を広げた。ドラゴゲネシスに大きな翼が生えた。
手を破壊する過程で放出されたエスタルダストがドラゴゲネシスを包み光輝く。
闇に抗いうる唯一の存在、光。ドラゴゲネシスは光の化身、擬似ドラゴフォースへと変貌した。
「ドラゴギヴィルに囚われたドラゴイードルを救い出す。全てはあの肉体に繋がっている。つまりドラゴイードルを引きずり出せばこの巨体は崩壊する。奴は腹を中心に上下左右に巨大化した。ドラゴイードルは腹にいる。神将達よ、行くぞ」
亜光速のスピードによる腹部への一点特化。莫大なエネルギー同士の衝突。しかしその集中率は、ドラゴゲネシスが上回っていた。
瞬間、ドラゴゲネシスの手にドラゴイードルが握られていた。
「全身のエスタルダストに意識を分散させたのが運の尽きだったな。ドラゴギヴィルよ、間もなくお前の意識は肉体と共にバラバラに砕け散る」
中心を失ったエスタルダストは離散し、エスタルダストによって固定されていた星の欠片も遊離した。
ドラゴゲネシスの言葉通り、全身に巡らせたドラゴギヴィルの意識はドラゴイードルの肉体に残置されておらず、エスタルダスト共に離散した。
決着はついた。ドラゴゲネシスも自らのエスタルダストを解放した。
「ありがとう。我が騎士達よ。君達は今から十二神将だ。私のもとで、この宇宙に平和と秩序をもたらして欲しい」
そしてドラゴゲネシスと十二神将らは銀河団の再建を開始した。
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ドラゴギヴィルとの対決からかなりの年月が経過した。
エスタルダストはあるべき場所へと還った。
王、ドラゴゲネシスは十二神将に、それぞれの名を持つ銀河団を与えた。
王は事態の責任をドラゴイードルと水の使徒に負わせた。
ドラゴイードルの肉体に、意識が戻ることはなかった。王はアンディラ銀河団の銀河にドラゴイードルの肉体を封印した。
そして光の使徒と水の使徒の間に身分差を設け、白き血の光の使徒に青き血の水の使徒を自由に使う権利を与えた。
優秀な水の使徒を懐柔することで、光の使徒の科学力は飛躍的に向上した。
王は外縁周回銀河団の周回軌道の長軸の長さを1リトヤールと決定した。
1リトヤール内の星々を開拓し切った光の使徒達は、新たな土地を求めて外縁部の外への探索を計画した。そして十三の厄災について記された書、救銀記をもとにした、新たな移動手段を考案するオーバードライブ計画が開始された。
星の再建にドラゴギヴィルの意識を伴ったエスタルダストが使用されていることには、誰も気付いていなかった。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




