EP52 光龍王ドラゴフォース
宇宙を形作る十三銀河団の一つ、メキーラ銀河団。ここに派遣された騎士は自らをメキーラと名乗った。
メキーラ銀河団において、星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。しかしメキーラ銀河団においても、マジラ銀河団同様、銀河団内温度が指数関数的に上昇していた。
やはり太陽に異変はきたしておらず、大規模な爆発も起こっていなかった。何か別の反応により発せられた熱が、メキーラ銀河団を覆っていた。
意図せずともその熱は分子の結合を断ち切り、物質という概念を消滅へと追いやっていた。
メキーラは銀河団内の温度勾配から、熱の発生源をシャンディラ銀河団と推定した。
すでにメキーラの肉体は熱に侵されていた。しかしそれでもメキーラは熱波の中を進み、シャンディラ銀河団へと向かった。
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メキーラ銀河団と共にシャンディラ銀河団に隣接するハイラ銀河団。ここに派遣された騎士は自らをハイラと名乗った。
ハイラ銀河団においても星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。だがインドラ銀河団同様、ハイラ銀河団でも大規模な太陽フレアが観測された。銀河中に吹き荒れる衝撃波とプラズマ波は、大きなうねりとなり、いくつもの巨大なハリケーンを形成していた。ハリケーンは互いに干渉し合い、衝撃波は複雑に交錯していた。
ハイラはその衝撃波の渦に飲み込まれてしまった。やがてハイラは波に揉まれながら、方向感覚を失った。輝く星々が視界一面をグルグルと回っていた。脳が揺れ、意識が飛々となっていった。最後に浮かんだのは、主、ドラゴフォースの姿。
「君はハイラ銀河団を調査してくれ」
ハイラは再び目を開いた。そして考えた。兎にも角にも、ハイラ銀河団をどうにかするにもこの衝撃波の渦から脱しなければならなかった。
ハイラは翼を広げた。今よりも大きなものを、倍の数に増やした。波の動きを、細かな羽で捉える。ハイラはなんとか姿勢が制御した。その時、メキーラから言葉を受け取った。
『ハイラ、シャンディラ銀河団に来れるか?おそらくあそこに何かがある』
『了解した』
ハイラはシャンディラ銀河団へと向かった。
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レグーノ銀河団に接する三大銀河団群の一つであるシャンディラ銀河団。そこに派遣された騎士は自らをシャンディラと名乗った。
シャンディラ銀河団においても、星の連鎖崩壊が始まっていた。そして謎の巨大な塔もまた、シャンディラ銀河団に存在していた。
「我が名はブラフマー。主の命によりこの塔を建造し、また管理する者である」
シャンディラが塔に近づくと、エネルギー弾の攻撃とともにブラフマーと自称する存在が現れた。
「ブラフマーよ、これは警告です。今すぐ星の連鎖崩壊を止めなさい。この塔が関係しているのでしょう?」
シャンディラは諭すように言った。
「それは主様の命にない。あるのは、妨害者の排除だ」
そう言ってブラフマーはシャンディラに殴りかかった。4本の腕からなる連撃をかわすのは至難の業であった。そして一発の威力も凄まじく、シャンディラは軽く宙を舞った。
シャンディラはすぐさま体勢を立て直す。剣を創造し、接近して振り上げた。だがそれは2本の腕に止められ、残りの2本による攻撃を喰らった。
「くっ…!」
シャンディラの予想以上に4本の腕は器用に動き、その後も苦戦を強いられていた。打撃に怯んだシャンディラはついに首元を掴まれてしまった。
「排除する」
メキメキと音を立てて首が細くなっていく。その瞬間、首を掴む2本の腕が斬り落とされた。その隙にシャンディラはブラフマーの腹に蹴りを入れる。ブラフマーは塔に打ち付けられた。
「何とか間に合ったか」
「大丈夫か?シャンディラ」
「メキーラ!ハイラ!助かった。恩に着る」
「あの怪物、延いてはあの塔がこの異常事態の元凶だな」
「ああ。考えうる可能性はそれしかない。あの怪物、ブラフマーは塔の守護者だ」
「では奴を倒すことが先決だな」
「ああ」
「承知した」
三人の騎士が塔を振り返った時、そこにブラフマーの姿は無かった。
「忌々しい者共よ、まとめて塵芥と成り果てろ!」
塔から無数のエネルギー光線が放たれた。騎士達は盾を創造し身を守った。
「何だこれは」
「奴らの技術がかなり進んでいるということなのか」
「何でもいい。どう倒す?」
「…穴を塞ぐ」
「は?」
「見ろ、この光線は塔から飛び出た筒から放たれている。その筒の穴を塞ぐ」
「確かに、何もしないよりはいいかもな」
「一つ一つの筒には次弾発射まで少しの時間が空く。その隙を狙おう」
三人の騎士は動いた。そして作戦通り砲筒の穴を、創造した粘着質の物質で隙間なく塞いでいった。
光線の異変に気づいたブラフマーは火力を上げた。しかし、それが決定打となった。砲塔に溜め込まれたエネルギーが暴発し、塔の外壁もろとも吹き飛んだ。
「奴が姿を現した!すぐに捕えろ!」
メキーラとハイラが両腕を押さえ、シャンディラは硬化した右拳で顔面を殴った。ブラフマーは気を失った。
塔の外側は堅くとも、内側は脆かった。騎士達は塔の内側をめちゃくちゃに破壊した。星の連鎖崩壊は収まった。放出されていた熱も止み、いずれ銀河団内の温度は安定状態に戻ることとなる。
「起きろ。そして知っていることを全て話せ」
首を押さえ、メキーラはブラフマーに迫った。
ブラフマーは両手を広げてこう叫んだ。
「これは全て余興!ただの時間稼ぎに過ぎない!王の力が散った今、主様はこの宇宙を遂にその手中に治めるのだ!」
ブラフマーは内側から破裂した。
「まずい。早く主様の元へ戻らねば」
「レグーノ銀河団で一体何が…?」
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アンディラ銀河団と共に十三銀河団外縁部をレグーノ銀河団を中心に公転しているバジュラ銀河団。ここにはドラゴプロクスの銀河があった。そしてこの銀河団にやってきた騎士は自らをバジュラと名乗った。
バジュラ銀河団に連鎖崩壊の波は到達していなかった。それに加え、異変そのものが起きてなどいなかった。
バジュラは他の騎士から様々な異変を聞いていた。そのためバジュラは困惑した。
しかしそんなバジュラは、あるものを目撃した。剣のようなものが突き刺さった、宇宙空間を彷徨う暗赤色の物体。
バジュラは試しにその剣のようなものを抜いてみることにした。しかし柄に触れた瞬間、指先が溶けてしまった。指は再生して元に戻ったが、バジュラは接触を諦めた。
それでもこの物体が気になるバジュラは後を追うことにした。この物体は惑星の公転速度に近い速度でゆっくりと移動していた。やがてその物体はドラゴプロクスの銀河にある、とある惑星の周回軌道上に乗った。
太陽がフレアを放った時、突如として物体の手は剣の柄を握った。そしてゆっくりとそれを引き抜いた。
バーーーーン!!
物体はバジュラの前で爆発した。背けた目を再び向けると、そこには森羅光封剣を手にしたドラゴプロクスがいた。
「ドラゴプロクス?聞こえますか?私に敵意はありません」
「…コロス」
ドラゴプロクスは森羅光封剣を振り上げ、バジュラに斬りかかった。バジュラはその攻撃を間一髪で避けた。
「しかしどうしてもと言うのなら、仕方ありません。私が相手になりましょう」
バジュラは剣を創造すると、ドラゴプロクスに対抗した。
互いの刃が何度も擦れ合う。力はドラゴプロクスの方が上であった。ドラゴプロクスは翼で空間を押し、勢いを力に換えてバジュラを押した。
バジュラは飛ばされた。ドラゴプロクスはその背後に飛び、バジュラの背中を斬りつけた。
「カッ…」
装甲を裂き、ぱっくりと開いた背中の傷口から、無数の"手"がドラゴプロクス目掛けて伸びた。その内の数本を切断したドラゴプロクスだったが、やがて"手"に捕まってしまった。
「あなたが復活の直後で助かりました。もし回復していたら、私はここで死んでいた」
"手"は大きく曲がり、バジュラとドラゴプロクスが顔を合わせた。
「あなたもお辛いのでしょう。ゆっくりお眠りなさい」
バジュラはドラゴプロクスの両手を潰した。そして背中から伸びる"手"から放出される物質が、ドラゴプロクス体内に流れ込み、ドラゴプロクスの姿を変えていった。
再び自力で剣を抜かぬように、腕を短くし腹は膨らませた。そしてその巨体を支えるために両脚を太くし翼を巨大化させ尾を引き伸ばした。最後にその姿に合うように顔を弄って鼻と口を伸ばし、耳の位置を変えた。
腹にもう一度森羅光封剣を突き刺すと、ドラゴプロクスをそばにある惑星に落とした。
「さようなら。ドラゴプロクス」
バジュラはそう言い残すと、レグーノ銀河団へと帰っていった。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




